01
一階の掃除をしていた。
あと一ヵ月とちょっとで今年も終わってしまうから慌てなくて済むようにだ。
ただ、どこも協力をしてやってあるから軽く掃いたり拭いたりするだけで終わってしまうぐらいでしかないのは……時間をつぶしたいいまにとってはいいことなのかどうなのか……。
仕方がないから外の掃除でもしようと出たときに捕まった。
「こんにちは」
ああ、これもいいことのような悪いことのような……。
桜井ななちゃん、一応一緒にいられているけど兄の方が仲良くできているから微妙だ。
いるときなら、いや、いるときでもできれば二人で盛り上がってほしいところだった。
目の前でいちゃいちゃされてむかつくとかではない、関係ないのに健全的な意味で興奮してしまうからね。
「はい飲み物、だけどようはいまいないんだよ」
「あ、だからこんなに静かなんだ。ま、でも、ように会いに来たようなそうじゃないようなという感じだからね、どっちかだけでもいてくれればそれでよかったのよね」
「そうなの? まあ、僕は見ての通り暇だから付き合えるよ」
大変なことじゃありませんようにっ。
結構変なことを頼んでくるときもあるから出してくれるまでは心臓に悪かったりもする。
「うん、じゃあともに頼もうかな。これよっ」
「これは……ななちゃんの服だよね?」
「そう! 着て?」
「え」
「大丈夫っ、ちょっとそれを着て私とお出かけするのが今日のミッションさ!」
きゃ、キャラが壊れているけどこれからなにを言おうとこうなったら聞いてくれないのが彼女だ。
数分後、下着以外はななちゃんの物を着ている僕がいた。
でもね、普通に髪や顔なんかはそのままだからやべー奴にしか見えなかった……。
「冗談よ、脱いで」
「よかった……」
「着替えたらおでんでも食べにいきましょ」
着させておいて冷ややかな目で見てくるのは困る。
一度でも触れてしまったものだから洗って返すと言ったら「そう? なら頼むわ」と受け入れてくれた点はよかったけど。
「さ、いきましょ」
「うん」
僕達は所謂幼馴染というやつで小さい頃から三人でいた。
だからこういう、お出かけしてなにかを食べるなんてことも多くしてきた。
その際は自然とようと彼女、その後ろに僕――とはならずにちゃんと忘れずにいてくれた。
ただ、三人で一単位みたいなものだから二人でいると少し緊張するのも確かだ。
これは中学二年生ぐらいからで最近変わったことではないけど気になっていることだった。
あ、この歳にもなって恋かどうなのかもわかっていないとかではないけどね。
なんかずるいことをしている気分になって駄目になってしまうだけだ。
「そういえばね、なんか私に興味を持ってくれた子がいるのよ」
「へえ、子ってことは同級生だよね? 学校のときに見られるかな?」
見られるかなではなく絶対に見てやる。
だって昔から一緒にいても当たり前だけどなんでも教えてくれるというわけではないからだ。
結構時間が経過してからようの方からそういえばさ~と教えてくれて知ることができるだけ、仲間外れになることは仕方がないと片付けられているけどやはり気になるものだ。
「まあ、一緒にいるとしてもこそこそやるつもりはないからね、見られるでしょうけど見ないでほしいわね」
「む、難しいことを言うね、そういうのって一番見たくなるものでしょ?」
「そう? 男の子といるところを見るならようのときでいいじゃない、で、そんなことを言っている割には離れていこうとするじゃない」
正論だ、どうしようもない。
あとは本人が嫌がっているのなら嬉々としてするような人間ではないから諦めるしかないようだ。
まあ、ようは何度も僕のところに来るから自然とまた三人で集まれるしいいか。
「温かいわね」
「うん、温かい」
普通に考えて無理だから言わないけどこのコンビニから出たくないぐらいには大きい。
両親が厳しいわけではないものの、一人のときは暖房を使わないようにしているから家だと寒いからだ。
電気代のことで母がため息を多くついているところを見てからはその自己ルールを作るしかなくなった。
なんてことはいまはいいか。
「美味しいね」
「そうね」
ただ、残念なのはあっという間に終わってしまうことだ。
そして終わってしまえば店内にいるのも不自然だから出ていくしかない。
「付き合ってくれてありがと、これで帰るわ」
「うん、少しだけだけど一緒にお出かけできてよかったよ」
大事なのは欲張らないことだ。
だから彼女と別れた後に一人とぼとぼと歩き出した。
やはり差があるのは確かなようだった。




