君が好きなのに
「松木の字。俺好きだよ」
書記になって間もないころ
生徒会長に言われた言葉。
あの言葉がどれだけ嬉しかったか・・・
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「会長」
「何?」
「目。優衣さんの事追ってますよ」
「本当?やばいな。無意識だよ」
なんていつもの会話。
そう、こいつ高野 颯真は恋をしているのだ。
気づいているのは私1人だけだが…。
「しっかりしないと優衣さんに嫌われちゃうよ」
「うわっ、きついお言葉」
へらへらしちゃって……
優衣さんは隣のクラスの美化委員長
私とは正反対の人。
かわいくて、素直で―――――――…。
正直、優衣さんを見る高野の目は嫌い。
まるで私が知らない男の人みたいだから。
「とりあえず、仕事してくださーい」
「はいはい。ちゃんとやりますって」
そういってプリントに記入を始めた高野。
優衣さんが高野の事を嫌いになっちゃえばいいのに。
心の中でポツリと呟いた。
「どうしたの?」
「あ~松木か~」
それから数日経ったある日
高野は生徒会室の机に伏せていた。
「俺さ……川中に振られた」
川中って言うのは優衣さんの苗字。
「そう、なんだ……」
心の奥底でよかったと思う反面
高野の辛そうな顔は見たくないという気持ちが
入り混じってすごく複雑だった。
「意外と振られるのってきついな……」
「優衣さんの見る目がなかっただけだよ」
だって私だったら高野のいい所いっぱい知ってるし……
その言葉は言えないけれど……。
「そっか…。そう思えばいいよな」
「その意気だよ!」
高野は眉を下げて酷く悲しげな顔をしていて
すごく胸が締め付けられた。
それから数カ月が経ち
高野は元気を取り戻した。
「松木~。俺好きな人ができたっぽい」
「ふ~ん…」
胸がチクリと痛んだけど
それを察されないそうに平静を装った。
「で、今回は誰なの?」
「ん~?素っ気ないけどすごく優しくて
気配り上手で、他にも「ストップ!なんか長くなりそうだからいい」
何だよ。今度は優衣さんの時より本気じゃん……。
結局、高野が見る人は
私ではない事は変わらないのだから
なのにそれでも高野の事を想っている私が
すごく馬鹿に見えて。
涙がこぼれそうになってしまった。
「松木なんだけど」
「?何が……?」
「俺の好きな人」
「えっ……?!」
あまりの衝撃に堪えていた涙が流れてしまた。
高野が私のこと好き?
嘘……。
「おい、泣くなよ………で、返事ほしいんだけど…」
「私も」
『好き』と続けようとすると
急に抱きしめられえた。
「マジ?…すげぇ嬉しい!!」
何時もより少し子供っぽい高野に少し頬が緩んだ。
後日、高野から
優衣さんに告白した時優衣さんから
「本当に貴方が好きなのは私じゃないと思うよ」
って微笑まれたことを聞かされた。
そして私に励まされて本当に好きなのは
私だと気付いたという。
「松木って意外と鈍いんだな」
そう言われて私が顔を赤くしたのはまた別の話。