コミックス刊行まで
艱難辛苦のメンタル乱高下期間(前話参照)を越え、とうとう迎えた連載開始日。……の前に送付されてきた雑誌の見本誌。ちゃ、ちゃんと載ってる……!
けれどそれだけでは納得がいかない。一話でも語った通り、私は疑り深いのだ。
「この雑誌、本当に売られているのかな……?」
そんな疑問がどうしても頭から離れず、実際に書店に赴くことにした。
……あった。本当にあった!
めでたく疑いは晴れ、意気揚々と帰宅。深呼吸しながら「コミカライズのお知らせ」についての活動報告を「なろう」に上げたのだった。
もし雑誌が存在しなかったら、とんだ赤っ恥をかくことになっていたはずなので、そういった意味でも確認作業をしておいて本当に良かった。
発売日当日に何の前触れもなくいきなりお知らせをすることになったのは、ご存知の通り、私がコミュ障だからだ。編集者さんに「雑誌連載の件、いつ皆様にご報告していいんですか……?」と問い合わせる度胸がなかったのである。
なお、活動報告が扉絵などの画像がない文字情報だけのシンプルなものとなったのも同じ理由だ。
そんな華のない「お知らせ」だったが、反応してくれた方は大勢いた。見たことがないほどの「おめでとうございます!」の嵐が吹き荒れたのだ。
お祝いしてくださった皆様、ありがとうございます! 普段はあまりお話したことがない方も足を運んでくださって、色々な意味でびっくりでした!
そんなドキドキと疑心暗鬼で始まった雑誌連載も、半年ほど経ってついに終わりを迎える時が来た。けれど、まだやることは残っている。コミックス刊行の準備だ。
「連載したマンガを本にする」というのは初めから知らされていた内容だ。けれど、話が具体性を帯びてきたのは2月初旬……最終話の連載が始まる一月ほど前のことだった。
まずは、コミックスのタイトルや内容、帯に入れる文言の確認をした。またまた「確認」だ。でも、これで終わりじゃない。他の作業として以下のことも行った。
①カバー絵の確認
②本文の初校を紙媒体で確認
③カバー、帯を紙媒体で確認
順番に見ていこう。
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①カバー絵の確認
カバーについて最初に聞いていたのは、「各話のヒーローの集合絵」ということだった。
「乙女ゲームのパッケージみたいな感じなのかな?」
と思っていたら、本当にそういうイメージだったそうだ。私の発想力も捨てたものじゃない。
提示されたイラストの構図は五案。多い! 迷う!
それとは別に、既存のゲーム作品等のイラストが十一枚も送られてきた。なんでも、色味の決定に使うのだとか。
「どのテイストが好きかお教えください。カバーもその方向性でいきます」
ということらしい。むむむ……どうするか……。
苦悩の末、マンガ家さんのホームページに「水彩テイストが得意」というようなことが書いてあったので、そんな感じのイラストをピックアップ。その色合いなら……というところから連想して、構図も決めることに。
そうして出来上がったカバーを見せてもらった時はテンションが上がった。キラキラしてる……。これが書店に並ぶのか……。うひぃっ、嬉しい。
作画コストがかかりまくりだったろうけど、素敵に仕上げてくださったマンガ家さんには大感謝だ。
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②本文の初校を紙媒体で確認 & ③カバー、帯を紙媒体で確認
本文の確認。数あるチェック作業の中でもこれが一番大変だったかもしれない。なにせ、180ページくらいあるマンガの原稿を一枚一枚見ていかなければならないのだから。
悪癖の「つい読者になってしまう」を発現させつつも何とかこなす。完全に間違い探しをしている気分だ。とにかくページ数が多いので忘れないようにメモを取りつつ、どうにか終わらせた。
それだけに、カバーや帯のチェックのあっさり感にはほっとさせられた。
しかし、まだ全てが終わったわけではなかった。
出版社の方から「これで確認作業は終了」と言われたし、ようやく長かったチェックも完了……と思っていたら、なんと今度は「本文の再校」と「カバーと帯の再校」が届いたのだ。
チェックは終わったんだから、見なくてもいいんだろうか? でも、送られてきた以上はたとえ修正が利かなかったとしても目を通しておく義務はあるはず。
大変だったけど、もう一度180ページ+αを見直す。一応受領メールも入れておいた。
なお、確認作業が全て紙で行われたのは、コミックスが電子だけではなく紙媒体でも発売されるかららしい。
3月下旬、コミックスの見本誌が届いた。しかも、十冊も。
ペリペリと包装を剥がして、一冊手に取ってみる。
思ったよりも薄い。けれど、ずしりとした重みを感じた。パラパラとめくってみると新しい紙の本の匂いがして、ちょっと恍惚となる。
本棚に置いておこうかなと思ったけど、何だかもったいなくて包装用のビニール袋とプチプチの中に戻し、丁寧に封をし直しておいた。
発売日がやって来て、私は例によって例のごとく書店に向かう。まずは近所の品揃えが悪……厳選された商品のみを扱う本屋さんへ。
……ない!
次の本屋さん。……ない!
その次、ない!
その後も一軒回ってみたけど、そこにも置いていないようだった。どうやらコミックスの存在は幻だったらしい。
……でも、星や月だって触れることはできないけど、きちんと空にある。この手で掴めないというだけで存在を否定することはできない。現に私の元に「コミックス購入しました!」とメッセージを送って下さった方もいたのだ。
マンガ家さんのSNSを覗いてみたら、どうやら東京のお店にはある模様。地方民の私では見つけられない場所で販売がされていたのだ。つまり、この単行本はとてもレアものということだろう。
家に帰ってから祝杯用に買っておいたオレンジジュースをやけ飲みした。仕事で子どもの野球の試合を見に行けなかった保護者って、きっとこんな気分だろう。