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虚問の印と封印契約術

帝国暦1125年、春。

神獣と人間が共に問いを交わす時代が訪れてから、2年が経過していた。


神域〈アストラ・ノヴァ〉では、かつての英雄カイル=アスカリオンが、神獣たちの問いを記録する旅を続けていた。

彼は、世界各地を巡りながら、まだ言葉を持たぬ神獣たちの声に耳を傾けていた。


ある日、カイルは辺境の村〈ノル=ヴァルド〉に立ち寄る。

そこでは、神獣との契約を持たない少年が、村の外れで空を見上げていた。


「……あの子は?」

風鼠ゼフィリスが耳を動かす。


村の長老が語る。

「セリス=ヴァルディアという名の少年です。神獣との契約はありませんが、よく“問い”を口にするのです。まるで、あなたの若い頃のように」


カイルは静かに頷いた。

「問いを持つ者……ならば、彼の旅は、もう始まっているのかもしれない」


その夜、セリスは夢を見る。

氷と闇に包まれた空間で、巨大な竜が彼を見下ろしていた。


「汝は、問いを持つ者か。

ならば、我が残響を受けよ」


その竜は、かつて世界を崩壊寸前まで導いた神獣——虚無竜キュラディウス。

だが、今現れたのはその“分体”であり、完全な力ではなかった。


目覚めたセリスの胸には、見慣れぬ印が刻まれていた。

それは、かつてカイルが持っていた「共問の紋章」の変異体——虚問のヴォイド・インクワイア


その頃、帝国では新たな騎士団が台頭していた。

かつての聖印騎士団副長が率いる急進派——黒印騎士団オルド・ネグラ


彼らは、神獣との共問を否定し、神獣を再び支配するための術式——封印契約術セラフィック・バインドを開発していた。

この術は、神獣の意思を封じ、強制的に命令に従わせるもの。

かつての契約制度よりもさらに強力で、神獣の人格そのものを消し去る危険な術だった。


虚問の印を持つセリスは、黒印騎士団にとって“危険な存在”だった。

彼の存在は、虚無竜の再来を意味し、世界の均衡を再び崩す可能性を秘めていた。


「セリス=ヴァルディア。神獣との非契約共鳴を確認。

拘束し、封印契約術を施すべし」


帝国の追撃部隊が村に現れ、セリスは逃亡を余儀なくされる。


逃亡の最中、セリスは虚無竜の分体と精神を通わせる。


「我は、問いに応える者。

汝が問う限り、我は力を貸す」


セリスは叫ぶ。

「俺は、神獣を支配したくない!

でも、なぜ世界はまた神獣を縛ろうとするんだ!?

その理由を知りたい。問いたい!」


その瞬間、虚問の印が輝き、氷と闇の力が彼の周囲を包む。


「虚問詠唱・氷闇の残響キュラディウス・レクイエム!」


黒印騎士団の術式が打ち破られ、セリスは逃亡に成功する。


彼の問いは、まだ始まったばかりだった。

「俺は、問い続ける。

神獣と人間が、どうあるべきかを——」


——そして、神々の黙示録は、第二篇へと静かに幕を開ける。

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