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愛歌~アイノウタ~ (文化祭編)  作者: 遊斗
予想外過ぎる文化祭
38/51

あなたの為に☆

今回も先生ズの話。

前回引き続き演料と瑞南。

「はぁ……参ったな」

「……参りましたね」

ウィルの件については理事長の比成に聞いた。

旧友だと言う事、ウィルは殺人などしていない事、釈明に協力を求められた事、例のメンバーも協力する事になった事……。

「あまりにも事が唐突過ぎて……正直、頭が付いていきません」

「心配するな。オレも同じくだから」

「…………ですよね」

にしても。

理事長が生徒を巻き込むなんて……珍しい。

あの人はおっちゃらけてはいるけれど、生徒を危険な目に合わせる様な事をする人では無いはずだ。なのに、何故……。

「理事長は何故生徒を巻き込んだのでしょう」

「そうなんだ。オレも気になって本人に聞いてみた所……犯人達は未成年をよくターゲットにするそうだ。だから綺麗で目立つ未成年達に協力を仰いだ訳だな」

なんだそれは。

「真の変態ですね」

「まぁそうだな。あ、でも変態ならお前の付近にいくらでもいるぞ」

「…………?」

「でも仕方ないと言えば仕方ない」

「!?」

演料は何が言いたいんだろう?

「ほら、お前可愛いから」

艶っぽい声でくすりと笑いながらそう言われるけれど一瞬理解出来ず……そして

「か、かか……ええ演料はまたからかうんですか!!」

「からかってない」

演料……お願いですから……そんな、悲しそうな顔をしないで下さい。

今まで見たことも無い様な切なげな表情に胸が痛む。

「……演料にそういう事を言われるとどうしたら良いか、分からなくなるんです……。だ、から……えっと――」

「もういい」

無理させてごめんな。

苦笑しながら髪をくしゃりとされる。そしてそのままぎゅっと抱きしめられてしまった。


どうしよう……心臓が痛い……。

演料はオレの事なんてどうも思ってない。だけどオレは演料が愛しい。でも、演料には迷惑をかけたくないし、かけるつもりも無い。だから、我慢しないと。


そう思ってるのに。

そう思っても。


やっぱり胸は苦しいままで、どうしても見つめたくなった。

ふと見上げると視線ががっちり合った。その瞳は優しいけれど儚げな、悲しい色をしていて。

「演料……何かあったんですか?」

気づいた時には口が開いていた。聞かずにはいられなくて、悲しい瞳の意味を知りたい気持ちが押さえられなかった。

「……あぁ、今日さ……オレの大好きな人が他の男にスキンシップされてて、思わず妬いちゃったんだよ。心が狭いだろ?」

大好きな人。

演料の大好きな人。

…オレの大好きな人の大好きな人……。


ずきっ。


痛い。あちこち痛い。

我慢しないといけないのに、我慢したくない位痛い。


スキンシップされるだけで妬いちゃう位大好きな人。


「ほんと、馬鹿みたいだ」

「馬鹿じゃありません!!…………オレも大好きな人がいます。その人に、大好きな人がいると、言われました……。つらいです…あちこち痛くて、おかしくなりそ――」






ちゅ。






おかしくなりそうと言いかけて、唇に柔らかい何かが触れた。

「それ以上言うな。言わないでくれ……頼むから」

「え……演料こそ、泣かないで下さい。オレはそんな顔見たくないです。演料は……笑顔が似合います」

頬を伝う涙をポケットから取り出したハンカチで拭く。こんな時なのに、綺麗な涙だな、なんて思ってしまう自分が恨めしい。

悲しいけど、この人の泣き顔は見たくない。

だから、我慢したくなくても我慢しよう。演料の幸せを願おう。

たとえオレが失恋したってかまわない。





全ては、この人の最高な笑顔のために――。

オレは今演料からしてくれた、触れるだけのキスだけで十分だから…………。




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