十五夜
「何作ってるの?」
高校2年の双子の姉である井野嶽桜は、双子の弟の幌が台所で作業しているところを発見して、急襲した。
「うわっと」
驚いた幌が、思わず手に持っていたものをすぐ下に置いていたボウルに落とす。
「何って、姉ちゃん、きまってるだろ」
「その白い物体から察するに……」
ふむと一言言ってから、思いついたように、正解を言った。
「白玉だねっ」
「そうだよ。今日は十五夜だからね。ついでに里芋の煮物も作ってみたんだよ」
「そう言えば、お母さんが昔作ってたね」
懐かしそうに里芋を桜が見つめている。
「あの味にできる限り近付けてみたよ、再現したとは言えないけど」
幌が落ち着いていった。
「大丈夫、ゆっくりと、だよ」
まだ月が昇らない日中で、ゆっくりと二人の時間は流れていった。