表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

15.デレル先生

15.デレル先生


「ザカリー!!!!!!」


 飛び込んできたのはデニスだった。彼はネリーと僕が一緒にいるのを見るや否や、すぐに突進して拳を振り上げたが、それをオフィーリアが阻止した。オフィーリアだと気づいたデニスは一瞬驚いた様子を見せたが、次には恋するような表情に変わった。


「俺が君を助け出してみせる!」


 オフィーリアが反論しようとしたが、デニスの視線は再び僕とネリーへと向かった。


「ネリーを放せ! オフィーリアだけじゃない、俺の妹にまで手を出すつもりか!」


 そして今度はネリーに向かって怒鳴った。


「だからあのビリ君には気をつけろって言ったのに! なんで言うことを聞かないんだ!」


 ネリーは口を開きかけたが、何も言わずにまた口を閉じた。


「さあ! 俺と来い! 先生に頼んでAクラスに移してもらうから!」


 デニスはネリーの腕をつかもうとしたが、再びオフィーリアがそれを阻止した。今度はレベッカまで立ち上がった。


 その行動がどうやらデニスの怒りに火をつけたらしい。


「ザカリー! お前を殺してやる!」


 彼は再び僕に向かって突進してきたが、響いたのは「ガン!」という甲高い音だった。ネリーが持っていた木杖で、デニスの後頭部を思い切り殴った音だった。


 しかし、デニスは武僧であり、後頭部に少しのダメージも負っていなかった。


「このビリ君のために、ネリーが俺を殴ったのか!」


 「ガン!」


「手を出すな……」


 僕は半身盾を構え、ネリーの前に立ちはだかった。デニスは右手を押さえ、苦痛の表情を浮かべていた。勢い任せに突っ込んできた彼に対し、僕はネリーへ向かってきたその腕に的確に盾をぶつけ、彼の攻撃をそらしたのだった。


 デニスは立ち上がり、まだ何か言おうとしたが、ちょうどその時、始業の鐘が鳴り響いた。彼は「覚えてろよ!」と悪役のような捨て台詞を残し、教室を後にした。


 ヴェローニカも鐘の音が鳴ると同時にピクリと体を震わせ、顔をしかめながら立ち上がった。


「ヴェローニカが行っちゃう……」

「うぅ……ヴェローニカ、寂しいよぉ……!」

「レベッカ姉さん……」


 二人は最後に抱き合いながら泣き、先生が教室に入ってくるまでそのままだった。レベッカは随分とノリノリで芝居に付き合っていた。


     *


「みなさん、ようこそ。私はFクラスの担任、デレルです。」


 デレル先生はゆっくりと教室を見渡しながら話し始めた。


「クラスにはいろいろと変化があったようですね。自己紹介をして、互いに顔を覚えておきましょう。」


 その言葉とは裏腹に、彼女の視線は僕に釘付けだった。まるで全身を舐め回すかのような視線に、僕は思わず背筋を震わせた。


 順番が回ってきた僕は、立ち上がって名乗った。


「僕はザカリーです。最近【魔王】になりました。天職は【商人】です。」


 短い自己紹介の間に、デレル先生は僕の机の前まで来ていた。身をかがめ、両手で僕の机に手をつき、背後の生徒たちへと視線を送った。


「魔王様はこのクラスの希望であり、校長先生の期待でもあります。皆さん、彼をしっかりサポートしてくださいね。」


 そう言ってから、彼女は僕に目を向け、魅力的な笑顔を浮かべた。


「ザカリー君が何か困ったことがあれば、私も手伝いますから。」


 デレル先生の服は胸元が大きく開いたデザインで、その深い谷間がかすかに見えていた。僕は思わず視線をそらし、その結果オフィーリアとレベッカの冷たい視線に晒されることになった。


 どうやら僕の反応が気に入ったらしい。デレル先生は満足げに背筋を伸ばし、豊かな胸を小さく揺らしながら、得意げに教壇へ戻っていった。


     *


「なんで!なんで!私に知らせてくれなかったの!」


 ヴェローニカはソフィア先生の胸に顔をうずめ、泣きじゃくっていた。その姿はあまりにも痛々しく、見ているこちらの胸が締めつけられそうだった。


 休み時間の鐘が鳴ると同時に、僕たちは教室を飛び出し、ソフィア先生の元へ逃げ込んだ。三日ぶりに訪れた部屋は、相変わらず物が散乱していた。僕はその片づけを手伝いながら、Fクラスの混乱について聞いた。


 ヴェローニカは話を聞くと、あまりの驚きに言葉を失った。


「私も交換が終わった後に聞いたのよ。」

「そんな……。」

「まぁ、私は後勤科だから、連絡が来なくても不思議じゃないけど……」

「ただ?」

「教えてくれたのは、別の後勤科の先生だったのよ。」

「それって……変じゃない?」

「でしょ?まるでわざと私に隠してるみたいで。」

「どうして……?」

「もうひとつ教えてあげるわ。最初は生徒が騒いでただけで、普通なら許可なんて下りないの。でも、ある先生が賛成して、校長先生を説得したらしいの。」

「誰?」

「情報はないわ。」ソフィア先生は言葉を切り、少し考え込んだ後、顔を上げて言った。「でも、大体見当はつくわ。」


「「「誰?」」」


 僕とオフィーリア、レベッカが声をそろえて尋ねると、ソフィア先生は重々しく答えた。


「デレルよ。とにかく、あの人には気をつけなさいね。」


 その言葉を口にする彼女の顔には、不安の色が濃く浮かんでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ