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愛歌~アイノウタ~ (文化祭編)  作者: 遊斗
予想外過ぎる文化祭
49/51

どうしようこいつら……

進まない展開。

次こそは……!!

駄目だ、こいつらに頼っちゃ。

せめて琉峡だけでも手土産に持って……!


一番楽に持ち帰れそうな小柄な少年。ターゲットは、投坂琉峡。


ぴくりとも動かない彼ら。

本当に強力な麻酔らしい。



その真ん中あたりにいる琉峡の元へ。持ち前の瞬発力で一気に距離をつめる。そして素早く抱き上げようと手を差し伸べたが――

彼に届く事は無かった。



本当に強力な麻酔をかけられている、そう思っていたのに。



「りぃは、あげないから」



オレをきつく睨みながら彼を抱き上げたのは。

名波 憂麻。

麻酔で寝ていると思っていたのに……。これは完全な誤算だ。



「……りぃをストーカーしてたんでしょ。んで売ろうとかも、考えてた」

「…………」



何故?何故知ってる?



「何故、とお思い?その答えは、わたくしが持っています」



くすりとまるで嘲る様に笑う、一人の少女が隣の部屋のドアに寄りかかっている。長い髪をポニーテールにしている彼女には見覚えがあった。



「鈴払財閥の一人娘……」

「ご名答。答えは持っています。ですがお答えは出来ません」



……苛つく女だ。

その嘲笑い、さっさと引っ込めあがれ。



「それはお前が“鈴払財閥”の一人娘だという事と関係あるんだな」

「さぁ?」

「……ふん。人の神経を逆撫でするのが得意なんだな」

「あらよく分かったわね」



こいつをまともに相手にしちゃ駄目だな。自分がイライラするだけだし。

とにかく。

誰か一人はかっさらう。

かっさって、より高額な値段で売り飛ばす。投坂琉峡が駄目なら他を持って帰るだけだ。



「……おいウィル、話しが違う」



それに、今はこちらが優位。

強力な麻酔をかけられていると思いきや、名波憂麻は意識があった。この分だと他もきちんと麻酔をかけているのか怪しいもんだ。



「麻酔、かけてないだろう?話しが違う。こちとら武器も持たずに来てるんだ。公正な取引だと言えない」



条件を破ったのはあっち。

だから、こちらが優位。

それに首領も気付いたらしく、表情を引き締めて相手を揺らしに入る。



「くっ、貴様」



揺らしに入ったのに。

せっかく優位に立ったのに。



「武器を所持してない?ふざけないで。だったら彼女の脚に挟んであったこれは何?武器じゃないんだ。玩具?」



先程の財閥娘なんて比で無いほどに嘲た表情をする……何だっけ、比等だっけ?

比等の手に握られているのは小型拳銃。いつもミマリアが左足の太股のガーターに挟んでいるものだ。



「嘘はやめてよ?」



にっこり笑う彼はいつの間にか体制逆転をしていて、ミマリアに拳銃を突きつけていた。

油断も隙も無い野郎だ。



「女性のスカートをめくりあげるなんてとんでも無い人ね」

「大丈夫だよ。オレが興味あるのはウィルの体だけ」



拳銃を突きつけながらこそりとミマリアに囁く。何を言ったのか、何故か真っ赤になった。



「何?まだ事は終えていないの?」

「うん、まぁね。この事件が片付き次第、手出そうかと思ってる」

「へぇ。あなた純情そうに見えるけれど……お腹の中、真っ黒でしょ」

「そんな事無いよ?……多分」



さっきから何をこそこそと。

……ミマリアが楽しそうだからあんまり純情じゃ無い内容なんだろうけど。



「はぁ……もう結構です。ルルィはあげます」



緊張状態とはかけ離れた空気だったその時、何故かウィルがそう言う。


どういう事だ、ルルィはあげるって……。



「――ねぇルルィ?お前は誰か好きな人が出来たんだね……彼の事が、好きなんだね?」

「えっ……」



どこか諦めたような、呆れたような表情でオレの事を見る。

この人は何を……。

ルルィはこの事を知られたくなさそうだった。オレの専門人身売買だし、ここは何とか誤魔化して――




「うん、好き」




……っ、


「ルルィ!!」

「ハヤキが好き。大好き。侯爵よりも兄様よりも、誰より一番好き。だから、ルルィを止めないで。止めてもハヤキと一緒に逃げちゃうけど」



いつも通り、淡々と。いつもより、はっきり大きな声で。



「……ルルィ……」

「ふふっ……かつての私なら、絶対に許せませんでしたが。あなたもルルィを大切にしてくれてるんでしょ?ルルィがあなたを大切にしているように」



容姿も声も綺麗過ぎて意識が遠のきそうだが、不覚だからと必死につなぎ止める。



「人を愛する事の素晴らしさに気付いちゃったんです」



甘々過ぎる事を平気で言うこの人の神経が信じられない。


胸元に左手を当てて微笑む。

それを見ていたミマリアがぶはぁっと鼻血を出してせっかくの美人っぷりを台無しにする。

武器を奪ったから安心したのか、比等がミマリアの元を離れウィルの元へ。



「誰を愛しちゃったのかな?」

「……んっ」



ちゅ、と優しく唇に触れて抱きしめる。



「オレじゃなかったら悲しいから」

「……さっき言ったじゃないですか……あなたが好きだって」



駄目だ!!甘すぎて意識飛ぶ。





「ねぇ、あの二人初めて会ったの何時?」

「ちょー最近」

「あらっ、なら一目惚れねぇうふふ」



しかも比成とミマリア仲良くなってるし。

どうしよう。

本来の目的は?

あんたら敵同士じゃ無いのか?



うーん、どうしたら……。


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