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第1楽章 Presto

1503年7月、蒼い馬に乗って死がやってきたかのようだった。ロマーノと石畳を焼き尽くすかのような強い日差しが毎日降り注いできたのだ。テベレ川の水位は日増しに下がりローマから脱出する各国の大使や教皇庁の役人の乗った馬車が毎日のように駆けて行った。逃げ出すことのできないロマーノ達は息を潜めて家の中に閉じこもりそのような家を持たない者たちは道端で死んでいくのだった。

「ペストだ、ペストだ!」

しかしそれはペストではなかった。

『3日ごとの熱』と言われていたマラリアだった。

マラリアはハマダラ蚊に刺されることによりマラリア病原虫が体内に入ることにより起こる病気、それがマラリアだ。

ハマダラ蚊は貴族も庶民も、そして聖職者も関係なくターゲットとする。カピトリーノの丘も法王宮殿もおかまいなし。かつてローマの凱旋将軍がパレードをした道は死体が腐るままにされていた。


72歳のアレクサンデル6世も26歳のチェーザレもハマダラ蚊の毒牙から逃げることはできなかった。8月の在位11周年記念式典を控えていた彼らはローマを離れる訳にはいかなかったのだ。

当時の医療では熱くなった血液を抜くのが症状を軽減させる唯一の方法だったのだ。

端で見ていると教皇アレクサンデルよりチェーザレの方が深刻なように思われた。


しかし72歳の教皇アレクサンデル6世の臓器はマラリアの熱に耐えることができなかった。

1503年8月18日、その晩鐘の中、教皇アレクサンデル6世は二度と明日の来ない世界へ旅立っていったのだった。

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