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101 召喚勇者×転生賢者

威嚇なのか、挑発なのか。

喉を鳴らしながらこちらを向くそれは、形だけ見れば過去に地球に存在した始祖鳥に似ていたが、そのサイズは馬鹿でかかった。軽く見上げる位置に首がある。

スッと細長い鼻の先…とりあえずくちばしとしておこう。その部分から頭部付近にかけて毛はなく、首の中ほどからスラリと長い尾の先まで濃い緑色の体毛に包まれている。ずんぐりむっくりとした足をピンと伸ばすことは無く中腰状態で、両手に当たる羽を僅かに横に広げており、巨体のバランスをとっているようだ。


“ズシン、ズシン”


ゆっくりと、1歩ずつこちらに近寄ってくるそいつは、くすんだ緑色の目を2人に向けたまま、瞬きすらしていない様子の、意志があるのかないのかもわからないくすんだ瞳。しかしずっと鳴らしている喉の音を聞く限りだと決して友好的であるとは言えない雰囲気だ。

こいつが1歩近づくたびに、ジュリアン達は2歩後退する。絶えず声を発しているこの魔物の口は半開きで、尖っている歯が並んでいるのが見て取れた。


「何なんだこいつ」

「分からない。あの町で見た魔物の図鑑には載ってなかった」

「じゃあ、この地特有の魔物なのか?ってか、こんなに近づくまで気づかなかったぞ!」

「音もしなかったし…そうだ。この森、おかしかった。声が聞こえなかっただろう?」

「こいつが遮断してたっていうのか!?」

「分からない。でも、音だけじゃなくて振動も感じなかった。突然湧いて出てきたような…」

「なんだそれ…あ」


視線は外さないように気を付けながらもジリジリと後退をしていたが、冬威の背中が木の幹に触れた。思わず小さな声を上げて後ろを振り返ってしまったそのタイミングを狙っていたのか、視線をそらした瞬間に魔物も動いた。


「トーイ!」

「うわっ!!」


慌てて突き飛ばせば、先ほどまで冬威が立っていた場所を魔物の頭が通過する。まるでとぐろを巻いていた蛇が飛び出すかのような勢いで冬威に向かって牙をむいたのだ。そして先ほど背中が当たった木の幹に“ガツン”と鈍い音を立ててくちばしの先が突き刺さる。


“GYOEEEE!”


間一髪その場を離れた冬威だったが、くちばしの先を突き立てたままで初めて上げる咆哮に驚き、地面に尻餅をついた状態で思わず呆気に取られてしまった。


「トーイ構えて!まだ状況は好転してない!」

「わ、分かった!」


ジュリアンの声に慌てて立ち上がり、腰に下げていた剣を抜いて身構えた。立ち位置は魔物をはさんで右と左に分かれてしまったが、幸いなことに丁度リンクがつながっている。なんの疑いもなく冬威は戦うために武器を構え、ジュリアンは邪魔にならないようにと足を引いて距離を取ろうとした。


『君は、戦わないの?』

「え」


引きかけた足を止める。チラリと周囲を見渡したすきに魔物が数歩進み完全に冬威と離されてしまった為、今冬威がどのような行動をとろうとしているのかが分からない。ただ、リンクはつながっているから、何もしないでいることが彼の手助けとなるだろう。今までの経験からそう判断してしまったが、何処からか聞こえた声が深く胸に刺さった。

風が揺らす木葉のような、サワサワとしたささやきのような声。

ずっと冬威にばかり戦わせるという後ろめたさを胸に抱いていたため、ズバリと核心をついたセリフに思わず一瞬息を止めてしまうが、ジュリアンはすぐに頭を再起動させて周囲を警戒しながら自分の腰に下げている剣の柄に手を添えた。


「誰?」

『今はそんなことよりも、大切な仲間を助けないと』

「僕が動いて状況が好転するならそうしている」


情けいないけど、戦闘は冬威に任せるしかない。苦虫をかみつぶしたような顔で、今はこちらに背中を向けている魔物を睨んだ。

この魔物はジュリアンと冬威の2人を見てから、冬威の方が危険だと判断したらしい。むかつくが事実なだけに、目が良いと判断するしかない。まったく戦えないというわけでは無いが、リンク状態で能力が上乗せされている冬威と、ステータスにマイナスがついていない絶好調状態のジュリアンとでは、比べるまでもなく冬威の方が強いのだ。

下手に動いて足を引っ張るくらいなら、初めから冬威に丸投げしたほうが勝率も高い。


「…なんて、情けない…」


これではどちらが荷物か分からないではないか。思わず自嘲気味に呟けば謎の声がクスリと笑った。


『それはおかしいね。勇者と賢者の関係は、互いに対等。一方的な力ではなかったはずだよ』

「…何を言っている?いや、何を知っているんだ?」


思わず問いかけたジュリアンだったか戦況はゆっくりと確実に動き出していたようだ。


“GYOEEEEEE”


目の前で魔物が鳴き声を上げて冬威に襲い掛かった。ゲームだったら「つつく攻撃」とかになるのかもしれない動きだったが、地面がベロリとめくれ上がりあたりに土が舞い上がる事から、それが「つつく」なんて可愛い威力ではないことが分かる。冬威はしっかり警戒していたおかげか余裕をもって一撃を避けて、反撃をするが、皮膚が固いのか羽毛がしっかりしているのか有効な攻撃は入れられていない様だ。しかしその動きでジリジリとお互いに威嚇しあっていた状態から、次から次へと攻撃が繰り出される猛攻に突入してしまった。


「スラッシュ!…っかってぇ!」

「トーイ!」

「大丈夫!今んとここいつくちばし攻撃しかしてこないから今はかわせる!…でもこっちの攻撃通んないから、タイミング見て逃げないと無理かも!」


ドシンドシンと魔物が動けば、下草はべしゃりと均され、くちばしが刺されば土が舞い上がる。まるで暴走する耕運機のようだ。


『詳しい話は今するべきではないね』


囁きの言葉にギリっと歯を食いしばる。きつく拳を握ってしまいたいが、今ジュリアンが動けば上乗せされている分の能力が戻ってきてしまう。静かな動きで邪魔にならない位置に後退し、努めて冷静を装い深く深呼吸をした。

そんなジュリアンの心をかき乱す様に、囁きが再び飛んでくる。


『助けてあげるよ』

「…代わりにこの魔物を倒してくれるとでも?」

『それは無理だ。自分で倒してもらわないと』

「助けてくれるって言ったじゃないか。さっきの言葉と矛盾してない?」

『フフッ…今から言う言葉を繰り返して。それできっと、全て分かる』


クスクスと笑い声を乗せながら、それは言葉を残した。ジュリアンはその囁きに耳を傾けて、ギュッと眉を寄せた。

罠、だろうか?でも、なぜか怪しさを感じる声色ではない。

駄目で元々、と珍しくもあまり迷わずに意を決して口を開く。


「スキル発動!リンクアシスト!」


ジュリアンの声に反応して、リンクで現れた光の紐が一瞬強く光る。と、“シャララ”と綺麗な音をさせて光の紐はその形状を鎖に変えた。

しかし重苦しい太いものでは無く、ネックレスに使われるような細く綺麗なもの。一見すれば普通の紐にも見える程繊細で小さなものだ。

しかし変化はこれだけではなかった。


▲▽▲▽▲▽▲▽


名前:ジュリアン・グロウ

種族:人間

レベル:a%df

ギルドランク:1

状態:主「トーイ・サザメ」従属「トーイ・サザメ」

物理適正:-

魔力適正:○×q$tda


状態:従属

職業:賢者、蘇りし者


威力:○×1

耐久:○×4

パワー:○×3

スピード:○×5


スキル:

操武術(武器を操る能力。武器であれば何でも)

インファイター(体を使う戦闘スキルを複数集めたので、結合)

献身+3【「スケープゴート」「自己治癒強化」「リンクアシスト」使用可能・ただしリンク発動時に限る】

必中(命中率が上がる)

超聴力+4

職人+2

生活魔法+2

軽業


-----

「リンクアシスト」

独善のリンクサポート。

独善使用者が保持しているスキルを1つ使えるようにする。もしくは物理、魔力の適正をお互いの平均値にする。

独善使用者が献身保持者の能力を使用する際にプラス補正。


※出現条件→賢者の称号取得



▲▽▲▽



ポンと音を立ててジュリアンの前にウインドウが開く。それは冬威も見ていたステータスウィンドウだったが、そのスキル欄をみて思わず震えた。


独善スキル保持者であり、リンクでつながっている相手のスキルを1つ、使用することが出来る。


という事ならば…


激しく動く魔物を睨み、剣を掴もうとしていた右手を前に伸ばした。伸ばした右手に魔力をためていく。生活魔法で魔力を練ったことがあるから簡単だ。高ぶる気持ちを抑えることが出来ず、攻防の末軽く冬威が弾き飛ばされた瞬間を狙って声を張り上げた。


「燃えろ!“ファイアー”」


その瞬間凝縮された魔力が一気に膨れ上がり、轟音と爆音を響かせながら森の中に青い火柱が上がった。

久しぶりにステータスが出てきました。

そろそろ王道路線に乗せたい。

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