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ひねくれ男は叱られる

作者: 嫁田嫁

 「……まったく、お前が私にとっての悩みの一つだ」

そんなことを何年も言われてきて、ついには

 「もういらない」などと、言われる始末。

ガキの頃から、大人まで、毎日言われてる気がしている。

がむしゃらに頑張れば、なんとかなる、なんて思っていた。『努力は必ず実る』とは言ったものの……

人に当たれば捨てられる、人に優しくすれば、誤解を受けるなんてことが多くあった。

ただ、当たることをやめたくなかった。努力といっても、勉強をすごくやったわけじゃない。

ただ頑張った気になっていただけで、それで毎日誤魔化していた気もする。

だから、当たることをやめてはいけないんだと、自分が自分に言っている気がしていた。

 「俺も、頑張っていた気がしてた」

 「俺もそう思っていたんや」

努力を間違えて、間違えて、すぐに成り上がろうとして、何年も無駄に過ごしたような感覚を覚え

 「周りがいらないという」

 「他の奴らは俺やない」

アパートのたまには掃除している少し汚く、畳がくすんでいる狭い部屋では、そんな自問自答で

座り込んでいることが休日にある。今日も仕事を探さなきゃいけない。

俺は、毎日毎日……よくわからないことをしている。自分でも何を考えているのかさえわからないほどだ。

頭の中でグルグルグルグルと永遠と答えを探している気分で、本当は答えがすでにあるはずなのに

自分は「いや、それは答えじゃないから」なんて言い訳をして、避けているんじゃないかと

最近では思えるようになった。そんなことを思えるまで堕落してしまったんだと、自分は実感した。

俺の休日は、寂しさを埋めるための旅の日でもあり、虚しさに襲われるからと

 「オカン」と、一言。

小さい穴からは「今日も何かあるのかい?」母親の声が聞こえていた。

愚痴をそんなところでしか言ってない。これが大きな癒しでもあって、もっとも、情けない。

同じことを、仕方ないことを、誰かにぶちまけたいだけで、それを……母親に向けるとは

なんて情けない。

しかし、何度も叱ってくれた母親、しかし、辛いことは言いなさいと言ってくれた母親には

申し訳なくないのか、申し訳なくないのか、でも、仕方ない。

自分は十分に話すと、チンと、電話の時間が終わる合図が鳴る。

 「……はぁ」

おいおい、なんだよこれ。当たって当たって何度も挑戦することしか能がないように

意地を張っていたじゃないか。……そうか、言っていたのはもう、遠い何十年前の昔だったな。

今は、性格がひねくれて、高学歴をもってるわけでもない、自由問題児……

そんな俺はこんなもんか。俺はやめられない酒のビール缶を、窓へ投げ捨てたのだ。

カンッと鳴れば……


 「こんなとこに捨てんなやぁッ!!!」


と、男か女かわからないガラガラ声が自分の耳を貫通した。

 「すいません、すいません」

ババアのお叱りを何時間も受けることになってしまった。

叱られる内容と違い、心の中では『早く終われ』の大合唱……

叱られて「ああ、はいそうですか」と、反省できるまともな脳味噌なら

まず、家の窓からビール缶なんて外に投げたりしないんだ。


……ああ、また言い訳を

まただ。ずっと繰り返す、嘘っぱち反省と言い訳地獄


俺じゃ、この人生の主役には向いてねぇんだよ……

辛くて、また母親に電話をした。

そんなことを愚痴れば、久しぶりに母親に怒られた。

 「自分の子供が不幸で、喜ぶ親はいない。だから、二度とそんなことを言うな」


俺は不覚にも泣いている。

 「もういらない」と思っていない人間が、一生懸命叱ってくれたことに

最後の最後の母親のセリフは実際に私に言ってくれたオカンのセリフです。

自分が自暴自棄に「仕事なんてなんでもいい、トイレ掃除でもいい」

と、言ったときに、叱られた時のセリフでした。

それから、たまに自分を自虐的に思うことはありましたが

思い出すたびに耐える支えになっています。

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