虚無竜キュラディウスの目覚め
双竜の契約者として、帝国と異端教団の戦争を沈めたカイル=アスカリオンは、神獣と人間の共存を模索する旅を続けていた。
だが、世界は静かに、そして確実に、均衡を失いつつあった。
白炎竜ヴァルセリウスと黒雷竜ノクトゼルム——
かつて一つだった神竜が、真理と理想に分かれ、それぞれの契約者を得た今、
その分断が、世界の根幹に亀裂を生じさせていた。
神殿の崩壊
ある日、カイルとリュミエールは、古代神殿〈エル=セリオス〉の調査に赴いた。
そこは、神々がかつて神竜を祀った聖域であり、今は封印された神獣の残骸が眠る場所とされていた。
「この気配……何かが、目覚めようとしている」
リュミエールが震える声で言う。
神殿の奥深く、封印の石碑が砕け、冷たい風が吹き抜ける。
その中心に現れたのは——
虚無竜キュラディウス。
氷と闇を纏い、白炎と黒雷の両方を拒絶する存在。
かつて一つだった神竜の“空白”であり、真理にも理想にも属さない、否定の神獣。
世界の崩壊
キュラディウスの咆哮が響いた瞬間、世界の魔力が乱れ、契約獣たちが苦しみ始める。
「これは……神獣たちの絆が、断ち切られていく……!」
帝国でも異端教団でも、神獣との契約が不安定になり、暴走が始まった。
キュラディウスは、契約という概念そのものを否定する力を持っていた。
「このままでは、神獣も人間も、共に滅びる……!」
カイルは、双竜の力を呼び起こす。
「神語詠唱・双竜の共鳴、再臨せよ!」
白炎竜ヴァルセリウスと黒雷竜ノクトゼルムが再び現れ、キュラディウスに対峙する。
だが、彼らの力は、かつて一つだった存在を前にして、互いに干渉し始める。
「このままでは、双竜の力が暴走する……!」
調停者の選択
カイルは剣を握りしめ、神語を唱える。
「我は、問いを持つ者。
真理も理想も、否定も、すべてを受け入れ、繋ぐ者。
キュラディウスよ、汝の問いに答えよう!」
その瞬間、キュラディウスの瞳が揺れ、咆哮が止まった。
「汝は、裂かれし世界を繋ぐ者か。
ならば、我が力をも、問いのために預けよう」
キュラディウスは、完全な契約ではなく、共鳴という形でカイルに力を授けた。
白炎、黒雷、そして虚無——
三つの神竜が、カイルの問いに応じて、世界の均衡を保つために動き始めた。
新たな黙示録
「これが……神々の黙示録の、第三章か」
リュミエールが呟く。
カイルは、三竜の力を胸に、世界の再構築へと歩み出す。
「俺は、調停者として、神獣と人間の未来を問い続ける。
答えは、まだ遠い。
だが、問い続ける限り、世界は繋がり続ける」
——神々の黙示録は、今、最終章への扉を開こうとしていた。