帝都への旅と神選者ネオ
神獣との契約から三日後。
カイル=アスカリオンは、帝都〈ルミナ・グラディア〉への旅支度を整えていた。
「本当に行くのね、カイル」
リュミエールが、風鼠ゼフィリスを肩に乗せながら言った。
「ああ。聖印騎士団に入るには、帝都の神獣学院での試験を受けなきゃならない。俺は……もう迷わない」
彼の胸には、今も白炎竜ヴァルセリウスとの契約の印が輝いていた。
それは、帝国でも数百年に一度しか現れない「双竜の印」。
神々の意志を受ける者——**神選者**の証だった。
リュミエールもまた、神獣学院への推薦を受けていた。
二人は、村の祝福を受けて旅立った。
帝都への道中
旅の途中、二人は商隊と合流し、帝都へ向かう街道を進んでいた。
その夜、宿場町〈ヴァル=ノルド〉で、奇妙な一団と出会う。
「……あれは、異端教団〈リベラ・ノミナ〉の使者だ」
商隊の護衛が低く呟いた。
黒衣を纏った青年が、広場で演説をしていた。
「神獣は人の道具ではない。彼らは神々の使いであり、自由であるべきだ」
その声は澄み渡り、聴衆の心を揺さぶっていた。
「……あれが、ネオ=ノア」
リュミエールが目を見開く。
ネオは、神獣と直接対話できるという“神選者”。
帝国の神官すら恐れる存在であり、異端教団の象徴だった。
カイルは、彼の言葉に違和感を覚えながらも、目を逸らせなかった。
「君も、神獣と契約したのか?」
ネオが突然、カイルに声をかけてきた。
「……ああ。白炎竜ヴァルセリウスと」
その名を聞いた瞬間、ネオの瞳が揺れた。
「君は、真理を選んだのか。ならば、いずれ理想と衝突するだろう。
だが、覚えておくといい。神獣は、君の剣ではない。彼らは、君の問いに答える者だ」
そう言い残し、ネオは闇の中へと消えていった。
帝都到着
数日後、帝都〈ルミナ・グラディア〉に到着した二人は、神獣学院の門をくぐる。
そこには、帝国中から集まった契約者たちがいた。
試験は、神獣との連携、魔法詠唱、戦術判断など多岐に渡る。
カイルは、ヴァルセリウスとの絆を深めながら、試験に挑む決意を固める。
だが、彼の心には、ネオの言葉が残っていた。
「神獣は、問いに答える者——」
それは、彼の運命が、単なる戦いではなく、
世界の真理と理想の狭間に立つ者であることを示していた。
——そして、神々の黙示録が、静かに動き始める。