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第3話「ファースト・コンタクト」

竹内勇太


 雨がしとしとと降り続き、絶え間なく地面を叩いていた。冷たい滴が俺のエルモを伝い、エクソのチェインメイルの上でキラリと光の筋を描く。俺は開盟高校のイベントホール入り口に立っていた。広場の噴水がゴボゴボと音を立て、その音も水のカーテンに遮られてくぐもって聞こえる。夜が学校を飲み込み、空は厚い暗雲に覆われていた。


(スカーレット――桜井校長の命令…俺の計画に従え、か。皮肉なもんだ)責任の重さが、まだ肩にズシリとのしかかっていた。エージェントたちはすでに配置につき、それぞれが持ち場に散っている。それでも、フォーレンとの口論の記憶が、まだ頭の中で燃え上がっていた。あいつ…相変わらず頑固に食ってかかってきたが、なんとか黙らせた。それにシロイ…あのガキ。持ち場に行くように、ほとんど怒鳴らなきゃならなかった。


「何があっても、あなたのそばで戦いたいんだって!」


 彼女はそう叫び、エルモが投影する白い鬼が、挑戦的にギラリと光った。俺の口元に苦笑が浮かんだ。開いたバイザーから、冷たい雨が容赦なく顔を濡らす。


(…あのガキが)


 凛とした、だがどこか軽やかな声が空気を切り裂いた。「もうすぐ時間です、ワイトさん」


 ギギッ…とエルモの金属が軋む音を立てて振り返る。ローニンが後ろに立っていた。薄ピンクのマントはずぶ濡れで、非作動状態のエルモの下から現れた若い顔には、誇りと緊張が入り混じった瞳が輝いていた。彼は一歩前に出ると、雨がその顔を濡らした。「あなたの隣で戦えないのは残念ですが、この任務であなたの指揮下に入れることを、誇りに思います」


 バイザーを閉じて表情を隠す。(ガキ共が…)


「すみません」俺は言った。声は金属に遮られてくぐもっていたが、重々しかった。「君たちをこんなことに巻き込みたくはありませんでした。私の生徒は…戦場にいるべきではありません」


 彼は首を横に振った。マントが翻る。「俺たちの学校です。仲間が危険に晒されている。戦うのは当然です」


(笑えなかった)シロイ、ローニン、他の生徒たち…一人一人の重みが、ナイフのように胸に突き刺さる。ズキン!この血生臭い世界には、若すぎる。


 彼は視線を落とした。その声は少し恥ずかしそうだった。「いえ、謝るべきなのは俺の方です。俺があの時判断を誤って…先生が、俺の間違いを正してくれた」


(あの日か…)記憶が蘇る。追い詰められていた。だが、仲間を守ろうと、必死だった。「君は追い詰められていました」俺は言った、声は固い。「必要だと思うことをしただけです。責めてはいません」


 彼は濡れた髪を手でかき上げ、その瞳が輝いた。「あの時、あなたがワイト・ガントレットだと知っていたら、俺はあの過ちを避けられたかもしれません」


 俺は奴の方へ歩み寄った。雨がチェインメイルを叩く音だけが響く。ポン、と奴の肩に手を置いた。金属の冷たさが、濡れたマント越しに伝わる。鮮やかなピンクの短髪が、青い瞳にかかっていた。その瞳が、驚きで大きく見開かれ、潤んでいるように見えた。


「いずれにせよ、君を誇りに思います…」若い顔が、言葉の衝撃で固まった。「…田中くん」


 彼の口がパクパクと動いたが、言葉は出なかった。俺たちの間の沈黙は雨音に飲み込まれ、降り注ぐ雨粒の音だけが、まるで戦いの始まりを告げる太鼓のように響いていた。


_________________________________________________


花宮陽菜


 大学の卒業式会場は、まるでお金のかかった夢の中から抜け出してきたみたいだった。クリスタルのシャンデリアが金色の光を放ち、白い大理石の壁でキラキラと踊っている。円卓には麻のテーブルクロスがかけられ、それぞれに白い花のフラワーアレンジメントとフローティングキャンドルが飾られていた。


(全部完璧…そして、全部が嘘っぱち。)


 奥のステージには、赤いカーテンと開盟の校章が飾られ、スピーチの時を待っていた。でも、誰も知らない――少なくとも、ほとんどの人は――この場所の秘密を。大学の部屋は「分離式」で、巨大なパズルのピースみたいに移動できる巧妙な仕掛けになっていた。今日、このホールは建物の最上階まで上がって、月明かりの下でのイベントということになっている。


 真相?それは罠。ランデブーのドローンを追い詰めるための、鼠捕りだった。


 あたしはホールを歩きながら、理香ちゃんが貸してくれたオシャレなドレスが、なんだか変な感じで体にフィットするのを感じていた。紺色のドレスで、長袖のブラウスが手首に固定されたコミュニケーターを完璧に隠してくれている。赤い髪は下ろしていたけど、サイドは紫のメッシュを隠すように内側に結んでいた。


「なんか目が変…」緑色の瞳を隠す金色のコンタクトレンズに慣れようと瞬きしながら、あたしは呟いた。


 理香ちゃんのフリをしなきゃいけないんだけど、ただの偽物って感じ。


(しかも、めちゃくちゃビビってる偽物。)


「心を落ち着かせ、『卒業式』を楽しむのじゃ、スピリット・ブロッサム」しゃがれた、でも落ち着いた声が耳元で響いた。


(藤先生…じゃなくて、リキマル。もう、絶対慣れないって!しかも理香ちゃんのフリまでしなきゃいけないなんて!)


 別の声がコミュニケーターから弾けた。「スピリット・ブロッサムですって?とても素敵ですわ!まるで、わたくしたちが極秘のスパイ組織のようですわね!」


 フラヴちゃん――ゴールデンアイの笑い声に、恐怖の中、思わず笑いそうになった。


「静かになさい、ゴールデンアイ!」リキマルの鋭い声が命令する。「お喋りはそこまでじゃ」


「うん、怖いけど、これはこれでちょっとカッコいいかも」あたしはポーズを保とうとしながら、呟いた。「ていうか、あたしの耳元で喧嘩するのやめてくれないかな…」


◇ ◇ ◇


 あたしの頭は、今日の朝に戻っていた。桜井校長が、作戦はゆうくんの計画通りに進めると発表した時。頭に血が上って、あたしはすぐに彼に電話した。


「花宮さん、その方が安全です」彼は冷たく、遠い声で繰り返すだけ。


 その時、安藤先生があたしの手からスマホを奪った。「勇太、少し問題があるのだけれど」


「何の問題ですか?」


「ランデブーをできるだけ早く捕まえたいのです。リヴァイアサンとフォーレンが援護できるわ」


「どうやって?」


「わたくしは複雑なシステムをハッキングできます。ドローンを一体捕まえれば、奴の居場所を突き止められるかしら」


「ドローンは暗号化されています」ゆうくんは言い返した。「一体捕まえても、何も分かりません」


「直接命令が出されない限りは、ね」彼女は言った。「そのためには、奴らが欲しいものを与えるのよ」


「椿さんを囮に使うことには反対です」


「ええ、分かっていますわ。でも、デスブローは椿さんと花宮さんを間違えたのかもしれない、かしら―」


「ダメだ!」


 彼の声が、雷のように安藤先生の言葉を遮った。


「スカーレットが指揮官かもしれませんが、ゲートでは、作戦を指揮するのは軍師です。私の承認なしに、計画は変更しません」


 あたしはスマホを取り返した。「あたしがやるよ、ゆうくん」


「ダメだ」


「あなたが一匹狼で危険を冒すなら、あたしだってそうする!それに、前にもやったことあるし!」


「全く違う状況です、花宮さん」


「関係ない!」


 バンッ!


 彼の顔に、電話を切ってやった。


◇ ◇ ◇


 現在に戻って、あたしは震えていた。ドレスが1トンもあるみたいに重い。(あたしならできる、あたしならできる…)


 その時、リキマルの冷たい声が響いた。「ドローンが現れた」


 ドキッ!


 心臓が跳ね上がった。


「こちらでは撃墜したが、エコーエリアにさらに侵入中」


(この声…まさか…)


 胃が、氷みたいに冷たくなった。あたしが何かを考える前に、ゴールデンアイが震える声で言った。「まあ…人間そっくりですわね…」


「今じゃ、スピリット・ブロッサム」と、リキマルが言った。


 ホールを出て、横の廊下へ。あたしは「エレベーター」である移動式の部屋に入り、影に沈んだ外の廊下に出た。理香ちゃんのフリをして、何気なく歩き始める。


 突然、天井から何かが落ちてきた。ドンッ!


 あたしは叫んで、床に倒れ込む。人型のドローンが、暗闇で赤い目を光らせ、あたしに腕を向けた。


 プシュッ!


 静寂を切り裂く発射音。あたしは最悪を覚悟して目を閉じた…でも、目の前で青い力場が輝き、**ガキン!**という金属音と共に攻撃を弾いた。


 あたしは目を見開いた。暗闇で光るその盾を見つめる。何、これ?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ランデブー


 チッ…時間の無駄だな。


 このクソつまんねえ廊下をウロウロさせられて、甘やかされた小娘一人を探すためだなんて。椿理香、椿テックのお姫様ねぇ…くだらねえ、知ったことか。


 命令されるのは反吐が出る。特にデスブローの野郎からはな。世界の王様気取りやがって。で、汚れ仕事をするのは誰だ?もちろん、史上最高のドローンを作ったこの天才俺様よ。


「彼女を見つけろ、ランデブー」「失敗はするな、ランデブー」…アー、マジでムカつく声だぜ!


 まあ、俺様のベイビーたちは完璧だがな。キャンパスに潜入して、一体一体が芸術品だ。リアルすぎて、時々この俺様ですら見間違うほどだぜ。問題はいつも同じ…ゲートだ。あの役立たずの虫けらどもが、いっつも楽しみを台無しにしやがる。


 …と、その時だ。ビンゴ。俺様のベイビーの一機のカメラが、奴を捉えた。いたぜ、あの女。バカみたいなドレス着て、赤い髪をなびかせながら、まるでここが自分のモンみたいに廊下を闊歩してやがる。椿理香、生身の、クソ生意気な姿でな。


 命令は一瞬だ。俺様のベイビーの一機が、スルスルと蜘蛛みてえに静かに天井から降りる。女はキャーッと叫び――ザマァねえな――床に崩れ落ちた。**プシュッ!**正確な一射が、寸分の狂いもなくターゲットに放たれる。


 だが…なんだと?青い輝き?力場だと?


 カメラで最大ズームにしてやる。ドレスの胸元…そこに、白く金属的な何かが、キラリと光っていた。


「あのクソ女、エクソのチェインメイルを着てやがるのか?!」


 俺様の叫び声が、隠れ家の壁に響き渡った。そうかよ。そうじゃなきゃな。


 クソッたれのゲートが!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


リキマル


 プシュッ!


 銃声が廊下に響いた。影から放たれた正確な一射が、ドローンの頭部を金属と回路の雨に変えて吹き飛ばす。バンッ!


 ロックオンが透明状態から姿を現し、その黒いマントがカラスの翼のように翻った。彼は銃を構え、バイザーの下で鋭い視線を向ける。「ご無事ですかな、スピリット・ブロッサム?」


 スピリット・ブロッサムは、まだ床に倒れたまま、震えながら頷いた。


 ドローンの残骸が床に叩きつけられる前に、アヤメが猫のようにしなやかに天井から飛び降りた。その手には、緑色に輝くデータグローブがエネルギーを脈打たせている。ホログラムのキーボードが宙に浮かび上がり、彼女の指が飛ぶように動き、グローブから伸びた細いケーブルが破壊されたドローンに接続される。


「見つけたわ」彼女は言い放った。その声は固く、瞳はアドレナリンで輝いていた。


◇ ◇ ◇


 司令室で、儂は全てを監視しておった。指に挟まれた消えたままの煙草。安煙草で嗄れた声。じゃが、心は常に保ってきた静けさに満ちておる。


「奴はB地点の倉庫におるぞ、リヴァイアサン」儂はコミュニケーターにそう告げた。目の前のモニターには、廊下で繰り広げられる混沌が映し出されておった。


(儂の心は、礼子との会議へと戻っておった…あの娘たちが、あの無茶な計画を持って乱入してきた時のことじゃ。ワイトが倉庫の利用法を説明しておったな。)


 儂の口元に、半笑いが浮かんだ。


(あの小僧…大したもんじゃ。)


「了解」リヴァイアサンの冷たく、感情のない声が返ってきた。


 ゲームはまだ始まったばかりじゃ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ランデブー


 アー、クソが!


 ゲートのあのクソ女…俺様の居場所を突き止めやがった!例のコンベンションで邪魔しやがった、あの女だ!


 なんでだ?!俺様のドローンは完璧だ!暗号化も芸術品の域で、絶対に破れねえ!だが、そうだよな、ゲートの奴らはいつだって安っぽい手口で、この天才の芸術を台無しにしやがる!


 チッ。任務なんて知ったことか。後は任せたぜ、デスブロー。俺様はここからトンズラする。


 俺様の部屋に戻ると、モニターの光が顔の上でピカピカと点滅していた。俺様のベイビーたちが、リアルタイムで混沌を映し出している。突然、一機のカメラが、別の機体が粉々にされるのを捉えた。バンッ!


 ただの反射で、俺様は床に飛び込んだ。心臓が肋骨にガンガン当たる。次の瞬間、俺様がいたキャビンが、まるで紙のように真っ二つに切り裂かれて爆発した。メシャッ!


 汗が目に入るのも構わず、頭を上げる。そして、奴を見た。


 女だ。


 黒のタクティカルスーツに、体の隅々まで覆うチェインメイル。青黒い髪が、重力に逆らって浮いている。奴のエルモは、のっぺらぼうの青い顔を投影していた…特徴のない…ただただ不気味な虚無。死の天使のように両腕を広げ、逆さまに宙に浮いている。その右手からは、三本の圧縮された空気の刃が、指の間からシュンシュンと鋭い音を立てていた。地獄から来たウルヴァリンかよ!


 パニックが俺様を支配し、自信は粉々に砕け散った。情けない、甲高い叫び声が出た。


「奴ら、もうここに来やがったのか?!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


葉志友美


 ランデブーと名乗る男…深い隈、脂ぎった緑の髪、馬鹿げた赤いヘッドセット。貧弱な立ち姿。口にはペロペロキャンディー。その表情には、傲慢と恐怖が入り混じっている。


(評価:近接戦闘では脅威レベルは最低。危険なのは、そのオモチャだけ)


「あなたのようタイプが、わたしは一番嫌い」冷たい囁きが、わたしの口から漏れた。「予測通りだわ」


 シュイン!


 エクソ・チェインメイルの圧縮空気の刃が左腕に形成され、空気を切り裂く。わたしは踏み込んだ。


 先手を取ったのは彼だったが、右側からゴッと現れた巨大な機械仕掛けの腕は、あまりにも速すぎた。(想定外)


 わたしは回転してそれをかわし、外科手術のような精密さで金属をスパァァンと切り裂く。刃が合金を断つ音は、まるで音楽のようだった。彼はその隙を突いて蹴りを放ってきた。**ドッ!**その衝撃で二歩後退させられ、一瞬息が止まる。


(反射神経はあるのね。座りっぱなしのオタクのくせに、生存本能だけは…)


 彼は驚くほど俊敏な動きでバックフリップを決めると、**タッタッタッ!**と走り出した。その左腕はホログラムのキーボードに変化し、指が狂ったように踊っている。


(オモチャを使うために距離を取るつもりね。典型的だわ)


「実験用のネズミにしては、素早いじゃない」わたしはそう呟き、すでに動き出していた。アドレナリンが、冷たく一定のリズムで血管を流れる。


 ゾロゾロと、奴らが現れた。赤い目がギラリと光る人型ドローン。走るもの、プロペラを起動してミニ飛行機のように飛ぶもの、全てがプラズマの弾丸を**ドシュッ!ドシュッ!**と放ってくる。


(数の暴力ね。非効率的だけど、厄介だわ)


 わたしは回転し、空気の刃が体の一部となり、二体のターゲットを一度にザンッ!と切り裂いた。箱の山をフワリと飛び越えると、プラズマが数センチ横の空気を焦がす。それは、死の舞踏。


 一体がわたしを掴もうとするが、流れるような動きでその両腕を胴体から切り離す。金属が**ガラン!と虚しい音を立てて床に落ちた。もう一体が背後から迫る。わたしは転がり込み、蹴り上げの一撃が奴を壁にゴシャァ!**と叩きつけた。(脆いわね。資源の無駄遣い)


 ゲームが変わった。三メートル近いハンマーのような腕を持つ重装ドローン三体が、通路を塞ぐ。天井からは、ミニ戦闘機のようなエアロ・ドローンが降下し、**ビュンビュンビュン!**と絶え間ない制圧射撃を開始した。(脅威レベルを格上げ:高)チェインメイルが左腕に盾を形成し、**バキン!**と衝撃を吸収して金属が輝く。


(エネルギー吸収プロトコル:起動)フォーレン先輩から借りた力が、右腕に流れ込む。(これは、使える)わたしは黄色い、ほとんど金色に近いエネルギーの奔流を放ち、エアロ・ドローンを過熱した金属の紙吹雪へと変えた。


 でも、巨体は別。一体がわたしを押し潰そうと、地面を揺るがす拳を振り下ろす。わたしは跳躍し、空中で回転しながら、その腕を関節部分から**ズバァァァン!**と切断した。火花の雨が倉庫を照らす。


 もう一体が横からわたしを殴りつけ、箱の壁に叩きつけられた。鋭い痛みが走るが、痛みはただの情報にすぎない。埃を吐き出しながら立ち上がる。(弱点:脚部。動きが鈍重)


 わたしの空気の刃は、まるで精密なメスのように、隣にいた巨大なドローンの腕をザシュッ!と切り裂いた。その瞬間、メッカからプラズマの奔流が放たれる。わたしは即座に、動かなくなったその巨体の後ろに身を投げた。一秒前までわたしがいた場所の金属が、熱でジュウウと溶けていく。


 走った。一体の機械的な腱を切り裂き、ズシン!という轟音とともに崩れさせる。三体目がわたしを不意打ちし、その拳がわたしを床に押さえつけた。チェインメイルの盾が輝き、かろうじてその衝撃を受け止める。(圧力が…限界!)


 その時、ランデブーに目をやると、あのクソ野郎がメッカ――赤い目が点滅する巨大なアーマー――に乗り込んでいるところだった。


(陳腐だけど、奴の火力を劇的に上げるわね。最優先目標)


 腕のキャノンが、危険な赤色に**ゴゴゴゴ…**と輝き始めた。


(砲撃が来る。逃げ場がない)


 だが、メッカが撃つ前に、一本の黄色い閃光がキィィィン!と空を切り裂き、わたしの側面にいた三体のドローンを紙のようにスライスした。その光線は、残りのエアロ・ドローンを蒸発させただけでなく、わたしを捕らえていた巨体を直撃し、よろめかせてわたしを解放した。光線は止まらず、メッカの本体に命中し、発射を強制的に中断させた。


 上から、彼が舞い降りた。


「待たせたな、リヴァイアサン」と、フォーレン先輩が言った。


 マスクが口元を隠していても、あの茶色の瞳はあまりにも澄んでいて、周りの炎を反射して燃えるような赤色に輝いていた。冷たく、研ぎ澄まされた…捕食者の目。わたしは身動きが取れなかった。恐怖からじゃない。それは…魅了。彼の暴力が持つ、純粋な美しさに。


「もう一匹増えたところで、この俺様に敵うものか!」ランデブーが、ヒステリックな声で叫んだ。


 フォーレン先輩はわたしに向かってくるドローンに視線を向け、わたしは再び戦闘に戻り、切り裂き、避ける。彼は向き直り、メッカに向かって疾風のように駆けていった。巨大なアーマーが粉砕の一撃を繰り出すが、フォーレン先輩はありえないほどの滑らかさでそれをかわし、自身の拳でメッカの腕に反撃した。


 インパクトの瞬間、その拳にある黄色いエネルギーが脈打つ。メッカが再度攻撃する。フォーレン先輩は跳躍し、敵の腕の上に着地すると、至近距離からコックピットにエネルギー弾を撃ち込んだ。


(傷一つない。装甲が厚すぎるわ)


 わたしがまだ小型ドローンを切り刻んでいると、天井からさらにエアロ・ドローンが出現した。奴らが撃つ前に、空中で爆発四散する。見ると、フォーレン先輩がこちらへ走りながら、黄色いエネルギーを腕に流し、指先に小さな光る球体を集めていた。


 彼は撃った。弾丸はドローンを貫通し、内側から膨張させて爆発させる。最後の一発を撃ち終えると即座に反転し、再びメッカに集中した。


 巨大なアーマーが、再び赤いプラズマ光線を放つ。フォーレン先輩は跳躍し、今や両腕に渦巻くように脈動する強烈な黄色いエネルギーを輝かせた。


 彼が空中でメッカに接近したその時、先ほどわたしが武装解除した巨大ドローンが現れ、彼を押し潰そうとする。でも、わたしはすでにそこにいた。わたしの空気の刃が、そのドローンの胴体を真っ二つに切り裂いた。


(あなたの役目を、先輩)


 その一瞬の隙で十分だった。フォーレン先輩の集中されたエネルギーの奔流がメッカの胸部を直撃し、**ドッガァァァン!**と爆発させた。ランデブーは燃え盛るコックピットから飛び降り、怯えたネズミのように落下した。わたしは走った。膝で奴の背中を押さえつける。


「ゲームオーバーよ」わたしは囁いた。「投降なさい。さもなくば、四肢を切り離すわ」


 奴は「クソが!」と吐き捨て、左腕が光り、ミニコンピューターが起動した。止めようとしたが、彼は自分の頭をパネルに**ゴンッ!**と叩きつけて気絶した。赤いヘッドセットが床を転がる。


(想定外。でも、有効ね)


「油断するな!」フォーレン先輩が叫んだ。


 ワラワラと、さらにドローンが。メッカが床に開けた穴から、何十体も。赤い目が、暗闇の中でわたしたちを囲んでいた。


「簡単には終わらねえな、いつだってそうだ!」彼が唸った。


 わたしたちは、再び身構えた。戦いは、まだ終わりそうになかった…

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