コミカライズはこんな流れで行われた
コミカライズの打診があってからというもの、私のメンタルは常に乱高下している状態だった。
何だかよく分からないけど、じりじりしてきた……な緊張の期間。
起こったことを淡々と受け止める冷静な期間。
冷静すぎて何も感じられなくなる虚無の期間。
あまりにも揺れ動く感情に心が追いつかず、何も悪いことは起きていないのに「もうダメだ……。おしまいだぁ……」となる絶望の期間。
そしてまた始まる緊張の期間。
この「緊張→冷静→虚無→絶望」のサイクルを連載開始までの間、ずっと続けることになる。打診があったのが5月で連載が始まったのが9月なので、約4ヶ月ほどだろうか。
緊張の期間にお医者さんから「脈が速いですねぇ」というようなことを言われたので、心だけではなく体の方にも変化が起きていたようだ。
そんなメンタルで行われた連載の準備。まずは流れをご紹介しよう。
①キャラデザの確認
②ネームの確認
③下絵の確認
④初校の確認
⑤扉絵の確認
⑥ロゴの確認
順番が多少前後することはあっても、やることは基本こんな感じだ。もうお気付きだろうか? 全て確認作業なのである。
チェック、チェック、チェック! 私が絵を描いたりデザインしたりするわけではないから当たり前だけど、原作者の仕事は基本的にチェックをすることのようだ。
ちなみに「③下絵の確認」は省かれることもあった。なんでも、下絵のチェックはネームと初校の間にあるギャップに慣れるために行っていたかららしい。気を使っていただいて感謝します!
ここから先はそれぞれの作業について、もう少し詳しく見ていこうと思う。
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①キャラデザの確認
「デザインを二パターン用意しました。髪型、顔、衣裳について、お好きな組み合わせをお選びください」
まさかのバイキング形式。本当に私が選んじゃっていいんですか……?
後にはもう少し簡素化されて、「二つのデザインパターンの内、どちらがいいかお選びください」方式になった。A定食かB定食かの選択というわけだ。
初めてキャラデザを見せていただいた時に浮かんできたのは、原作者がこんなことを言うのはおかしいかもしれないけど、
「このキャラ、こんな容姿だったんだ……」
という感想だった。
もちろん、以前からぼんやりとしたキャラクターのイメージ像はあった。けれど、きっちりとした形の「デザイン」が現われたことで、そんなポヤポヤ画像は吹き飛んでしまった。そしてあの感想が生まれたというわけだ。
また、
「原作の乏しい描写量から、よくぞここまでのキャラクターを作り出してくださった……!」
とも思わずにはいられなかった。
「短編だし、容姿の描写はそんなになくてもいいかな……」
なんて考えていた過去の自分を叱責したい。せめてヒーローの見た目くらいは、もう少しきっちり書いておくんだった。
また、キャラデザの確認と同時に「こういう演出を入れたいです」という提案もされた。しかし、ここで問題発生。
私はマンガのことがさっぱり分からなかったのだ。
適当に「大丈夫です」と言うこともできたものの、悩み抜いた末正直に
「作画のしやすさや絵にした時の映えについては詳しくないので、いい感じにやっちゃってください(意訳)」
と伝えておいた。そのためか、初回以外はそういった話をほぼ聞かなくなったけれど……。もしかしたら、ものすごくバカだと思われたのかもしれない。
ご親切に、
「主人公がB案で、ヒーローがD案だとバランスがいいと思います」
とアドバイスを下さったこともあって、それが結構ありがたかった。無知ですみません……。
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②ネームの確認
ネームというのは、大まかに言えばラフのこと。コマ割りや構図、セリフなどを、簡略化した絵と共に記したものだ。
「マンガ家さんってすごい!」と思ったのは、そんな簡素な絵でもどんな仕上がりになるかイメージができたことだ。
「デッサン人形みたいなのに、キャラが格好いい! 可愛い! これはキュンとくるシーン! ネームでこれなら、本格的に作画が始まったらどうなるんだろう!?」
ネームのチェック中、私はずっとこんなテンションだった。
忘れてはいけないもう一つの見所は、マンガ家さんが私の作品をどう解釈したかが分かるところだ。
「なるべく原作のセリフを拾ってくださっている……!」
と感動したり、
「導入がスッキリと分かりやすくなってる!」
と拍手したり、
「小説では数行であっさり終わっていた部分が、三ページも使ったニヤニヤできるシーンに変身してる!」
とはわはわしたり……。
また、地の文がセリフや独白に引用されている箇所が多いことにも気付いた。
一人称で書かれた話なら、地の文も誰かしらの心の声だからだろうか。
そんなこんなでネームについて私が思ったのは、「これぞ味変!」だった。内容を知っていても新鮮な気持ちで読むことができたからだ。
……もうすっかり読者の眼差しだった。けれど、忘れてはいけない。私はこのネームをチェックしなければならないのだ。
けれど、具体的に何をすればいいんだろう? 敬称や一人称の間違いを連絡するに留めておいたけど、本当にこんなので良かったのだろうか……?
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③下絵の確認 & ④初校の確認
ネームから一気に肉付けされたものが下絵としてやって来た。「この次点でもう充分です。ありがとうございます」な気持ちだ。
お楽しみは、ネームからどんな絵になったのか両者を見比べてみることだった。それから、マンガ家さんがどういう風に作画をしているのかも分かってちょっと楽しかった。
初校の確認では、トーンなどを貼られた実際に雑誌に載せられる原稿に近いものをチェックすることになる。
またしても「ここでは何を確認したらいいんだろう……?」という疑問が湧いてきた。とりあえず、ベタの塗り忘れや装身具の描き忘れを知らせておく。
けれど、ここでも私の無知っぷりが浮き彫りに。今度のやらかしはズバリ「絵心のなさ」だ。
「これは……演出の一環でわざと描かれていないのかな? 角度や向きの関係で見えないだけ? それとも作画ミス?」
こんな問答を何回したことやら……。絵心がないせいで、正しいのか間違っているのか判断ができなかったのだ。
それでも素人なりに考えて「ここはこうだと思います」と連絡はしたけど、「こいつは何を言っているんだ……」と思われていたに違いない。
だけど、心配はいらない。コミュ障は浮くのに慣れている。
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⑤扉絵の確認 & ⑥ロゴの確認
扉絵の確認……? またしてお決まりのセリフ「イラストについては詳しくないので、何を言っていいのやら……」の出番だ。
それにしても、作品のイメージを一枚絵に収める技術ってすごい! しかもただ描くだけじゃなくて、ロゴ(作品タイトル)を入れることも考慮した構図にしていらっしゃる……!?
そんなロゴだが、これは二つの中から一つを選ぶ方式だった。目利きじゃないので、やっぱり「どっちもいいです!」しか感想が浮かんでこない。
実はこのロゴ、コミックスには載っていないので、連載を読んでくれた人だけが楽しめる要素だったりする。
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連載作品に関するチェックの話は以上で終了だ。私がコミュ障なだけではなく、絵に関してもまったく知識がないということをご理解いただけただろうか。
私も少しはデザインや絵の勉強をする方がいいのかもしれない。でも、描かない人向けの勉強方法って何かあるんだろうか……?