理想の国と真理の剣
帝都〈ルミナ・グラディア〉の騎士団本部にて、カイル=アスカリオンは神獣管理施設での戦闘報告を終えた。
だが、彼の心は静まらなかった。
神獣〈アクアリウス〉の声、そしてネオ=ノアの言葉が、彼の信念を揺らしていた。
「神獣は問いに答える者——」
その夜、カイルは再び密書を受け取る。
差出人は、ネオ。
内容はこうだった:
「理想の国を見に来い。
汝が真理を求めるなら、理想を知る必要がある。
——神選者ネオ=ノア」
理想の国〈ノミナ・エルディア〉
翌日、カイルはリュミエールと共に、帝都の地下に広がる隠された都市へと向かった。
そこは、異端教団〈リベラ・ノミナ〉が築いた理想郷——ノミナ・エルディア。
「ここは、契約を拒んだ神獣たちが自由に生きる場所。
人間と神獣が対等に共存する、もう一つの世界だ」
ネオが語る。
そこでは、神獣たちが人間と共に農を営み、学び、語り合っていた。
契約も命令もない。
ただ、意思の交流があるだけだった。
だが、カイルは気づく。
一部の神獣は人間との対話を避け、孤立していた。
人間同士の間にも、理念の違いから摩擦が生じていた。
「理想は、問い続けることで保たれる。
だが、問いを止めれば、理想はただの幻想になる」
カイルは呟く。
ネオは頷いた。
「この国も、完璧ではない。
だが、問いを交わすことで、理想は現実に近づく。
君の問いが、ここに必要なんだ」
真理の剣
その夜、ネオはカイルを神殿跡へと案内した。
そこには、封印された古代の神器——真理の剣〈ヴァルセリオン〉が眠っていた。
「この剣は、白炎竜ヴァルセリウスの力を宿す神器。
帝国はこれを封印し、真理を隠してきた。
だが、君ならば、この剣を目覚めさせることができる」
カイルが剣に手を伸ばすと、聖印が輝き、白炎が剣を包んだ。
「神語詠唱・真理の剣、覚醒せよ——!」
剣が光を放ち、封印が解かれる。
その瞬間、カイルの精神に、ヴァルセリウスの声が響いた。
「汝は、真理を求める者。
この剣は、問いを切り裂き、答えを導く。
だが、理想を否定する者には、災いをもたらす」
カイルは剣を握りしめた。
「俺は、真理も理想も否定しない。
ただ、問い続ける。
この世界が、神獣と人間にとって、何であるべきかを」
ネオは微笑んだ。
「ならば、君は“調停者”だ。
真理と理想の狭間に立つ者。
世界を裂くのではなく、繋ぐ者」
迫る帝国の影
だがその時、帝国騎士団の追撃部隊が〈ノミナ・エルディア〉に迫っていた。
「異端の都市を発見! 神獣の反乱を鎮圧せよ!」
カイルは剣を構えた。
「俺は、帝国の騎士だ。だが、神獣の声を聞いた者でもある。
この戦いは、正義のためではない。
問いのためだ!」
そして、白炎竜ヴァルセリウスと共に、カイルは帝国の部隊に立ち向かう。
——神々の黙示録は、ついにその扉を開き始めた。