君は木と共に揺れる
君が死にたいと連絡してきたのはトラックに轢かれそうになって2日後の昼だった
誰にも見せられないなと思いながら自転車に跨った
2024年7月25日
世間ではオリンピックがどうのこうのって話題になっているが正直僕は興味無い
わざわざこんな暑い中世界規模のスポーツ大会を開かなくてもと考えながら君が呼び出した山の上まで来ていた
山の中で死ぬなら首吊りかな?じゃあ、僕は何をして君が死ぬのを止めようかな……
そう考えながら自転車を停めて君がいる山の頂上に来た
「遅かったね。」
「結構飛ばしてきたんだけど。」
不満そうに言われたからこっちも同じように返した
「やっぱり君は死にたいの?」
「当たり前だよ。むしろ僕君はこんな世界死にたいと思わないかい?約1パーセントの人間が世界の半分以上の富を持ち、自分達で行った行動のせいで災害が起きても自分達は関係ないと主張するクズ共。そのうちいい事が有るよと言うだけの同級生、いい点数を取れしか言わない親、同調同圧が強いこの国の雰囲気。私はこんな世界では行きたくないね。」
そう言いながら君は辛そうな顔をしてこう続けた
「分かってもらおうとは思ってないし思わない」
なるほど……君はこの世界の暗いところばかり見ているのか。
「まぁ、今回したい死に方は君も考えていたんじゃないかな?首吊りだよ」
君はとても幸せそうな顔でロープを見せてきた
ロープは結構頑丈そうな縄で君1人くらいなら簡単に首が吊れるだろうと思える位の太さだった
「じゃあ準備しようか!」
君はルンルンで首に入る大きさの輪っかを作り始めた。このままじゃいけないそう思った僕は
「今日は天気も良いしさ別の日にしない?」
うっわ〜変な事言ってしまった
「今日見たいないい天気の日だからいいんじゃない!」
少しキョトンとした君は強めの勢いでかえしてきた
「じゃあさ、僕と一緒に少しだけ遊んでからにしない?かくれんぼとかどう?ここは山の上だから木もあるし遊具も沢山ある。死ぬのも少し遅れるだけだからいいだろ?」
「わかった。じゃあ僕君が先に逃げる方、私が見つけたら死ぬの手伝ってね。範囲はこの山頂部分から駐車場まで。それより下に行ったのが分かったら反則負けでね。」
「わかった。」
大丈夫。絶対に死なせない。僕は君に勝手に誓いながら隠れることにした
君は30秒数えたから僕を探し始めた。
君はキョロキョロと当たりを見渡すと駐車場の方に走っていった。駐車場の方から探す考えなのかもしれない
君が戻ってくるまでに僕はとある事をした
20分後君は最初の位置にまで戻ってきて僕を見つけた
僕は足音でバレないように1度駐車場の方に走っていって直ぐにゆっくりバレないように帰って来ていた
「こんな所に隠れていたなんてなんで最初に見つけられなかったんだろう……。」
汗だくになった君は少しガッカリした感じで呟きながら首吊りの準備をし始めた
君は準備がいい事に木の箱を用意していた僕は君を眺めていると君は「早く手伝ってよ。」と怒っているかのように言い放った
木の箱は思ったより丈夫で僕が乗ってもビクともしなかった。これが壊れたら死ぬ事を止められたのに
そう思いながら首吊りの準備が終わった
君が紐で出来た輪っかに首を通す
顔に汗をかいている君はとてもいい仕事をした大工の様な笑顔で僕を見た
とうとうこの時が来た。君は笑顔を絶やすことなく僕に「バイバイ。」と告げると木の箱を蹴り飛ばした
君の身体が少し落ちて止まった
君の首が締まっている少しずつ顔が青白くなるがまだ君の顔は笑顔のままだった
その時のブチッと鈍い音がしたと思ったら君が地面に落ちてきた
首に紐が着いているままの君は犬のような感じだ
尻もちを着いたままの君は少し寂しげな雰囲気になりながら
「死ねなかったよ」と一言だけ呟いた
山頂に着く1時間前
僕は君から来た連絡に少し戸惑っていた
「死にたいから山の上に来て」
僕の家の近くにはいくつか山があるが山の上まで行ける1番近い山はあそこかなと目星をつけた
山の上で死にたいなら首吊りか転げ落ちるか生き埋めかなといくつか予想しつつ僕は首吊りかなと予想しハサミを手にとり君の元に向かった
結局死ねずにロープも使えなくなってしまった君は
「死ねないのは残念だけど今日は君と少し遊べて楽しかったよ。今日は付き合ってくれてありがとう。」
そう言うと君は直ぐに帰って行った
僕は首を吊っている最中の君の笑顔を思い出しながら君の後を追うように帰って行く
君がいつか生きててよかったと思える日が来ますようにと心の中で願いながら
2話目を読んでいただきありがとうございます。
なんでこんな暗めな話にしたのだろうと少し後悔しながら書いています(笑)
今後彼と彼女はどの様になるのか少し楽しみです
読んでいただいて一言でも感想を書いていただけたら嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました