aeternam habeas requiem
暗い、何も見えない、周りにいた将兵達はいずこ。わたくしは死んだのか、まだ生きているのか、全く見当もつかない。わたくしの身の上で何かがおきているのだろうがこう真っ暗闇では動きようがない。
「チェーザレ殿」
「だれか!一体何がどうなっているのか」
「今は1507年3月11日、あなたはナヴァラ王国の騎士としてスペイン軍と戦っていたのですよ。そしてあなたは戦死しました」
「わたくしは死んだのか。」
「それにしてもあなたはどなたなのか?
そしてわたしをどうしようとしているのか」
「チェーザレ殿、わたしが誰かよりもあなたはこれから何をしたい?あなたが何をしたいのか決めてもらえなければわたしには何もできないのですよ。」
チェーザレの目に周りの光景がじんわりと見え始めてきた。
たくさんの将兵が広い空間に倒れている。
ナヴァラ王の後に6人の騎士が何者かの遺体を担いで運んでいる。
今日の戦いは終わったようだ。
「チェーザレ殿、さてこれからどうしたいですか」
「どうしたいって死んだら後は最後の審判の時まで寝ているだけじゃないのか?」
「キリスト教的には正解だな。」
「じゃあなんだ、もう一度生まれて新しい生を体験できるとでもいうのか」
「それが可能だとしたらチェーザレ殿、トライしてみるか?」
「そもそもお前は何者なんだ!」
「俺はお前のメンターだよ」
「わかった、そして俺が次に死んだら俺の魂を持ち去るんだな」
「それは悪魔じゃないか、俺は悪魔じゃないぜ。むしろ悪魔的所業を行ってきたのはお前さんの方じゃあないのかね」
チェーザレはとっさに何も言い返せなかった。生前の自分に面と向かって悪罵してくるような者はいなかった。少なくとも教会軍司令官、教会の旗手であった頃の自分には。
弟のホアン、妹ルクレツィアの夫、アルフォンソ・ダラゴーナ、ファエンツァのマンフレディ兄弟、腹心であったレミーレ。マジョーネの乱の時は自分を裏切ったとはいえ親しき友であり部下でもあったヴィテロッツォ・ヴィテッリたち、わたくしの手は、わたくしの身体は肉親や友たちの血で穢れている。
このような死に様を迎えたのはその報いだとでもいうのか。
「だがあの時はそれぞれそうする必要があったのだ!わたくしは聖ローマ教会を守る教会軍司令官だったのだから。」
「だから自分には裁かれるような落ち度は何一つないと?チェーザレ殿、あなたはまだ学びが足りない。まだ安息を与えるわけにはいかない。」
メンターは東を指差し「これからあなたが誕生する場所が現れる。そしてチェーザレ・ボルジアの記憶は封印される。」
急に周りが白い靄ばかりになり何も見えず聴こえなくなった。
そして何かの力が自分を何処かへと送り出そうとしてきた。




