さあいぢめよう☆
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関連作品です^^
良かったらどーぞ
そんな中、至軟が唯一嬉しかった事は、領可の顔が真っ赤になっていた事。
「いるよ。恋人なら」
あまりにも可愛いからこのノリでいぢめちゃおうと決断した。
おいいいやめろおおおおおっ!!!!
無敵の親達の後ろで避難している領可は、必死な思いで(口パクで)そう伝えるけれどスイッチの入った至軟が簡単にやめる筈も無く。
「ほぉ。どんな子だ?」
にやにや笑いながら好奇心丸出しにしている月妃に、にやにやしながら遠まわしに領可をいじめる至軟。
その瞬間避難している誰もが『嗚呼やっぱ親子だ』と感じていた事は余談だ。
「んー、どんなかって言えば、見た目はすっごい綺麗で。……でも、中身は」
「中身は?」
「めちゃくちゃ可愛い。本人にはこんな事言えないけどな」
そんな事を少しはにかみながら言うもんだから領可はたまったもんじゃ無い。
オーバーヒートしてぶっ倒れた事は、言わずとも分かるだろう。
next……
「しなんのばかやろー……」
未だに火照りっぱなしの身体を何とか冷やそうと、身に纏っている洋服を下着以外全て脱ぎ捨てる。
別に領可は可愛い、と言われただけでオーバーヒートした訳では無い。
そう言った後の表情がいけなかった。
誰にも言っていないが、実は昔から至軟のはにかみにはとんと弱いのだ。普段余裕こいているようなタイプだから余計そうなのかもしれない。
それが自分に向けられたのは、何年ぶりだろうか。
いつからか、その表情を見なくなって少し悲しかった。
思ってみれば、至軟の事を友達として見れなくなっていたのはそんなに最近では無いのかもしれない。
ベットに横たわって、ふぅ、と息をつく。
シーツに顔を埋めると、至軟の香りがした。
(残り香……だよな)
ブルガリのオパフメエクストリームという香水らしい。五月の誕生日に麗奈から貰ったものだと言っていた。気になって麗奈に聞いてみると、
『あれね。確か九千円だったはずよ』
らしい。流石としか言いようの無い値段。
領可には到底届くはずも無い。
「はぁ……」
何故か、情けなくなってきた。自分は、至軟に対して何が出来るのか、と。
「領」
「わっ?!……至軟」
「何だよ、そんな顔して、ん?」
寝転がっている領可に覆いかぶさってくる至軟。グリーンティの爽やかな香りがふわりと鼻先をくすぐった。
「至軟の事……考えてた」
香りに気をとられて思わず素直に答えてしまう。はっと気付いた時にはもう遅く。
「何?誘ってる?」
「っ、違うって」
「本当?」
せっかく火照りから解放されかけていたのに、再び身体が熱を帯び始める。
「ほんと…だって、ば……」
困り果ててふいっと視線をそらす。
(やばい……心臓がっ)
明らかに心拍数が上昇しているのは至軟もよく分かっているはずだ。それなのに。
「ならさ。何で服着てないの?」
「あ、いや、それはいろいろあって」
「いろいろ?どんな事?」
さらに顔を近づけられて、長い指であごを固定される。
視線が、それないように。
「どんなって……」
お前のせいだっつーの、とかはもちろん言えない。どうしてオレのせいなんだ?いや、それは。そうか、吐かせる楽しみができたなとかなるだけだ、絶対。
「大丈夫だぞ。感じちゃったとかそんなんでも、オレは別に気にしない」
「ぶっっ!!!!」
この変態め。せっそうなしめ。
「もしそうなら手伝うし」
「…………何を?」
「気持ちくなるのを」
……聞かなきゃよかった。
もう恥ずかしくて、仕方が無い。
少し前にさらに恥ずかしい思いはしているのだが、あの時は電気を消してくれた。でも今は違う。
視線もそらせない。じっと、見られたまま。
「っ、領?」
何故か至軟が困ったような顔をする。何故だ、と思ったけれどその謎は直ぐに解けた。
瞳に涙が、あふれていたのだ。
「ぁ、ごめん。……だって、あんま見られたら、恥ずかしいだろっ……」
とりあえず、開き直る事にしたのだが。
人には視線をそらせないようにしたくせに、先にそらしたのは至軟だった。
ちょっとむっとして覗き込むと、こちらも困った顔をしていて。
「これだから……可愛いんだ」
至軟の小さな呟きを領可が知る事は無かった。