那古野城
「あの若様ではお家は大丈夫かや?」
「勘十郎様とは大違いじゃ。」
「守り役の中務殿も大変じゃのう。」
老職の林新五郎(通勝)や青山与三右衛門らは中務(平手政秀)に皮肉るのが常であり中務はじっと耐えるのも常であった。
勝手方(厨房など)でも女中たちがひそかに吉法師を皮肉っているのも中務は知っていた。
「じいっ!今日も勝ったぞ!」
吉法師である。
「若っ、少しは態度をお改めくだされ。」
「なんじゃ、また新五郎共に皮肉られたのか、気にするな、わしはあのような奴ら、屁でもないぞ!」
「そうは申されましても弟君の勘十郎様を見習って」
「五月蝿いっ!わしはわしじゃっ!」
古渡の城である。
「吉法師は相変わらずだらしがない格好で出歩いておるのか?」
「はい、左様にきいております。」
「平手は守り役というになにをしておるのやらのう。」
「まことに。」
吉法師の母、土田御前は吉法師にはほとほとあきれているのである。
「ひきかえ、勘十郎は武家の子として立派に育って、兄とは大違いじゃ!」
勘十郎信行、吉法師の弟である。
「殿(信秀)の後を継ぐのは誰が見ても勘十郎の方が似合うているのではないかえ?」
「お方様、そのようなことをお口にしては、、、」
「おほほほ、戯れ言じゃ(笑)」
吉法師の守り役、平手政秀にはそのような土田御前の思惑もきこえていた、そして吉法師にも。
その頃信秀はある時は西三河まで進出してきていた隣国、駿河遠江の今川義元の軍と戦い、またある時は尾張の北の美濃へ出陣と古渡でゆっくりする間もないようであった。
そんな最中、吉法師の元服の儀が古渡の城で執り行われ、吉法師から織田三郎信長となったのである。そして平手政秀の立案で美濃の斎藤山城守道三の娘、帰蝶と信長との縁談が尾張と美濃の間でまとまった。




