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136 レベルアップ、そしてcheatの片鱗【ザバートンを出て5日くらい】

ザバートンを出て5日くらい経過しただろうか。その間にアナザーワールドの検証を1人で行っていたジュリアンだったが、クロの力で森の一部を更地にした後に建設したツリーハウスにはすぐに皆を招き、宿替わりとして使っていた。

もうすでにアナザーワールドの暗闇の中を休憩場所として活用していた為に能力の事を隠すつもりが無かったし、行き来するにはジュリアンが扉を開閉しないといけないという手間があるため防犯にも問題は無いだろうと判断したからだ。もし何かあった時、いざとなったら『森』のタブから最初のタブに移動させて、暗闇の中に放置してやるつもりでいる。


今ツリーハウスには大きなリビング、簡易キッチン、女性の部屋、男性の部屋、お風呂、トイレとこじんまりした2LDKの間取りになっている。ちなみに屋根はフラット。結局豆腐ハウスである。

お風呂やトイレと部屋を用意してはみたが、当然地球上の技術をこちらで再現するには素材も知識も足りない。そのため湯船となる木の入れ物に生活魔法でお湯をためるだけで、排水口はそのまま外につなげてもいいかな?と特に考えずに配置した。だが、作ってみてどういうわけか流れる先が見当たらない。排水口はあるのだが、配水管が無いのだ。それなのにどんどん水を流しても周囲にあふれ出ている形跡はない。ステータス上の一覧にも汚水は増えず、どこかに消えているという事しか分からない。これはアナザーワールドマジックなのだろうか?深く考えないことにした。トイレの方も同様でどこかに流れていくのだが、こちらはアイテム『汚物』が追加されていくことから、どこかしらにたまっていくのだろう。臭いもこもらないし衛生的ではある。肥料とするために、この森の木々の葉と混ぜようかと思ったが、この場所に微生物が存在しているのか不安だったのでとりあえず保留。排泄物であればそこらへんに放置しても問題は無いだろうし、気になった時にどうにかしよう。

流す仕組みとしてタンク部分を一般的なものより多く水を貯蔵できるようにして、その場所に定期的にジュリアンが生活魔法で水をためている。そして形は座るタイプの地球にある水洗式の便座なのだが、こちらは土を焼いた陶器製だ。色んなものが材料として使えるため、ジュリアンが色々ため込んでいた結果、焼き物が作れると判明。おかげで食器も様々な種類のものが増えた。

その内糸を作って服や装備も自作できるようになるかもしれない。


後は自分たちは個人の部屋があってもいいかと思ったのだが、そうすると短期メンバー予定のシェルキャッシュが「自分も欲しい」と騒ぎそうだったのでやめたのだ。部屋を大きくするほど私物もあまりないし、食材なんかは暗闇の方のタブに入れておいて、必要な時にキッチンの棚に置いた小さな箱に移動させて取り出すという事をしている。手に入れたものを適当にぶち込んでおけば、ステータス上のデータとして詳細が分かるので、管理が楽ちんだ。


さて。

あの暗闇とは違う、うっすらと明るい夜の光の中。しかし空には星や月は浮かんでいない、作り物の薄暗さ。作られた空間であることを主張するかのような空模様だが、この森にはかすかに風が吹いていた。草原を作った時も、葉は風に揺れていたと記憶している。作られた空間だけれど、壁がどこにあるか分からないほど広大のためにもしかしたら空気に流れが生じているのかもしれない。


「これで虫の声でも聞こえれば、曇りの森と言っても分かんないよね」


明確な光源が無いのにうすぼんやりとした夜の森は少しだけ不気味だけれど、生活魔法と燭台による明かりのともったツリーハウスの中はそれと比較してとても暖かく感じる。一応リビングに当たる場所で窓を開けて空を見上げたジュリアンがそう呟けば、そばでナイフを磨いていたクラックが一度ジュリアンを見てから視線を外に向けた。


「うん、そうだよね。俺、最初に連れてこられた時はスキルで作られた世界の中だって気づかなくて、こんな大きな木生えたたかな?って疑問に思ったんだ」

「ラック…」

「でも、俺に教えちゃって良かったの?…武器の時もそうだけど、こんな力使えるなて知られたら、ジュリアンの身が危険になるかも」

「心配してくれるの?」

「もちろんだよ。だってジュリアンは、俺を心配してくれたから」

「…」


軽い冗談のつもりで聞いてみたら、クラックはまじめな顔で返してきたので思わず言葉がつまる。しかし固まってしまったのもほんの数秒で、すぐに再起動を果たしたジュリアンは少しだけ苦笑いを浮かべて話題を変えた。


「次の目的地はもうドルァルエクスだったっけ?」

「えぇと、その間にあと2~3の町を経由する予定じゃなかったかな?」


明らかに話題が変わったことに気づいたクラックだったが、言及せずにその話に応じた。

そんな2人に風呂を使っていた冬威が入浴を終えてこちらに戻ってくる。そのドアの開け閉めの音で2人は同時にそちらを向いた。ちなみに女性陣はすでに入浴を終えて就寝準備中だ。


「ふぃ~。お風呂空いたよ~…って何?2人揃って。もしかしてまだ汚れついてる?」

「いや、そんなこと無いよ」

「汚れも何も、ジュリアンの生活魔法をかけてもらってから入ってるじゃないか。目的は体を温めるだけなんじゃないのか?」

「誰でも生活魔法が使えるわけじゃないからね、身体を清潔に保つために水浴びをするだろ?」

「でも毎日入ったりはしないよ?」

「俺らは風呂が大好きなの!…あぁ~、石鹸とかがあればなぁ。女じゃないからシャンプーなんかも石鹸1つでなんとかできるのに…」

「旅の支度で石鹸を見ることをすっかり忘れちゃったからね。トーイ、次の町に行ったら道具屋さんを覗いてみようか」

「うん、ぜひそうしよう」


そんな会話を終えて、冬威と入れ替わるようにジュリアンは風呂場へと向かった。


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