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#30 知恵の実の効果

#30 知恵の実の効果


フィレマミア王国の王都でダークネスウィング率いる群れを討伐し、

吸収されていたフィレッチェを解放することに成功したフィアラたち。

その翌日、ドラゴンの姿になったディエルに知恵の実の粉を投げ、

ようやく勇者らしくなったディエルと冒険に出るみんな。


ところが、動き出す魔王城に向かう途中、ダークネス化した

ホープヒルズ国王に足止めされる。

しかし妖精たちの助けもあって無事に戻った国王陛下。

そんな国王を置いていくわけにもいかず、一旦引き返すことになっていたが

そこはもう夜の世界なのであった...


「...参ったわね、どっちにしろここで泊まるしかなさそうだわ。」


帰ろうとするバーランドを冷静になって止めるフィアラ。


「...あ、そっか、夜だ。」


「何も考えてなかったの?!」


それもそのはず、ダークネス陛下(仮名)と戦う前は

かろうじて日が暮れていなかったのである。


「分かったわ、じゃあ今日は私たちが見回りやってあげる。」


笛で呼び出されたシャイニープリンセスがみんなのためにそう言ってくれる。


「ありがとうございます、シャイニープリンセスさん。」


するとシャイニーはこのディエルに向かって言う。


「...あれっ?アンタ...まさかあのときの金の亡者...」


「驚かせてすみません。それは昔の私でして...」


「いろいろあったりして、今はまともな勇者さまなんだよ!!」


バーランドとディエルに説明され、ただただ困惑するシャイニー。

他の妖精も一緒に困惑していた。


「お、おお...ということは無事、

知恵の実を与えることに成功したんじゃな...!」


話を聞いていた国王がそう言うと、続けてフィアラが問う。


「...陛下?知恵の実のことをご存知で...」


「なあに。フィレッチェに知恵の実を取りに行かせ、

勇者さまに与えるよう指示したのはこのわしじゃからのう。」


はい、と紳士的に頷くフィレッチェ。

フィレッチェが続く。


「私もダークネス化され、一時はどうなるかと思いましたが...

無事、知恵の実を与えることができました。」


フィレッチェの報告に、一安心する国王。

そしてさっきまでのダークネス化で体力を奪われたのか、倒れるように

眠ってしまった。


「ああ...それじゃあ妖精さんたち、よろしくね...」


-------------------------------------------------------------------------


翌朝。


「んんっ...」


フィアラが目を覚ますと、そこには魔王城の姿はなかった。


「やっぱり...移動している...!」


するとその近くの草原でディエルが朝ごはんを作っているのが見えた。


「あ、おはようございます。フィアラさん。これが出来上がったら

みんな起こしますね。」


まるでまだ夢の中にいるみたい。

まさかあのディエルがこんなにも紳士的で、こんなにも頼もしいだなんて...!


「...?」


不思議そうにするディエルだけは、今も昔と変わらなかった...。


---


「ふぁぁ...いただきまーす...」


寝起きのバーランドと寝起きで作ったとは思えないほど豪華な朝ごはん。

もちろん国王陛下と妖精たちの分も作っていた。


「ふむふむ...なかなかやりおるのう...」


「限られた材料でここまで調理できるとは...!」


それはフィレッチェや国王もうならすほどの出来だった。


「すごい変わり様ね、あの頃の勇者さまが嘘みたい...」


シャイニーもただただ驚く。


「気に入って頂けてよかったです。

このお肉は明け方にかけてそこの森で獲ったもので、

こっちのハーブもその森で採って...」


「本当すごいわね、アンタ...ちゃんと寝た?!」


シャイニーですら交代で見回りをしたというのに。


「心配しなくて大丈夫ですよ。

知恵の実の効果はまだあと数日ほどありますから。」


「えっ....」


「ええっ?!」


「なぬーーっ!!」


知恵の実の効果って永遠じゃなかったのか...!

ここに来て余計な焦りを感じてしまうみんな。


「そうか...もしかしたら小人族とは持続時間が違うのかもしれませんな...」


ただひとり、フィレッチェだけが冷静だった。


「す、すみません...この効果があるうちはどんなに働いても

2、3時間の睡眠があれば大丈夫ですよ、とお伝えすることを忘れていました...」


しれッとすごいことを言い出すディエル。っていうかそこではない。

みんな知恵の実の残り(効果)時間のほうが気になっていた。


「あ、あと数日って具体的に何日くらいなのか分からないの...?」


「効果が切れたらいつものディエルに戻っちゃうわけ?!」


「そんなことでは世界が救えなくなってしまうではないか...!!」


みんなから責め立てられ戸惑ってしまうディエル。

国王とシャイニーも心配そうに見つめていた。


「だ、大丈夫ですよ皆さん...それまでに魔王城を攻略し

倒せばいいだけの話です...!」


「いや、もう一度知恵の実を与えてもらうという発想はないのかね...!」


国王にそう言われるが、ディエルは首を横に振る。


「陛下、お言葉ですがそれはできません...」


なぬっ、と驚くみんな。


「知恵の実とは聖なる神の実。

それをいくつも連続で与えることは神の意志に反する...」


「...つまり摂取しすぎると、神からの罰を受けるということだな...?」


フィレッチェの言葉にうんと頷く。


「...なら、こんなところでのんびりしていないで急いで魔王城に

向かいましょう...」


立ち上がるフィアラとそんなフィアラの前まで動き出すシャイニー。


「ちょっ、国王陛下は?一緒に連れていくわけにはいかないよね...?!」


「そうでしたね...では、あなた方で送り届けてください...」


他族(ひと)任せっ!?」


2人のやり取りに思わず笑ってしまうバーランド。

しかし笑っている場合ではないのであった...


---


「本当に大丈夫なのね?!」


フィアラとシャイニーとのやり取りで本当に国王を送ることになっていた。


「バーランド、心配しすぎ。

知ってるでしょ?妖精(この子)たちの加護がどんなに優れているか...」


「そりゃあそうだけど...!」


ディエルやフィレッチェもフィアラの意見に賛成だった。


「バーランドさん。我々には時間がないんです。魔王城に向かう時間と、

私の知恵の実の効果が切れてしまうという時間...」


「まったくだ。それに、一晩進めばフィレマミアの王都が見えてくるだろう。

そこからは妖精たちが事情を説明してくれる。」


「そうかもしれないけどっ...!」


ひとりだけフィアラの意見に賛同できないバーランドに、国王が話しかける。


「バーランドよ、わしと妖精たちを信じるのじゃ。

わしも、お主たちが世界を救ってくれることを信じている...!」


そう言われ、バーランドも送り出すことを決意する。


「わかりました...では、必ずお互い無事でお会いしましょう...!」


---こうして国王と妖精、シャイニーたちはフィレマミアの王都を目指し、

ディエルたちはこのまま魔王城を目指すことになった。


果たして、知恵の実の効果が切れる前に

世界を救うことができるのであろうか...


続く...


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