妖精は笑顔で染まる 2
昨日僕は桜にもう来なくていいと言われてしまったが流石にそういう訳にはいかないので今日も病院に行く事にした
桜のお母さんにもいいって言われたし……
今日はきちんとお見舞いを持ってきた
桜はきっと桃が好きだと思う……勘だけど
念の為、桃とナイフを持ってきたがナイフで捕まったりしないだろうか……
ドキドキしながら病院に入っていく
自分の挙動が気になる。不審者に間違われないか心配しながらエレベーターの前まで行った
杞憂だったようだ。エレベーターが閉まる直前急いで乗り込んだ男性がいた
「何階ですか?」
丁寧に聞くと180は超える大柄の男性は5階でと言うと上を向いてしまった。5階を見てる?とても急いでいるような雰囲気だった
男性は昨日の僕みたいに扉が開くと同時に「お先失礼。」とだけ伝えエレベーターを早足で出ていった
僕は昨日と比べてだいぶ落ち着いていた
桜の病室の近くまで行くと桜のお母さんがちょうど出て来た
「やっぱり今日も来てくれた!」
少し嬉しそうにパタパタと近寄ってくる
「昨日、桜さんのお母さんに来ていいと言って貰ったので。それにお見舞いも持って来ていなかったので。」
持ってきた桃を見せた
「わぁ〜美味しそう!お見舞いなんていいって言ったのに。でも、ありがとう。さぁ、中に入って。」
そう言いながらドアを開けようとした瞬間ドアが勝手に開いたと同時にさっきの大柄の男性が出てきて
「桃、誰と話をしているんだ?ん?君はさっきの……。」
と言いながら僕を睨んで来た
怖かったが僕はビビらずにすかさず
「桜さんのお見舞いに来ました。」
「なんで桃と仲良さそうに話をしていたんだ?」
「私が陽君を呼び止めたのよ。ほら!昨日話をしたでしょ?」
「なるほど、君が陽君か。さっきはエレベーターに乗せてくれてありがとう。だが、桜との「はい、私たち2人は邪魔になるから少し散歩に行きましょう。」」桜のお母さん、桃さんはお父さんの手を掴んで歩いていってしまった
お父さんは何を言おうとしたんだろう?少し考えても分からなかったので諦めて病室に入った
「なんで今日も来たの?来なくていいって言ったよね?」
桜からの第1声がとても冷たく感じた
「まだ入院の理由を詳しく聞いていなかったし。それに桜に会いたかったから。」
「入院の理由はあの時全部水が出てなかったから。もう会ったから帰って。」
「そんな冷たいこと言わなくても……ちゃんと水を出せなくてごめん。あと、お見舞いの桃置いていくからお母さんとお父さんと一緒に食べて。」
桃を置いて部屋から出ようと扉を開けた時
桃さんがお父さんの口を手で押さえて立っていた。
いつから聞いてた。多分最初からだな……
お邪魔しました〜と笑顔で会釈しながら部屋から出ようとした時
お父さんに肩を思いっきり掴まれた。てか、捕まった。
「少し話がある。一緒に散歩しよう。コーヒー奢るから。」
明らかに敵意を剥き出しにされながら僕は桜のお父さんに連れていかれた
少し離れたところから「かずきさーん陽君に何か会ったら許しませんからね〜。」と桃さんの声が聞こえる
そこまで言ってくれるのなら普通に助けて欲しかった
同じフロアにある休憩室まで引きずられた僕はコーヒーを渡され席に着いた
「さて、陽君。最近桜と良く遊んでくれているようだがどういう関係かな?」
声が怒っていた
「ただの振り回されている友達です。」
そう言った瞬間顔から怒りが消えたように見えた
「そうか。ここ数日の桜はとても楽しそうにしているからとても嬉しいよ。ところで桜は桃に似て可愛いだろ?変な男が寄ってこないか心配でな……もし君が桜に変な恋心を抱いていないかと思ってな。」
基本僕は嘘をつかない。が!今は嘘をつく。嘘を言わないと殺されると本能で何故か感知していた
「桜さんは確かに可愛らしいですが恋心なんてありませんよ。」
言ってて少し辛くなった
すると嬉しそうに「桜はほんとによく出来た娘で……」と娘自慢を長い時間された。桃さんがお父さんを迎えに来る30分程
聞いていてとても疲れたがとてもいいお父さんなのがわかったし、桜の事が少しわかった気がした
話を終え本当に帰ろうとしたらお父さんに桜に挨拶して帰れと言われたので部屋に入ると美味しそうに桃を頬張っている桜がいた。
「あ、ごめん。帰る前に挨拶……」
だんだん桜の顔が赤くなっていくと同時に「さっさと帰れ!」と大声を出された
「帰ります。」とだけ桃さんとお父さんに伝え病院を後にした。
あそこまで美味しそうに頬張って食べてくれるととても嬉しかった
読んでいただきありがとうございます
今回桜のお父さん(かずき)が出てきてかなり子煩悩でした。
明日で退院の予定の桜
どうなるのか……楽しみだ!