エピローグ
頭の奥――暗がりの向こうから声が聞こえる。
「――僕を呼んだね……でも、僕に出来ることは、限られているよ……」
私が呼んだの……? ただ、前にママに読んでもらった絵本の主人公を思い出しただけ――。
リーグレ……孤独な天使と、優しい死神の子ども……素敵な絵本――。その子が遊園地で人間と遊ぶの……。
なんて題名だったかな――。ピエロが私に覆い被さっている――重い……。
助けて――、助けて、リーグレ……。
「わかったよ――」
頭がぼーーっとしてくる。ちょっとおかしな、オルゴールみたいな音が聞こえる――。
「起きた⁈ 目が覚めたのね!」
――ママ? 私、どうしたんだっけ……。そうだ、パパと遊園地に行ったんだ。
「ああ! 良かったぁ、ごめんな、パパが――不安にさせたばっかりに――」
――パパも……。二人が一緒にいる……。
「ちょっと、誰か呼んできて。大丈夫? 痛いところは?」
パパが部屋から出ていった。ママは、私の頬に掌を添えて、涙目になっている。
私は頭をフルフルと振った。痛いところなんてない。それよりドキドキしている。遊園地で沢山遊んだ記憶――。リーグレと、それから……。
パパが戻ってきた。「もうすぐ来る」とママに小声で言っている。
「何をされたか、覚えているか」
「ちょっと! 変なこと聞かないで! 大丈夫だったって、お医者さんも言ってたじゃない! まだ起きたばっかりなのに――」
「そんなに大きな声を出すなよ……でも、そうか……すまない」
あいかわらず、パパとママはすぐにケンカする。何をされたかって、ただ、楽しかっただけ――。
「――怖い記憶は、消しておいたよ。――君には必要ないからね……」
リーグレ? 頭の中で、温かい声がする。ママが「なに? どうしたの?」と心配してくる。
「本当はいけないことだけど、ヘデラがうるさいんだ――」
ヘデラ……? 誰だっけ――。
「だから、お詫びも込めて、楽しい記憶だけを君に――」
その声を最後に、リーグレの声は聞こえなくなった。パパが、「まだぼうっとしているだけだ」と、ママを宥めていた――。
ドリームランド、最後までありがとうございました!
しばらくは公募に専念しますが、また投稿しますので、これからもよろしくお願い致します!