第1章 1 〜大ピンチ!〜
はじめまして、俺の名前はアルバート・ノア、みんなからは『アル』って呼ばれています。
「お前はこれを見てどう思う、アル?」
俺の目の前で紙を踊らせながらそう聞いてきたのは俺の雇い主のダリウス。
「いや〜、はは…まいったな…」
ただ今俺は週に2回はある大ピンチに陥っていた。今週はもう3回目だけど…
「まいってんのはこっちだ!なんだよコレ!」
バン!と、持っていた紙を机に叩きつける。それは請求書だった。
「俺は診療所の壁を塗り替えとけって言ったよな!なんで壁に大穴開けてんだよ!」
「面目ないです先生…」
「ただでさえ『普通以下』のくせによ〜」
そうは言いつつも俺の傷ついた拳に包帯を巻いてくれる先生。
「お前をバイトとして雇ったのはやはり失敗だったかな」
「そんな事言わないでくださいよ!働かせてくれるだけでも感謝してんですから!今だって俺の為だけに傷薬を調合しておいてくれるし」
「ふん、じゃあしばらくバイト代はいらないな、壁を直さなきゃいかん」
「げ」
「よし!話終わり!もうすぐ午後の診察の時間だ」
「ちょ、ちょっと待って!」
いや、全然『よし!』じゃない、マズイ事になったぞ…俺が100%悪いのはわかってるし、申し訳ないとも思ってる。
だがバイト代が出ないとなると死活問題だ…それだけは避けないと…
午後診察の時間まであとちょっと、脳細胞をフル回転させなんとか打開策を見つけ出そうとした矢先…
「パパー‼︎‼︎‼︎大変大変‼︎あっ!アルだ!こんにちわ!」
「こんにちわミリア、今日も元気だな」
「えへへー♪」
「だけど今はちょっと待って、君のパパにどうやってバイト代を出させるか考えてるから…」
「おい、アル。俺の天使の前で金の話なんかすんな」
「…?よくわからないけど大変なんだよ!事件なんだよ!街の外で人が死んでるの!」
「「え⁈⁈」」