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アリスナイトメア  作者: まいひな
悪夢発症
1/2

プロローグ【始まりの悪夢】

それは自分を映す物、それは自分を覆う物


   ━━━━闇が深い━━━━


 何度も言われきたその言葉。

 あなたの心に根付いた闇はとても深いと、何度もカウンセリングを勧められてきた。

 その度に私は思う。

 私の名にを分かって言ってるのか。

 何をもって闇が深いと断言しているのだろうか。

 自分自身、言動や行動に不可解な点があるとは思わない。

 普通の家庭に生まれ、普通の幼少期を過ごし、普通に学校を卒業して、普通に就職。

 友人と呼べる存在も多くはないけれど、人並みにはいると思う。

 別に自傷行為をするわけでもない。

 可愛い物を見れば素直に可愛いと思えるし、美味しい物を食べれば素直に美味しいと思える。

 心の底から笑う事もあれば、涙を流して感動する事もある。

 そう、私は至って普通なのだ。


 ただ一つだけ思い当たる節はある。


 私は今、真っ暗な場所に一人佇んでいる。

 灯り一つ無い場所なのに、自分の姿はハッキリと見える。

 そして目の前の異様な光景もまたハッキリと見えている。

 私の目に映るもの。

 それは私自身。

 どことなく暗く、生気を感じられない死人のような表情の私がそこにいる。

 そのもう一人の私は誰かを抱えていた。

 でもそれは決して抱きしめているわけではない。

 もう一人の私は抱えられている《誰か》の首筋に口元を当てている。

 この場面は映画や漫画なんかで見たことがある。

 吸血鬼だ。

 もう一人の私は抱えているその《誰か》の血を吸っているのだ。

 だからと言って私はもう驚く事はない。

 何故ならこれが初めて見る光景ではないからだ。

 このシーンを見るのは何度目だろうか。

 どうして私は同じ夢を何度も見るのだろうか。

 ある日を境に突然見るようになったこの悪夢。

 何度も何度も繰り返されるこの悪夢。

 どんなに調べてもこの夢の意味は分からない。

 今ではもう慣れてしまった。


『闇が深い』


 この言葉で思い当たる節はこれだけ。

 この意味の分からない悪夢だけ。

 この悪夢が私の抱える心の闇によるものなのであれば、それはそれで納得してしまう。


 その時、突然視界がぼやける。

 これもいつもと同じだ。

 夢の終わり、目が覚める時だ。


 でも今回はいつもと違った。


 もう一人の私が、立ち尽くす私の方を向く。

 この悪夢を見るようになって初めて私達は視線を合わせる。

 久し振りに恐怖が込み上げる。

 その目は一言で表すなら、全てを吸い込んでしまいそうな漆黒の闇。

 危険だ。

 直感的にそう思った。

 その瞬間、人ではない私の姿をした《何か》は優しく微笑み、こう言った。


『目覚めなさい』


 そして私は覚醒した。

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