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238  作者: Nora_
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09

「反抗期がきたのかもしれないわ……」


 課題をやるのをやめて見てみたら「前に言った後輩の子が入学してからもう一週間も経過しているのに来てくれないのよ」と追加情報をくれたけど……。


「だからいまから見にいこうと思ってね、あんたも来なさい」

「え、僕はいいかな」


 お友達はお友達でも少し会話したことのある子の方ではなかったら困るから付いていくわけにはいかない。

 それに僕には兄を探さなければいけない理由があるから断る、


「駄目よ」


 ことはできなかった……。

 だから渋々付いていったのに「もういないわ、終わりよ」とすぐに諦めてしまった彼女になにも言えなくなった。

 というか、お友達でも兄や菅野さんがいれば十分だろうから別に会えないままでもいいと思う。

 そのままぶつけたら頬を掴まれたうえに涙目になってしまったからまた同じ状態になってしまったけど。


「そこまでとは……」

「あんたは知らないでしょうけどね、あんたと同じぐらい一緒に過ごしていたのよ?」

「なら諦めないで頑張らないと、絶対にいかなければならないなんてルールはないんだからどうしても変えたいなら頑張るしかないよ」


 男の子でも女の子でもどちらでもいい。

 とりあえず追加で言いたいことを言って帰ろうとしたら「桜井先輩じゃないですか」と知らない男の子が近づいてきたから黙ってその場をあとにした。

 い、いまの明るく元気で容姿の整った男の子は誰なのか、こう言ってはあれだけど年内から相手をしてもらっていたあの子よりもやばかったかもしれない。

 やはり知らなかっただけで三角四角と気になる男の子は沢山いるのだ……。


「あれ、なにをしているのー?」

「菅野さんはあの子のこと……知ってた?」

「んー? あ、うん、とも君達とほどじゃないけど一緒にいるのが普通って感じだよね」


 本当の親友はなんでも知っていていいね。


「はぁ……」


 それよりも兄を探し始めよう。

 なんでかは今日絶対にご飯を作ってもらいたかったからだ。

 じゃんけんをして負けた方が〇〇をするというよくあるルールで勝負をした結果のことだ、が、残念ながら結果が出てから逃げられ続けているから追っている形になる。

 そもそも疲れていたところに先程のあれだったからより疲れたな。


「みーつけた」

「ご飯を作るのは無理っ」

「待って待って」


 ちなみに僕から持ち掛けたわけではなくにやにやとやらしい笑みを浮かべていたから聞いてみたらそういう話になったのだ。

 持ち掛けておきながらルールを守らないのはどうなのか、まあ、もうご飯云々についてはどうでもいいけど逃げられるのは嫌だから止めるのだ。


「あれ? もしかしてななちゃんの隣にいるのって――」

「あーご飯はもう僕が作るから逃げないでね、あと早く帰ってきてねー」


 知らない知らない、見てはいない。

 まずお友達のお友達といるということで残ったところでなにも広がらない、だったらさっさと帰ってご飯でも作ってしまえばいい。

 早く動けば動くほど後の自分が楽をできるのだからこれでいいのだ。


「あのー……作れないんですけど……」

「先に帰ったあんたが悪い」

「ようなら二階にいるから相手をしてもらいなよ、ご飯だって食べていけばいいからさ」


 後輩の子と会えてご機嫌がいいはずだったのに再び目の前に現れた彼女の顔は本当に怖かった。

 性格が悪いキャラクターだったら唾だって吐いてきそうなこの感じ、武器なんかを持っていたら最悪の場合は容赦なく殺してきていそうな迫力がある。

 救いは彼女が後輩の子を連れてきたりはしなかったことだ。

 イライラしても嫌がらせをしようとする子ではないところは本当によかった。


「言っておくけど私の友達は女の子だからね? あんただって話したことがある子よ」

「そうなんだ」

「は? もしかしてあの男の子のことでなにか変な想像をしていたとか? はぁ……そんな不特定多数の男の子と仲良くしようとしている軽い人間みたいに思われていたってことよね。つか仮にそうでもあんたが求めていたことじゃない、それなのになんで逃げるのよ」


 なんでって……気まずいからだ。

 コミュニケーション能力に自信がないとかではないとしても気になることは気になる、本当かよと言われてしまう可能性は高くてもこれは相手の子のためでもあった。

 だって彼女と過ごしたくて近づいたのに変なのがいたら困るだろう。


「わ、わかったから、とりあえず離れてよ」


 ときどき彼女の距離感がバグるときがある。

 距離感が普通ならいくらでも怖い顔をしていていいからぐいと顔を近づけるのはやめてもらいたかった。

 作り始めてしまえばなんてことはないから三十分ぐらいで作り終えて二人を呼んで一緒に食べた。

 冬と比べたらまだマシだけど夜で暗くて危ないから彼女を送るために出た。


「ごめん、ようはなんか眠たいみたいで」

「別にいいわよ、なんならあんたからのだっていらないぐらいだわ」

「それは駄目だよ、嫌われてもお家に来て暗くなったら絶対に送らせてもらうから」

「嫌われていたら家になんかいかないでしょ」

「はは、確かに」


 なんて笑っている場合ではない、ただ、特にできることもない。

 今日ほど極端にやるつもりはなくても付いていくつもりはないからだ。

 だから今日の反応を見て彼女の方が諦めてくれればいいと考えている。


「嫌なの?」

「うん、ごめん」


 お家に着いたところで聞かれたからそう答えた。


「はぁ……わかったわよ」

「じゃ、暖かくして寝てね」

「うん、送ってくれてありがと」


 特に内が乱れたりすることもなく帰ると「早かったね」と最近は意地が悪いところもある兄が来た。


「ようが嫌じゃないならななちゃんに付き合ってあげてよ」

「ん-だけど相手の子が求めているわけじゃないから、ともだってそれで断ったんでしょ?」

「うん」

「あとご飯を作ることにならなければともから逃げる必要もないからね、ともと過ごすよ」

「そっか」


 兄は極端だから過ごすと言ったらちゃんと守る、それどころかずっとひっついてくる可能性も高い。

 僕としてはあの教室にはお友達がいなくて暇で暇で仕方がないから廊下でも向こうの教室でもいいから相手をしてもらえれば勝ちだ。

 まあ、矛盾しているけど勝ち負けとかはどうでもよかった。




「すみません、これを一つお願いします」


 既に運ばれてきていたオレンジジュースをちびっと飲んでから目の前に意識を向けると「せめて連絡してからにしなさいよ」と呆れたような顔で言ってくれたけど……。


「あんたが後輩と過ごすの嫌って言っていたから放課後までは過ごしてきたわ、で、放課後はあんたの番」

「一応言っておくと嫌って見たくないからとかじゃないからね? お友達のお友達とは気まずいだけで」


 だからってわざわざ探してまで来る必要はないと思う。

 ただ商品を見ているだけではなく飲食店にいたら無駄にお金を使うことになってしまうのだから待っていればいい。

 なにより、連絡もしないで探し始めても本当なら会えないままで終わってしまうのだから連絡をするべきだ、それが嫌でもせめてお家で待っておくべきだろう。


「別にそんなことは気にしていないわ、午前とかは無理だけど放課後はあんたと過ごしたいから相手をして」

「え、な、なんで?」

「は? なんでって友達とは過ごしたいでしょ――あ、なみとかを出してくるのはなしよ? あんただって無理なことはわかっているでしょ」


 誘いづらいのは確かだし出そうともしていなかった、でも、それこそ放課後なんかに一緒に遊びにいったりしたくなるだろうから邪魔をしたくないのに――なんてのは後輩の子のことを考えられているふりみたいなものでぐいぐいこられている現実に対応できていないだけだ。

 唐突すぎる……と言うよりも僕の中のなにかが変わってしまった証拠だ。

 何故なら彼女は前々から僕といたい的なことは真っすぐに言ってきていたからだ。

 ……そう考えるとこれでいて他の男の子を選ぶようだったら余計なことを言うなよと怒りたくなる件かもしれない?


「ななちゃんが――」

「なな」

「もう少し発言には気を付けないと駄目だよ」


 いまだってこの前の怖い顔ではなく柔らかい表情でこちらを見てきているだけだ。

 しかもここでまた名前を呼び捨てにすることを求めてくるなんて……自分に甘い脳が勘違いしそうになる。


「ありがとうございます」


 お店にいた残りの時間は全てオレンジジュースに任せた。

 流石に一時間とかはいられないから出ることになったけどそのときもいままでだったら普通の距離感なのに駄目だった。


「今日はあんたにご飯を作ってもらいたいわ」

「ご両親は、うん、作るぐらいなら」


 だからこそ抑え込んで普段通りにやっていく。

 作る際に少し気になったのは冷蔵庫の中の充実さだ、ここまで違うものかと差に微妙な気分になった。


「あーもう結構いい時間だし泊まっていけばよくない?」

「だから……」

「泊めたり泊まったりなんて私達にとっては普通のことでしょ」

「……それなら来てほしい」

「嫌、今回はあんたに泊まってもらいたいの」


 はぁ……お風呂なんかにも入ってくるか。

 だから結局は普段通りにやれているつもりになっているだけでバレバレなのだ。

 抵抗すればするほど彼女は踏み込んでくる、最終的に負けることになってしまうのはいつものお決まりのこと。

 それでも一人で戻りたくなくて兄を連れていこうとしたのに、ご飯だって作ったのに言うことを聞いてもらえずに一人だ。


「おかえり、あともうちょっと遅かったら突撃していたところだったわよ」

「なら待っていた方がよかったね」

「結局、連れ帰ることになるんだから私としてはこれでよかったわよ。遠いわけじゃないけど地味に疲れるじゃない」


 あ、もうお風呂には入っているみたいだ。

 一人で客間か彼女のお部屋で待たなくて済むのはいいけどいまは刺激が強い。


「はい漫画、あんたこれ読みたがっていたでしょ?」

「おっ、これ新刊が出ていたんだっ?」

「そう、またいっぱい待たなければいけないけどね」


 いけないいけない、なんか中途半端だ。

 しかし気になる漫画が一巻から最新巻まで無料で読めるとなれば負ける。

 そのため、彼女と一緒にいるのにドキドキなんかも忘れて漫画の方に別の意味でドキドキしている自分がいた。

 当然、漫画なんか読んでいればあっという間に時間が経過するというもので二十二時まで一瞬で。


「あんた集中しすぎ、あまりにも集中しすぎていて声をかけられなかったわ」

「ははは……ごめん」

「あ~あ、せっかく泊まってもらったのにゆっくり話もできなかったんだけど……」

「いつもこれぐらいに寝るけど部屋主のななちゃんが求めるならもう少しぐらいは――」


 何故僕も学習しないのか、もうこれだと逆にしてもらいたくて近づいているようにしか見えない。

 入浴してから時間だって経っているのに普段よりも温かい、なんなら振れている場所は熱くすら感じる。

 そこまでになったとき何故僕がこのように感じているのかと不思議な気分になった。

 できるなら僕が積極的に行動する側で彼女にドキドキしていてほしいのに僕がヒロインみたいになってしまっているからね。


「もういいわ、泊まってもらったばっかりに寝不足で学校にいかれたら気になるじゃない、だからそのかわりにこれね」

「も、戻れないんだけど」

「だって布団を持ってくるの面倒くさいから、おやすみー」


 あと必要なのは勢いで行動することかもしれない。

 ここで気を付けなければいけないことをわかってもらう必要もあった。


「ななっ」

「見下ろしてきてなに?」

「重ねられたらこうなるから駄目なんだよ」


 ここでがばっと動いてぎゅっと抱きしめる程度のことができていればこんなに冷静に対応をされることもなかったはずなのだ。


「え、見下ろすことがしたいことだったの?」

「……僕にできることがこれぐらいというだけかな」

「ぷっ、あははっ、せめて抱きしめるとかしなさいよっ」


 ……こうして笑われることもなかった。

 もう無理なので上からどく、恥ずかしさなんかもどこかにいって石みたいに固まっていることしかできなくなった。


「別に適当に言っているわけじゃないしそれで煽ってあんたに積極的になってもらいたいとかでもなかった、だけど効果はあったということよね?」

「……前までとは違うんだよ」

「だからなんてことはないことでもいちいち違うところを見ていたりしていたのね、可愛いところもあるじゃない」


 これ、なにもしない方が彼女がもっと頑張ってくれていたのでは……?

 

「ななはなんで急に?」

「え、だから別に変えていないけど」

「嘘だっ、それは嘘だよ」

「ん? 一緒にいたいとかご飯を作ってもらいたいとか泊まってもらいたいとか、これまでだって何回も言ったり頼んできたじゃない」


 あー顔が見えてしまうのがなんとも……。

 自宅なのもあって緩くなっているから問題なのだ。


「強いね」

「ん-あんたも同じなんじゃない? 積極的になってくれたじゃない、だからこそ普段通りにやれたのよ?」

「そっか」


 ならまだ救いか。

 ただただ空回りだけして終わったことが沢山あったから少しはマシになった。


「でも、軽い女だと思われていたことは嫌だったけどね」

「べ、別にそうは思っていないけどね」

「嘘つき、実際は女の子だけじゃなくて男の子とも仲良くしていたから距離を作っていたくせに」


 あ、いや、見たくないとかで距離を作ったのも本当のことだから嘘つきになってしまうか。

 細かいところがどうであれ、彼女からそう見えてしまったのならどうしようもないから謝るしかない。

 でも、こちらを思い切り抱きしめつつ「許さない」と言われてしまったのでなんとかしてもらうために動くしかなかった。

 抱きしめ返すことはできたけど……効果があるのかはわからなかった。

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