#9 旅のはじまり
~ルルン~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#9 旅のはじまり
ベルデの村で起きた事件が解決して数日。
ディエルたちは魔王討伐のため、次の村へと向かうことになった。
王都とは反対側にある村の入り口。
村を2度も救った我々には、荷物を運ぶための馬を連れてきてくれた。
村のみんなや領主様がお見送りしてくれている。
「次の村まではここから3日はかかる。
くれぐれも気を付けるんだぞ。」
はい、と軽く頭を下げるフィアラ。
「お父様、やっぱり私...」
リアンが突然、寂しそうに言う。
すると父である領主様はすぐに娘の思いに気がつく。
「...なるほど。フィアラたちと冒険に行きたいのかね、リアン?」
えっ...、とリアンは嬉しそうに、そして驚いたようにお父様のほうを見る。
「ハハハ、やはりそうだろうと思ったよ。
フィアラよ、もし差し支えなければ娘を...リアンを一緒に連れて行っては
くれないか?」
なんで勇者の俺ではなくフィアラに聞くんだ。
「...そう、ですね...しかし...」
これから向かうのはただの遠征ではない。
魔王討伐という危険な危険な「仕事」なのだ。
「わかってる、フィアラ。私だって武闘家なの...!
戦うことの危険性くらいわかってる、だから...!」
「だからこそ連れて行けないわ...」
リアンの話を遮り、フィアラは答える。
「あなたは私にとって大切な人。
いくらあなたが戦えるとはいえ、
大切な人を争いに巻き込むことなんてできないわ。」
そう言ってリアンを抱きしめる。
「フィアラ...」
涙ぐむリアンともらい泣きする村のみんな。
「...そろそろ行くわ。ディエル、バーランド。出発の準備はいい?」
そしてパーティーの中で誰よりも、勇者らしくて心強いフィアラなのであった。
...と、出発する直前、
「リアンだっけ?お前も一緒に行こうぜ!」
ディエルが水を差す。
「はあ?話聞いてた?!」
バーランドが驚く。
「いやだって、大切な人と共に戦うのもまた、幸せなんじゃないのか?」
ディエルが言うとは思えない一言。
それに対してフィアラは、
「...まったく。アンタも珍しく良いこと言うじゃない。」
照れている顔を隠してそっぽを向く。
「気が変わったわ。やっぱりリアンも連れていく!」
そうしてリアンの手を引くフィアラ。
おおお、と喜んでくれる村のみんな。
「よかった。ありがとう、フィアラ...」
娘が旅立つというのに喜ぶ領主様。
「これまでリアンと共に我が領地を尋ね回ってきたのだが、
フィアラと共に戦っているときが今まででいちばん輝いて見えた...」
やはり武闘家は戦いあってこその能力だからだろうか。
「必ずまた戻ってくるのだぞ、いいな?」
「はい、お父様!」
今度こそ村を出発し、村のみんなに手を振る4人。
といっても俺は、特に何も考えず手を振っていただけなのだがな。。。
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1日目、昼。
「えー、地図いよると、この道を道なりに進んで行けば、
次の村までたどり着くわね。」
地図を見ながら歩くフィアラ。
広大なホープヒルズ王国は、次の村までが遠い。
「ゴクゴク...ぷはー、うめー!」
持って来た大きめの水筒と付属するコップで水を飲んでいる俺。
「ちょっと?!それは全員分の水が入っているんだからね!!」
バーランドに怒られる。
「リアンも何か言ってよー、このままじゃ水を全部飲み干されちゃうよ!」
しかしリアンは、
「花が綺麗...!」
まったく別のところで花を眺めていた。
「ちょっとちょっと!何のんきに花なんか眺めてるのよ、
これから私たちは魔王討伐に...」
「リアン、この花はなんて言う花か知ってる?」
フィアラまで花に夢中になっていた。
そのまま続ける。
「ビオラの花よ。花言葉は「信頼」...」
へー、とすっかり取り込まれてしまったバーランド。
「あ、こっちはヒヤシンスの花よ!」
リアンも負けじと答える。
「それでね、花言葉は...!」
楽しそうにフィアラとバーランドに伝える。
そんなリアンはなんだかとても輝いて見えた。
---草原から進まぬまま、夕方...
「...って!しまった!私たちは何のんきなことをしていたのよっ!!」
夕陽を見てバーランドが焦る。
「私としたことが...久しぶりにこうやってリアンと語りあえたのが
楽しくて...」
「ご、ごめん、なさい!私が花なんて見ていたばっかりに...」
フィアラとリアンも反省する。
「...あれっ、ディエルは?!」
まだ旅は始まったばかりだというのに、
誰もディエルのことを監視していなかった。
近くにはベルデの村から連れてきた馬だけが残されている。
「お、やっと先へ進めるなー!」
ザラザラと、突然音がしたかと思うと、近くの砂場の中からディエルが
現れた。
「な、なにしてんのー?!」
驚くバーランドだったが、内心ほっとしている。
「何って...暇だったから砂魔法の練習でもしてた。
どうだ、分からなかっただろ?!」
砂魔法は初級魔法が扱える者なら大抵扱える、低レベルの魔法だ。
ちなみに前回戦ったヘドロクイーンが使用した泥魔法は、
この砂魔法の上級版である。
「もうすぐ日が暮れるわよ。今日はここで休むことにしましょう...」
村からまだそこまで離れてはいないが、夜出歩くのは逆に危険だと判断した。
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2日目、朝。
「ゴクゴク...ぷはー、うめー!」
持って来た大きめの水筒と付属するコップで水を飲んでいる俺。
「だから!それは全員分の水が入っているんだってば!!」
またバーランドに怒られる。
「昨日はあまり進めなかったからね。今日は少し急ぎ気味で行きましょう。」
フィアラの指示で先に進む。
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2日目、昼。
「ここからは魔物が現れるわよ。みんな、気をつけて...!」
道の途中にある薄暗い森。
迷子の森とは違って、そこまで大きな森ではない。
「いい?絶対離れちゃダメよ?」
フィアラが念を押す。
「わかった。私がディエルを監視するね!」
そう言ってディエルの後ろにつくバーランド。
「じゃ、じゃあ私は...」
フィアラの隣で歩くリアン。
しばらく歩くとさっそく魔物が襲い掛かってきた。
「シルバーウルフ!そこまで強くはないけど油断はしないで!」
てやぁ!とシルバーウルフを蹴り飛ばしていくリアン。
「ナイスよ、リアン!
ディエルとバーランドは先に森を抜けて!」
「う、うう!」
なぜか泣きそうになりながらディエルと森を駆け抜けるバーランド。
「もしかしてウルフが怖いのか?」
走りながらディエルがバーランドに問う。
「違うっつーの!私の出番が奪われて悔しいの!!」
そして森を抜けるディエルとバーランド。
ところが...
ドスン!ドスン!ドスン!
まだ森でシルバーウルフと戦うフィアラとリアンのほうから、
大きな足音が聞こえてきた...
続く...
はじめまして、ルルンです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
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