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100 召喚勇者×転生賢者

真実は語られ、真相知りき。

拒絶することなくおたがひ受け入れ、絆はなほ深まふなりせむ。


知り、そして繋る。

強く、深く。


貴方有らずなりても、我は契守り続かれき。

再会する時信じて、其の時来ること切にあらましつつ。


そして今。

契果たせらる。



**********



一瞬の無音。

そして強い風が駆け抜けた。自然の風にしては明確に近い場所に腰を下ろしていた2人の間に上昇気流を生むと、木葉をその風の流れに乗せて巻き上げ、あたりを散らかす。


きょとんとした顔を見合わせたジュリアンと冬威だったが、次の瞬間に“キンッ”と乾いた音を響かせてリンクがつながり、驚きに目を見開いた。


「え?なんでいきなり」


少し前に検証した時は冬威からだけの一方的な力だったため、自分が何かしてしまったのかと慌てて冬威は触れられない光の紐に手を伸ばし、触れたところでなんの解決にもならないと思い至って手を下げた。

当然ながら発動はさせるつもりはなかった。無意識の状態でリンクがつながったことは今までなかった。ではなぜ発動した?離れたくないとか思ったのがいけなかったのだろうか?そんな些細な事でこのスキルは彼を縛り付けてしまう事になるのか?

そんなことを考えながらも解除しようとするが、光は一向に消える気配を見せない。


「あれ?おかしいな、なんで…」

「…」

「解除!キャンセル!切断!…どうして」


わたわたと自分のステータスを開いてみたりと慌てていた冬威だったが、ふと視線を前に戻せば少し上を見ているジュリアンに気づいた。顔ごと上げてくうを見ている。当然視線は冬威から外れていて、何を見ているかを確認しようと目線を追いかけて振り返ってみても背後の木にぶつかるだけで何を凝視しているのかはわからない。


「ジュン?…何かいるの?」

「…い、いや」


何か見えないものが見えているのか?と不安になった冬威は控えめに声をかけてみるが、間をおいて簡単な返事をしただけでジュリアンは説明を返さなかった。何度も視線の先をチラチラと見て確認するが、冬威にはただ自然が広がっているだけにしか見えない。目の前で手を振ってみようかと手を伸ばしかけた時、見ている先を指さす様にジュリアンが右手を上げた。


「???」


何が起きているのか分からず狼狽える冬威。そんな彼を気遣う事すら頭から抜けて、見た目以上に驚いているのはジュリアンの方だった。


今彼の視線の先には“ステータス”が展開されていた。

そこに表示されている『職業:賢者、蘇りし者』という文字。


何がきっかけで賢者の称号が付いたのだろうか?

というか、ギルドで見た時は脱走兵だったような?それはいつ消えた?

いやいや、それよりも。今まではギルドカードでしか見ることが出来なかった自分自身の情報だ。

いったい何がきっかけで見れるようになったのか…


…いや、確かに気になる事だけれど、今はおいておこう。

彼が驚いていたのは、まるでパソコンで複数のウィンドウを開いているように、そのステータスウィンドウに重なるようにして開かれていたメッセージウィンドウだった。




“おめでとう、いつか訪れるだろうこの日、この時を待っていた。


恐らくこの世界で過ごす時間は、思っている以上に長いだろう。

長い旅路を仲間とともに過ごし、活躍してほしい。


あぁ、分かっている。

旅は先を急ぐもので、あまり時間をかけていられないという事は。

それでも幸多い人生を願わずにはいられないんだ。


これから訪れるだろう幸せが、未来を生きる糧となりますように。”




此処までは普通の応援のメッセージだ。

ありきたりな内容で、この文をもらった相手を励ますような文面である。

しかし『追伸』とでも言うかのように最後に乗せられた文に目を見開いた。


“この世界にも『部屋』はつながる。

何も感じられなくても、生きることを諦めないでほしい。

アコン、君は一人では無い事を忘れるな。”



部屋、というのは部室の事だろう。

世界の捕食に巻き込まれ、3年で死ぬ旅を始めるきっかけになった事件だ。同じく事件に巻き込まれた12名の仲間は、部室という「宇宙船」にも似た空間を使って異世界を渡る旅している。

そんな中1人はぐれたアコン(現、ジュリアン)は特殊な方法で消滅を免れた。本来ならば船に乗れる乗船資格を、得られなかった。それでも死なずに故郷を目指す旅を続けることが出来ているが、苦痛が伴う今の旅の方法はその代償ともいえるものだった。


このメッセージを書いた人、残した人は自分の現状を詳しく知っているのだろうか?

その証拠に、この肉体では無い魂の名前が書かれていた。

八月一日ほづみアコン。

この世に誕生した時に親からもらった名前だ。


しかしこの名前を使用した時間は既に遠い過去の話。今では旅をしていた時間の方が長く、時折訪れる日本での友達との再会の時にしか使用されない。気を抜いているとその名で呼ばれても気づかないほど「自分の物である」という感覚が薄くなってきている名前だ。


「いったい誰が…」


このメッセージを残したのだろうか。

見ただけで動揺しているのが分かったらしい冬威は、メッセージウィンドウを触れようと伸ばしていたジュリアンの手を反射的に握っていた。


「何々?何が起きてるの?何が見えてんの?ジュン、大丈夫?」


ハッとしてウィンドウから冬威に視線を変えるジュリアン。そうだ、このステータスのウィンドウは他者には見えなかった。今まで「見えない」と言ってきていた情報だったし、ジュリアンも冬威のそれを見ることが出来なかったのだから、冬威には何が起きているのか分からなかっただろう。

安心させるために握られた手を軽く握り返した。


「ごめん、大丈夫だ。リンクがつながったとたんにステータスウィンドウが目の前に出てきて、ちょっと驚いてしまって…」


やっと説明をもらえる!と安堵ともとれる嬉し気な笑顔を浮かべた冬威だったが、


“ズンッ!!”


と突然響いた大きな音に説明は中断された。しかもこの1度だけでは終わらず、何かが歩いているかのような間隔で音が連続している。

音だけではなく、腹の底を揺さぶる地震ような振動を感じ、ジュリアンは座り込んでいた姿勢から慌てて立ち上がった。そして繋いでいた手を引っ張って、冬威も立ち上がらせる。


「いきなり何だ!?」

「分からない。でも、これが生物だとして。音と振動からかなりの巨体が予想される。そんな大型の魔物が居るなんてギルドで言っていなかったよ?」

「じゃあ、地震?」


冬威の質問には答えられず、周囲を探ろうと木の幹に触れようと一番近い木を探すために周囲を見渡した。しかし、行動に起こす前にそれは唐突に現れる。


“GRUUUUU”


肉食獣というよりは、猛禽類がのどを鳴らすようなイメージ。

そんな鳴き声にそちらを見れば、細長いくちばしのようなものを持った顔がこちらを覗いていた。


来ました100話!

モンスターの鳴き声は、カタカナで書くより英語を使った方がそれっぽく感じる。

…のは、自分だけだろうか…(焦)


最初の古語っぽい奴は雰囲気なので、ちゃんと狙った意味を持ってるか心配。


12人の仲間は「部長」の方で語ってる話ですね。



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