向日葵へのたむけ
家に呼ばれてはや2日また呼び出しをくらった
どれだけ暇なのか……そう思いつつも桜に会える嬉しさで僕はすぐに走り出した
家に着くと桜しか居なかった
「今日は桃さんとお父さんは居ないの?」
「今日はお出かけ中。逢いたいならそのうち連絡くると思うからその時来たらいいよ。」
「そうだね。ところで今日はどうしたのかな?」
僕は桜と会えた嬉しさで笑顔になりながら聞いた
「今日は向日葵を見に行く。たくさん咲いている所を見たい!」
「なんで向日葵?」
「夏といえば向日葵だから!」
堂々と桜は答えたと同時に自転車を漕ぎ出す。
蝉の鳴き声が五月蝿く。モワッとする暑い熱気。
自転車を漕ぎ始めると風を受け涼しく感じる
目的地は飯山にある向日葵畑。
世界は2人を加速させたかのように自転車の速度が上がる。
走る近くの畑を見るとちょこちょこと向日葵が咲いてはいるがあまり元気がない。
「桜は花の中では向日葵が好きなの?」
「うーん。どうだろう……。大して好きではないかな?どちらか言うとそこら辺に咲いている紫の小さい花の方が好きかな。」
「じゃあどうして沢山の向日葵を見たいのか教えてよ。」
それを聞くと桜は少し考えて「内緒……。」とだけ呟くと少しスピードを緩めた
だんだん目的地に近づいてくる。
鳴り響く蝉の鳴き声は一向に消えずに僕たちを包み込む
田んぼでは稲が植えられて水が入っている。これぞ夏の風物詩といいたげに
目的地に到着した時には流石に汗をかき過ぎて酷かった。お互いに水分を持ってきていなかったので僕は桜に「お茶を買ってくる。」といい向日葵畑に少し置いてきた
自販機へ着いてお茶を買っているとメールが届いた
「私を探して」
たった5文字だけど僕はドキッとした瞬間速攻で戻る
桜の自転車はさっきから動いていない。桜に電話しようとしても電源を切られていた。
さっきのメールを思い出す。「私を探して」
きっとこの向日葵畑に隠れている桜を探すのだろうが向日葵畑は迷路になっており道も狭く少し広い
しかも、桜の家からここまで1度も水分も取らずに帽子も被っていない桜は脱水になりかけているはず
こんな事になるなら自販機まで一緒に連れていけば良かったと思いつつ桜を探す
「桜〜!どこだ〜。」
少し焦り気味の今の僕は簡単な迷路でも迷ってしまっていた
桜を見つけられずに1度迷路をクリアする
もう一度入り次は通っていない道を通るが見つからない
走って探しているせいかすぐに喉が渇く
こうなるならポカリを買っておけば良かったと後悔する
「お姉ちゃんどうしたの?」
小さい子供の声が聞こえた
聞こえた瞬間声の方へダッシュする
「お姉ちゃん辛いの?大丈夫?」
4歳くらいの女の子が座り込んでいる桜に話しかけていた
「桜!大丈夫か?しんどくなってないか?」
桜の顔は少ししんどそうだがとりあえず女の子に心配させてはいけないと思ったのか桜は「このお兄ちゃんとかくれんぼをしていただけだから大丈夫だよ。」といい僕と一緒に迷路の外に出た。
僕は近くの木の影に桜を寝かせて水分を取らせる。
少し良くなったのか桜は「このまま脱水で倒れても良かったけどね。」と無理矢理笑っている感じで話をした。
「昔、私に1人親友が居たんだけどね。3年前に死んじゃったんだ。その子が向日葵が大好きで毎年育てていたけど…久しぶりに見たくなって……。」
昔のことを思い出した桜は少し涙目になる。僕は近くに座って話を聞くことしかできなかった
しばらくすると桜は完全復活を成した
少しだけ昔話をした桜は満足した様子でカバンから線香とライターを取り出し線香に火をつけた
置く場所が無いので線香を手で持ったまま桜は手を合わせた。
僕も桜と一緒に手を合わせ桜の親友に「絶対に桜を守ってみせる。」と勝手に誓った
「よし!帰ろう!」
と桜は蝉に負けないくらい元気に声を出す。
「向日葵は満足出来た?」
「うん!大満足!!」
今日の桜の笑顔は満開の向日葵のようだった
家に帰ると桃さんとお父さんが帰って来ていた
飯山への往復でだいぶ疲れていたせいか家に上げてもらってすぐにリビングで眠ってしまった。
起きると6時頃で隣に桜が眠っていた。慌てて帰ろうとする僕を桃さんとお父さんは呼び止め
「桜と遊んでくれてありがとう。」
「桜と一緒にいてくれてありがとう。」
と言ってくれた。
眠ってしまってすみません。ありがとうございました。と言うと全然大丈夫!また来いよ!
と言ってくれる。僕は桜の家族がいつの間にか大好きになっていた。
明日はきっといい日になるなと勝手に思い込みながら帰路に着いた
読んでいただきありがとうございます!
桜の過去を少し知る事が出来た陽ですがまだまだ何故死のうとするのかとても弱く感じる。そんな回でした。
書くペースがだんだん遅くなってきていることに少し辛く感じています。もっと沢山早く書きたい!
少しでもいいので感想書いて頂けると嬉しいです。