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愛歌~アイノウタ~ (文化祭編)  作者: 遊斗
予想外過ぎる文化祭
37/51

もう一つの物語☆

当然その後はパニック。

どうしてこの人がいるのか…………



では無く。



「どうしてこんなに綺麗なのよ!!!!」

ではあったが。

パニック状態に陥ったのは事実だ。

確かに綺麗だ。綺麗ではあるけど、オレはりぃ以外に振り向く事は絶対に無い。りぃも……『実はずっと好きだったんだよ。……何処ですれ違っちゃったのかな』なんて可愛い事言ってくれた。至軟は領にめろめろ領もめろめろのバカップルだし、そういう関係という意味では一番の古株の麻矢と類香がお互い以外にときめくはずが無い。

至軟と領辺りなんか

『お前の方がオレは好きだし、お前の方が絶対綺麗だし可愛いから』

『か、可愛いとか言われても嬉しくねーよ』とか良い始めそうだなとか思いながら二人を捜すけれど……

あれ?いない?何処に……あちゃー……。

既に物陰でいちゃこら最中であった。バカップルぷりをいつも以上に惜しみなく発揮しまくる二人はいろいろおっかない事になっているのでこの際無視。

くそー羨ましい。オレだってこんな可愛い格好した琉峡に手を出さないでいるので必死なのに。

近くにいても凄然とした態度を取れる麻矢がオレには分からない…………。

どうしてもガーターベルトの辺りに目線が行ってしまう自分が恨めしい。

出来ればずっとガン見してたいけど、それは流石にな。周りにばれない様にしないといけないし。

「うんうん、パニくるよな、何でだって。でもそれは今はやめてくれないか?ウィルの話しを、お前等にはじっくり聞いてもらいたい」

そして再び真剣な眼差しになる理事長。

ウィルの話しをじっくり聞いてもらいたい。理事長がそう言うからには何かあるのだろう。

静かで、それでいてよく通る声と共に、静まり返る教室。

とたんに真面目さが移る皆の瞳。

「では――――私の話しを、是非とも最後まで飽きずに聞いて頂きたい」

初めてウィルが口を開いたその瞬間――――


鈍い音が、何度も聞こえた。

そして、何故か体が急に重くなる。

あまりにも突然な出来事ですぐには対応出来なかったけれど、重い体をぐっと動かして後ろを振り向くと

「……何でこうなる」

麻矢の冷静な突っ込みが入った。それも無理は無い。

オレとりぃ、至軟と領(この二人はある意味例外)、そして麻矢と類香、姉貴と会長、亜実と甘音、理事長とウィル以外はぶっ倒れていたからだ。

「あぁ…まぁ無理無いわな」

理事長の話しによると、ウィルの声に免疫が無い人は大抵ぶっ倒れるらしい。

稀にぶっ倒れない人がいるけれどそれでも体がだるくなるとか。

「あー、だから急にだるくなったんだな」

肩をまわしながら至軟が領可を姫抱きしながらぼそりと呟いた。

「お前は何をいちゃこらしてんだよ」

「どうだ羨ましいだろ」

「お前は何をするんださっさと下ろせ!!」

「羨ましくない」

「そーかそうか羨ましいか」

「羨ましくねぇ」

「だから早くおろ」

「素直に羨ましいって言えよ」

「言わない。羨ましく無いし」

「何だよ素直じゃ」

「聞けーーーー!!!!下ろせってんだよ」

ったく、いちゃこらいちゃこらしあがって。あぁあぁ羨ましいよ。オレだってりぃをぎゅってしたいよ。

だけどいくら既に感づかれてるからってさ、もうちょい控えようぜ?

「何故なのでしょうね……今まで私の声を聞いて何も症状が出なかったのは比成と侯爵だけでした……。そんなに、不快な気分をさせてしまっているのでしょうか」

いや逆だろう逆。綺麗過ぎてぶっ倒れるんだって。

しかもぶっ倒れる理由は声だけじゃ無くて、その容姿も関係あると思うんだけど。

てゆうか、侯爵?

「ウィル……それは違う。まずウィルの見目で負担がかかって声で追い打ちかけてんだって。なぁ、ゲーセンの時、周りに被害出なかったか?」

「あー……多少は。顔が見えないように深く帽子を被っていたが、ばたばたと。そうか、だからあの時急にだるくなって人がばたばた倒れたんだな」

会長は成る程と何度もうなずく。

「あの、そろそろ話しを戻しても?」

「あら、ごめんなさい。では……是非とも」

彼と全員が向き合い話しを聞く態勢に入る。

そしてウィルの訳ありそうな、何とも言えぬその透明な声が綴っていったもう一つの裏の物語は、予想もしない、夢にすら思わぬ、信じられないものだった。





去年の秋……11月25日……私の妹のルルィ・アシルファは誘拐されました。彼女は、私の唯一血の繋がった家族です。幼少時代、彼女と私はストリートチルドレンとして育ったのですが……とある日私達は拾われました。その拾い主が、イギリス貴族のルイックトン侯爵。侯爵が言うには、私達の髪の色があまりにも綺麗な黒だったから、気になったとの事……それと、侯爵はルルィに一目惚れしてしまった様で。当時15歳だったルルィと17歳だった私は拾われた後、大切に育てられました。そして当然の如くルルィは彼の姫君となりました。そんな幸せな日々を送っていたのですが……悲劇は突然起きました。

ルルィが、さらわれたのです。

私が言うのもなんですが、彼女はとても美しい子……私のような出来損ないの兄を持ってしまって、きっと悲しんでいる事と思います。そう思うと不憫で不憫で……え?私も十分美しいと?ありがとうございます、たとえお世辞でも嬉しいかぎりです!皆さんはそう言ってくださる、けれど私はどうしてもそうは思えないのです。はぁ、どうしたら……

と、あぁすみません、話しを戻しますね。

彼女の美しさに魅了されてしまう人は大勢います。そんな人々に、誘拐されました。

どうやら彼等は彼女を……性欲解消に使おうとしているようです。そうして彼女を一生監禁し、時には金儲けに使い……というのが目的らしいのですが、まだ手出しはされていないようです。

そして彼等は言いました。

ルルィに一生拭えぬ傷を付けたくなければ、兄であるお前が彼女の身代わりになれ、と。

そうして……私は殺人鬼となりました。そうなるよう、指示されたのです。

ですが本当に殺しをやっては、彼女が無事に復帰しても世間の目は冷たいまま。

だから、私は“殺したフリ”をする事にしたのです。

「え、ちょっと待ってくれ。フリって……それはどういう事だ?」

「えっと、あなたは……」

「花凛です」

「花凛さん……そして皆さんも疑問を抱いた事でしょう。殺人鬼が殺しをしていないなどと言い始めては混乱するしかありませんものね」

実はイギリス警察に頼んで、被害者を保護してもらっているんです。殺したフリをして、保護をしてもらう。そして、ターゲットは残酷な殺しを行った者に絞りました。

もちろん、ターゲットを絞った所で世間の目は冷たいままですし……彼等を捕まえる事が出来たらニュースで“殺したフリ”であったと大々的に取り上げてもらえる事になったので、意味は無いのですが……これは、いわば私のプライドです。

え?どうしてイギリスで無く日本でこんな事をするかって?

あぁ、それは……どうやら日本の警察は優秀だから、お前の変装技術がいくら優れていようがきっとすぐ捕まるだろうという、くだらない理由のもとだそうです。ちょっと反応に困る返答ですよね。

彼等は本当に上手なかくれんぼをしています。まるで彼女以外誰もいないかのように……。

「これが全貌です。……あぁ、やはりびっくりしてしまいますよね……。そこで、旧友である比成に応援を頼もうと、この学園に仕掛けたフリをしたのです。驚かせてしまってすみませんでした。皆さんの大事な文化祭を壊すつもりはありませんので、ご安心を」

この不運過ぎる話しの後、あぁそうですか仕方が無いですね以外に何と言えよう。

「まぁそういう訳だから、お前等協力してくれ。皆きっれーだから役に立ってくれるだろう」

にやりと笑う理事長は間違いなく旧友の為では無く自分の娯楽の為にそう言っている。

それはよく分かるのだが……。

「分かりました」

ここにいる誰もが、同じ答えを即答していた。

「うふふ、血肉踊るお祭りの予感がするわぁ」

娯楽の為に動くつもりでいるのが他にも役1名。こんな状況でよくそういう事言えるもんだと麗奈の方を向いてため息をついた。



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