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忌録  作者: えいる
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その三 事故物件

一年くらい前まで、約15年間、僕は極度な潔癖症に悩まされていた。

その発端になった話をしようと思う。


僕が18歳の頃…夏休み、父のアルバイトの手伝いで清掃をすることになった。現地行くまではよくある普通の家の清掃だろうと思い、楽勝じゃん!と心踊らせていた。

しかし、いざ着き、清掃道具一式を降ろし、現場のアパートの一室に入った瞬間、鼻が曲がるという表現が正しいか分からないが…酷い激臭がする。

そう、俗にいう死臭である。生きてきた中でこれほど酷い臭いは嗅いだことがない。そして、何より空気が重たい。僕が清掃するのは、”事故物件”だった。

浴槽には溢れんばかりの汚物が敷き詰められ、トイレも詰まっていた。

死因は分からないものの…おそらく生活が困窮し、光熱費等のやりくりも出来ず、数ヶ月経っていたのだろう。

死体の発見も数週間遅れ、近隣住人が察知したのだと思う。


事故物件の清掃はその日で終わらず、次の日もあった。

そこからの記憶は確かではないが、同じく、腐敗したもの、汚物が詰められた部屋であった…。


僕は結局、5件ほど、事故物件を清掃することになった、今でも塩素消毒の匂いを嗅ぐのが苦手である。

しかし、約15年掛けて、潔癖症は克服し、普通の生活を送れるまで回復した。

それから、”心理的瑕疵”(しんりてきかし)いわゆる事故物件は避けるようになった。




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