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ローマ、1503年

1503年、この年のローマは例年になく暑かった。まだ6月というのにそこかしこで犬が寝そべって舌をだしてるありさまだ。

「チェーザレ様、今年の教皇在位11周年記念式典は秋にずらして開催いたしませんか?」

「いや、秋にはボローニャ攻めの準備が始まる、それに8月に決めたのは聖下ご自身だから変える訳にはいかない。」

チェーザレ・ボルジア、この年26歳、教会軍司令官であり教会の旗手、フィレンツェ以外の教会領の実質的な支配者。それはひとえに父が教皇アレクサンデル6世であるおかげだ。

もし教皇崩御とでもなればチェーザレの地位も権力もカードでできた家のように一瞬で崩れ去るだろう。さればこそ教皇がいまだ健在でその横ではチェーザレが盾となっている姿をロマーノだけではなく各国出身の枢機卿団に見せつけなければならないのだ。

そんなチェーザレと踵を接してドン・ミケロットは法王宮殿へ歩いている。

ドン・ミケロット、ミケーレ・ダ・コレーリアはまだアレクサンデル6世がロドリーゴ・ボルジア枢機卿だった頃からチェーザレと一緒に育った。ピサの大学にも一緒に通った。

チェーザレの父ロドリーゴが教皇に即位しチェーザレが枢機卿になってからもフランス国王シャルル8世がナポリ王国に攻め込み、そして速やかにフランスへ逃げ帰った時もチェーザレと一緒、枢機卿衣を脱ぎヴァレンティーノ公爵として教会軍司令官、教会の旗手として教会領で勝手気ままに私領を広げていた僭主達と戦っていた時も一緒だった。 



「チェーザレ!待っておったぞ、例の式典の準備はどうなっておる?」

力ない声で教皇アレクサンデル6世が尋ねた。

「聖下、ご安心下さい、準備は滞りなく進んでおります。それよりも聖下、体調はいかがでしょう?最近は食が進んでないと伺っております。」

「なに、ただの暑気あたりじゃろう。大したことでもないのに侍医が大げさに言っておるだけじゃ、案ずることはない。」

しかし教皇の声には元気な時の覇気がないのである。それがチェーザレには心配なのだ。

その後、二言三言話し寝室を後にした。

自室に入りミケロットと話すと少しは気楽になるチェーザレであった。



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