番外編 類香×麻矢 ポッキーゲーム☆
今回は番外編です。
攻め受け逆転劇!!
ある日の昼下がり。
冬なんだか春なんだかよく分からない今日この頃。
春なのにさみぃよ、と内心突っ込み入れまくりの毎日。当然のごとく桜は咲かず、目もさみぃよと訴えているようだ。
そんな中、ばっちり春が来ている場所があった。
類香の脳内である。
桜の花びらがひらひらと舞い、普段緩すぎると言われる表情はというと、ゆるゆるのとろとろ。だが彼の表情が、ゆるゆるのとろとろになってしまうのも仕方無いと言える理由があるのだ。
麻矢のお見合い話が無くなった。
本人は最初から否定していたが、両親が会ってみなさいと珍しく利かず、激しく困っていたのだが。しかも相手の令嬢が麻矢に気があるというのだから、タチが悪い事この上無い。
権力も地位もあり、見目も恵まれている美優 真樹という令嬢。名波財閥は政略結婚しなければいけない程落ちぶれていない。
だから何故今更のようにお見合いなど持ちかけてきたのか、不思議でならない訳だが。
どうしよう嫌だ嫌だと混乱しているうちに、知らぬ間に、事は解決していた。
いつの間にとか、真樹令嬢は大丈夫なのかとか、聞きたい事は山ほどあるのだが、それは麻矢にとっては不快な疑問なのだろうと判断して、一段落して良かったねとしか言っていない。
何はともあれ解決したものは解決したのだ。
大好きな恋人のお見合い話が無くなった。表情がゆるゆるのとろとろになってしまった理由がこれである。
くるくる回る椅子でくるくる回りながら麻矢の帰宅をひたすら待つ。
うん、これもなかなかに良いかなぁ。
思わずくすりつ笑みをこぼし、机に突っ伏す。
麻矢はさっき、何故か急にお菓子が食べたくなったと言って、何故か至軟と憂麻と共にコンビニへ何故かとろけそうな笑顔で向かった。
疑問は多くあれどまぁそれはそれ。
そしてうとうと眠くなっていたその時……。
「ただいま」
コンビニの袋を腕に下げてめったに笑わない麻矢がそれはそれは楽しそうに笑い、というかにやけながた帰ってきた。
「お帰りなさい。ね……何か楽しい事あったの?」
「……いや、これからある」
これから?
でも麻矢がこんな楽しそうだし、きっと凄く楽しい事なんだろうなぁ。
……何か無性に気になってきた。
「これから?何があるの?」
興味津々で身を乗り出す類香の朱色の頬に掌をあてやる。
「知りたい?」
「知りたい!」
当たり前だよ。すっごい気になる。
きらんきらんと瞳を輝かせながら麻矢を直視していると、仕方無い……と少し嬉しそうに呟く。
「……はいよ」
「へ?」
赤くなりながら手渡してくれたのは。
「チョコ」
「ちょこれぇと?」
「……ん、バレンタインのお礼してなかっただろ」
いや、確かにそうなんだけど。
かさかさと音を立てて包みを開くと……、何故ポッキー?
「いや……さ。本当は至軟に世話になろうと思ったんだけど。毎年そうだけど……。まぁ形式をたまには変えようかと」
今日、一応記念日だし。
……二回目の。
頬を火照らせながらそっぽを向く麻矢。
「記念日……覚えててくれたんだ」
「当たり前だろ。誰が忘れるか、こんな大切な日」
麻矢が頬を赤らめながら微笑む事は本当に稀。
レアな表情見ちゃった。
記念日とバレンタインのお礼がコラボするとこんなイベント起きるんだ。
うん、覚えとこ。
ちょっと嬉しくなる類香である。
「それで……形式変えるって?」
「ポッキーゲーム」
「……あい?」
「あいつらと話してたらいつの間にかそういう事になってた」
あいつらとは至軟と憂麻の事。
成る程確かにあの二人といると予測不可能な事態に陥る……いつもの事だ。
「ただ……今回はオレも結構ノリ気だったりする……」
「ま、麻矢が?」
これは珍しい。こういう事にとんと無頓着というか、あの二人をあまり相手にしようとしない麻矢が関心を示した。
いつもいつも何故かトラブルを持ち込む彼等の話をまともに聞くとは……。
そして当の本人はというとそわそわとしている。
何だか、らしくない。
そわそわしながら頬を火照らせながらもじもじしながらちらちらこちらを見ながら瞳をうるうるさせている麻矢なんて見たことが無い。
早い話、
今の麻矢はとてつもなく
可愛かった。
「……ん。何かどっかのアイドルグループのサイトにポッキーを折らずに食べきれば、二人は幸せになれるとか……運命の人……、とかいろいろ書いてあったらしくてな。今大流行中らしい」
名波財閥ではポッキーゲーム用の商品開発まで始まって……有名人の影響力って凄いもんだな。
ぽそっとそう呟くけれど、麻矢の影響力だってかなりとんでもない。
バイトがてら、とモデルの仕事を何度か引き受けた事があるのだが、麻矢の着た衣服から小物まで、雑誌の出た一日後には全て完売するというトンデモな現象が毎回毎回起きる。
おかげで本人の知らない間にファンサイトまで出来てときにはパパラッチにまで追われる始末。
ね、かなりとんでもないでしょ?
それにしても。
恥ずかしくなると髪をかきあげる癖、変わってないなぁ。
「いーよ、オレも知りたい。……本当に、オレなんかで良いのか……」
もしも途中で折れてしまったら。
もしも……そうなってしまったら。
凄く嫌だ。嫌だけど、確かめずにはいられない。受け取ったポッキーを口に銜えてスタンバイ。
運命の瞬間に、いざ出陣。
ポッキーを口に銜えた類香の上目遣いは、もの凄い破壊力だった。
恥ずかしそうに眉をきゅっとひそめて、首をかしげる。いーよ、という合図らしい。
端を口に銜えて、麻矢も絨毯に座り込む。
こういう時はお互い目をつぶるものなのかもしれない。
けれどつぶろうとは思えなかった。類香もそうらしい。
折れませんように、折れませんように。
切実にそう願っているのは自分だけでないと思うと少し安心した。
ぽきっ、とどちらからとも音がする。
一口、二口、三口、そして、四口目。辿り着いたのは……
類香の唇だった。
とたんに頬が熱くなる。恥ずかしくて、もどかしくて、そして嬉しい。
口の中のお菓子を食べ終わると、思わずはにかんでしまった。
――柄にも無く……今日のオレは明らかにおかしいな。
おかしいけれど、まぁいっかと思ってしまう。
類香を見てると、不思議な事にどうでも良くなってきてしまうのだ。
「良かったぁ……。何かオレ、変。こういうの、そこまで信じるタイプじゃないんだけど……やっぱり、麻矢だからなのかも」
「そんな……事、言うな」
「……?」
「だって、さ……嬉しい、だろ」
………………?!
麻矢が素直になった!!!!
どうしよう、可愛い……。
どうしよう、欲情しちゃう。
抑えなきゃ、自重しないと、そう思っても。
不可能だった。今のオレにはそんな事出来ない。
「っつ?!」
あからさまに驚いているのが分かる。分かるけれど、やめるつもりは無かった。
麻矢を押し倒して、唇を重ねる。
それだけでは飽き足らず、わずかに開いた間へと舌を無理矢理突っ込んだ。
ただ、ぐちゃぐちゃにしたかった。
愛しくて仕方無い恋人を。
やられるがままの麻矢なんて、珍しい。
今日の麻矢は、いつもと違う。何もかもが違うけれど、それでも類香の大好きな麻矢だった。
口腔を舌でまさぐる。唾液が絡み合って、口の端からこぼれても、そんな事は気にしていられない。
それ所か余計欲情してしまって。結局事態は収拾がつかなくなり。
「ぁ、っん……」
喘ぎ声にさらに興奮して。
もっともっと、いじめてあげたい。
もっともっと、恥ずかしくしてあげたい。
自制心なんて、とっくにどっか行った。いつもの自分も旅に出て行方不明。
なら、もう少し、こうしてても良いよね?
これ以上行くととんでも無い事になりそうなので、
ここらで…