天駆ける夜汽車
それはある夜突然やって来た。
もやのかかった世界に、音も立てず静かに私の目の前に止まった。やっと迎えに来てくれた。
そうして、私はそれに乗り込んだ。
この世界に見切りをつけたのか、それとも、私がこの世界に見切りをつけられたのか。
いや、そんなことは、もう、どうでもよかった。
誰にも告げずに、私は旅立つ。
手から零れ落ちる銀の砂。
いろいろな想い出を乗せて、宙へと消えていく。
最期に、この世界を忘れないように、目にしっかりと焼き付けて。
私のことを誰も知らない世界へ。
さようなら。