誰も見ない創作物
まただ
またやってしまっている。
誰も見ない創作物を作るために週の稼ぎ以上の金を注ぎ込んで取材をしている。
2年前に「自分の創作物は誰も見ない」と気付いたはずなのに。
見なければわからない物を実際に見てみたいと日本全国の列車を乗り回った。
時雨沢恵一の「キノの旅」を読みながら。
見た景色に適当な物語と写真を付けて情景を600文字程度の文章に書き起こした。
そしてネットに上げた。
しかし誰も見なかった。
そんな生活を2年ほど続けた。
中上健次の故郷「新宮」はとても遠かった。
して、紀伊半島はとても大きかった。
しかしそんなこと書いてネットに上げても誰も見ない。
誰も見ない創作物を作るために膨大な金と時間をかけた。
物凄く無駄な事をしたと思っている。
そんなことしなければ今頃預金や余剰資金があって投資信託とか純金積立とか呪文みたいな事を唱えて老後も安泰になる魔法が使えたかもしれない。
しかし最近また始まった。
文章とは違う手段だが、誰も見ない創作物を作りたい意欲がまた出てきた。
最近はそのための取材をしている。
「キノの旅」は読み終わってしまったから仕方がないので上遠野浩平の「ブギーポップ・シリーズ」を読みながら。
頭で考えていた創作のアイデア。
それを出力する方法が手元にあるのがいけない。
「創作物はお金にできない」
そういう年齢、その程度の気持ちで出力できているのが逆に良いのかもしれない。
工場勤務のアルバイトの方がまだ安定しているかもしれないから。