五人目:美食家の女性
美食家というのは、ざっくりいうと食べるのが好きな人です。
食べるというのは、きっと幸せなこと。僕には分からないけど。
この女性も、きっと食べることが好きな人の一人。
しかし僕はさっきから女性の横に立っているんですが…
(気付いて…ない、ですよね?)
美食家は皆こうなのか。女性は目の前の食事に夢中で僕には気付いていない。
しかし夢中で食べている中、声をかけるのはなんか悪いような気がしたので、食べ終わるのを待つことにしました。
――30分後――
待ちくたびれた僕は、女性に声をかけることにした。
「………あの…」
『ふー、おいしかった!!!ってぎゃー!あんた誰?!』
「いや、先程からずっとここにいましたけど。…こんにちは、僕は貴方の願い事を叶えるために来た者です。」
あぁ、本当にもう…僕のペースを乱される。僕はこういう元気ハツラツ!な人は苦手だ。
『ずっといたの?!気付かなかった!で、願い事を叶えてくれるの?!嘘じゃないよね!!!?』
「あ、あの…何も顔の近くで叫ばなくても……」
女性はごめんごめんというと、素直に引き下がっていった。本当やめてほしい。ただでさえテンションの高い人は苦手だというのに。
『…で、少年クンはあたしの願い事を叶えてくれるんだったよね?早速お願いしても…?』
「はい、いいですよ。名前を教えてくれれば叶います。」
『おーマジか!あたしは有馬・ゲレンナーテ。ハーフだよ。願い事は、死ぬほど美味しい料理が食べたい!』
…あぁ、確かにハーフっぽい。日本人とは思えない顔立ちだ。髪の毛も金髪に近い色をしている。
「では、少し目を閉じていて下さい。閉じてくれないと叶えてあげませんからね?」
すると有馬さんはビクッと肩を揺らす。おおかた、『見るなと言われたら見たくなるのが人間だ!』とか思っていたのだろう。
僕は懐からどす黒いナイフとフォークを取り出した。
両方に血を垂らし、呪文を唱える。
「 」
するとナイフとフォークは今まで見たことのないような綺麗な白銀に変化し、縁に美しい模様も描かれた。
二つを合わせ音を鳴らすと、まるで鈴のような上品な音がする。
『も、もういーかーい』
「いいですよ」
有馬はナイフとフォークを見て一言、綺麗といった。
『…ところで、料理は?』
「…あっ」
『…』
僕としたことが、疲れすぎて大事なものを忘れていた。ストレスがたまると忘れやすい。そうだきっとそうだ。
僕は有馬が瞬きした隙に、今までにないくらい速く魔法を発動し、料理をテーブルの上に瞬間移動させた。
ここまで0.01秒。
「……そこのテーブルの上にありませんか?」
『(さっきまで無かったような…)あ、あった!よし食べるぞ!!』
いやまったくこの人の胃袋に限界はないんですかね。さっきも食べていたはずですが…
おっと代償を貰う時間ですね。さ、食べる前に奪っちゃいましょう。
『いただきます!!………あ、れ?味しない……』
「あぁ、願い事を叶えた代償で味覚貰いましたから。ま、ゆっくり食べて下さいよ」
貴方が望んだ、死ぬほど美味しい料理をね。
太陽の光はまるで、愚か者を嘲り笑うかのように輝いていた。
――美食家は大切なモノを失いました。
――それは、命より大切な味覚です。
(というか今回なんかパッとしませんでしたね)
(まったくシリアス返してほしいです…)