#38 そんな、バカな...
~ルルン~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#38 そんな、バカな...
魔王との対決に勝利し、世界を絶望エネルギーから救ったディエルたち。
その後、知恵の実の効果が切れ元に戻ったディエルは国王に褒美をねだる。
そんな彼に褒美などやらん、という最終的な結果に不満を持ったディエルは
ひとりで飛び出してしまう。
一方、フィアラたちはライトニーの告別式を終え、
夜のフィレマミア王都に戻ると、港でうろうろするディエルを発見する。
港には、東大陸行の船がたくさん並んでいた...。
「こんな夜中に勇者さまご一行が...?一体何のご用でしょうか?」
不思議そうにする船乗りのおじさん。すると、
「そうか。明日から出港だな。」
フィレッチェが並んだ船を見て呟く。
「こ、これはこれはフィレッチェ様!!いかがなされましたか?!」
「そんなに謙遜せずともよい。ところで君は...」
「は、はい、この船の船長です...」
フィレッチェの言葉におどおどしながらも返事をする船長。
それを見たロンドが呟く。
「東大陸か...魔物の影響でしばらく船も止まってたんだろ?」
「はい、そうなんです...
しかしこの数日で魔物の危険性が極めて低くなったことから、
明日は数か月振りの出港です...!」
ロンドの呟きにもしっかり答える船長。
すると母エルフがみんなに言う。
「ああ、邪魔してごめんなさい。
私、家に息子を置いてきたままだからそろそろ帰らないと...」
そういえばこの辺りはもう真っ暗。
微かな街灯と星々だけが町を照らしている。
「...そうだな。私も城に戻ることにしよう。
フィアラとバーランドとリアンはどうするつもりだ?」
フィレッチェが3人のほうを見て言う。
「私は今日兄さんのところに戻る。
だけどその前にもう少しだけここに残らせて。」
「じゃ、じゃあ私もそう、します...」
「えーっ、2人が残るなら私も!!」
「はいはい。それじゃあ僕たちは先に帰って君たちの部屋を整理しておくよ。」
「ありがとう!」「ありがとうございます...!」「ありがと...」
こうしてフィアラ、バーランド、リアン以外のメンバーは
それぞれ解散することになった。
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「え、えーっと...それであなたたちはどうしてここに...?」
不思議そうに3人を眺めるる船長。
「フィアラが残るって言ったから!!」
なんだ、ただの寂しがり屋かよ...
「何言ってるの。ディエルを探すためよ。」
フィアラが冷静になってバーランドに言う。
「そういえば確かに見失ってしまいましたね...」
最初に船長と話したときにはいたはずのディエル。
しかし今はどこにも見当たらないのであった。
「ディエルって...勇者さまのことですな?どこに行ったのやら...」
すると船長が所有する船の中からガサゴソと物音が聞こえた。
「なにっ?!泥棒!?」
船長が急いで船に乗り込むと、せっかく明日に備えて準備してあった荷物が
荒らされ、中の食料などが食べられていた...
「ぷはーっ、美味かったぜ...やっぱ嫌なことは食べて忘れるに限るな!」
ピカッ!
「?!」
船長がライトを照らすと、
現れたのは荒らしの犯人ディエルだった。
「....ゆ....勇者.....さ....ま....?」
「あちゃー...こいつ、もはや牢獄行だわ...」
一緒に駆けつけたバーランドが言う。
「そ...そう、です、か....あはは...
せ、世界を救った勇者さま...なんだから....そんな....牢獄....なんて.....」
足元から崩れ落ちる船長。
勇者さまの実態を目の当たりにしてしまったことと、
準備したものが荒らされたことによって大きくショックを受けてしまう。
「だ、大丈夫です...リウィンド....」
フィアラが魔法を唱えると、ぐちゃぐちゃにされた荷物たちが
次から次へと綺麗に整理されていった。
「す、すごい...」
「ごめんなさい、さすがに食べた中身は元に戻せない。
あと、かなりの高魔法だから今日のところはこれ以上使えないわ。」
それでも十分だ、と泣いて喜んでいる船長。
一方、バーランドとリアンは
なんの悪気もなさそうにお菓子を頬張るディエルを追い詰めた。
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「...ん?みんなどうしたんだ?」
勝手に王宮を逃げ出し、船に準備してあった食料やお菓子を
食べていたディエル。
しかしそれを反省するどころかまったく気にもとめていなかった。
「ちょっと皆さんどいてくれません?」
フィアラが上級魔法を唱えようとする。
「わわわわわ!やめてください、魔法使い様!!」
船長とリアンが慌てて阻止する。
「そ、そうだ皆さま。明日、わたくしと一緒に東大陸に参りましょうぞ。」
「え...?」「なぜ急に...」
藪から棒に、東大陸へ行くことを提案する船長。
みんなが戸惑うのも当然だ。
---東大陸には、ここ西大陸と呼ばれるホープヒルズ王国や
フィレマミア王国の魔法文明とは違い、鉄道や自動車などの交通網、
高いビルや大きなマーケットなど、科学文明が発達した東帝国の国々がある。
西大陸と東大陸の船ですら造りも強度も全く違う。
まるで世界が違うかのようだ。
「...あ、ああ、実はあなた方にお願いがあるんだ...」
「お願い...」
急なお願いに話が見えてこない。
「東大陸には今、謎のゲートが出現しているらしい。
そのゲートは科学技術でも解析できず、困惑しているようなんだ...」
船長がもじもじしながら言う。
「...つまり、そのゲートの調査隊として私たちを連れて行きたいわけ?」
「そ、そういうことですな...!これだけすごい魔法使いのあなたがいれば
調査もスムーズに進むことでしょう...!」
「それなら私たち必要なくない?!」
バーランドが流れるようにツッコむ。
「いえいえいえ...皆さんで行くことで、報酬が...いえ、調査が
よりスムーズに進むことでしょう...!」
「今報酬って言った?」「報酬?!」
バーランドとディエルは聞き逃さなかった。
船長はそれを濁すように続ける。
「そ、それに中の食料を食べてしまったのだろう?
だったらその代償に、お願いを聞いてくれるということで...。」
「はあ...なんにせよ、そういうことなら行ってあげてもいいわ。
久しぶりにタダで東大陸に行けるんだし...」
フィアラは恥ずかしそうに答える。
[...やった!これで調査に協力してもらえれば、
人数分の報酬がもらえるぞ...!ウヒウヒウヒ...]
後ろを向き小声で喜ぶ船長。結局カネかい。
「報酬がなんだって?」
「ぎやいっ?!」
報酬という言葉にだけは敏感なディエル。
そして、
「報酬がもらえるなら俺も行くぜ!!」
堂々とした態度で答える。
「いや、あんたは強制なんだからね...?!」
秒でフィアラにツッコまれた。
その後、リアンの方を見て言う。
「リアンはどうする?」
「わ、私は...」
リアンが戸惑っていると、
「明日の朝、出港するから準備よろしく!!」
それを遮り船長は船を去って行った。
こうして東大陸に向かうことになったディエルたち。
彼らの冒険はまだまだ続く...
はじめまして、ルルンです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
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