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テンカイさんの暇つぶし

作者: 剛矢京都(ごうやきょうと)

誤解の無いように申し上げるが、この話はけして作り話ではない。ここに紹介する人物や体験の話は今この瞬間も数限りなく繰り返されているに違いないのだ。


 

 ある人を紹介したい。


 ごく普通の人で、他人が羨む程じゃないが、まぁまともな生活をしてきた。少し凡庸なのはご愛嬌で、頭の切れるインテリでいるよりは人付き合いを大事にする方だ。趣味は冒険旅行だから、暇さえあればあちらこちらに出かけて見知らぬ場所を探しては風土や食いものや人との出会いを楽しんでいた。


 幾らでも時間はあった。と言うよりも彼にとって「時間」は如何でもよかった。何しろ彼はもう長い間この天上界で暮らしてきたのだ。人間界の年月に例えりゃ何百世代もの期間、天国でも地獄でもないこの「冥界」の霊格としてくつろいでいたのだ。ここでは空腹も疲労も無く老化もしない。自分の気に入った年格好で気の合った仲間と暮らしていればよかった。命を落とす心配もない。

 誤解の無いように言っておくが人間が言う「天国」なんてぇ場所にいるのは飛び抜けた善業の持ち主や偉人聖人の類いだし、地獄に堕ちる輩はわるの中の悪で手のつけられない狂人亡者や魑魅魍魎だけだ。大概の冥霊(天国でも地獄でもない冥界に居る人間、霊体)は言ってみりゃあ「どっちつかず」なんで、この冥界で可もなく不可もなく生活してりゃあ気楽な人生ならぬ霊人生というもんだ。


 冥界には神様みたいな人は滅多に居ないし大した悪党も見当たらない。と言うのも、この冥界じゃあ誰でも彼でも頭で考えることは包み隠さず全部丸見えだ。悪だくみを考えようなら他の霊人達の鋭い霊視線の集中砲火を浴びて冥界の場末の地獄の1丁目の入り口近くまで追いやられる。力ずくじゃあない。天上界は超物理空間だから移動は「思う」だけで瞬時に終わる。(無論、ゆっくりバスで移動したけりゃあそれも許されるが。)悪霊が地獄近くまで飛んでいくのは天上界特有の「同類引き寄せの法則」によるもんだ。此処では類が類を呼び、友は友を呼ぶんだ。


 逆に慈愛と奉仕に生きる本物の善人は光り輝いて眩しいこと、こんな霊人が冥界に居るのは勿体ないし、こっちは眩しくてしょうがない。あっと言う間に天国に飛んでって2度と戻って来やしない。いや、もし来ても眩しくてよく見えない。


 話しを元に戻そう。彼の名前は如何でもいいんだが、とりあえず天上界に近いんで「テンカイさん」とでもしようか。冥界じゃ名前は要らない。と言うのも霊人どうしは面と向かえば、お互いの生き様や生い立ちがたちどころに読み取れるし、その印象は二度と忘れない。相性が悪けりゃあ(「同類引き寄せ」の反作用で)その相手とは永久に会わなくて済むし、気に入った霊人はいつでも隣にいるようなもんだ。


 誤解の無いように言っておくが、冥界の住人の視覚・聴覚・嗅覚・触覚は地上の人間界の人の感覚の数十倍だ。綺麗なものは何倍も綺麗に見えるし、汚いものや危険なものは腹わたがよじれる程の嫌悪を感じる。


 どっちつかずの冥界であっても、テンカイさんはいつでも気の合う仲間と暮らしていて、間違っても悪だくみはしなかったし、他人を攻撃したり恨んだりしなかった。いつか見せてもらった地獄の風景は今も記憶にあるが、感覚が澄み渡った霊人のテンカイさんにとっては文字通り言語を絶する底なしの恐怖だった。だから仲間内でも地獄だけは話題にはしないし、「地獄」っていう単語すら使わない。


 そんな恵まれた環境にいるテンカイさんだったが、ひとつだけ悩みがあった。ちょっと贅沢な悩みだ。それは毎日が「退屈」なことだ。


 ご存知のとおり、冥界という場所は悪意さえ無ければ、どんな生活も「したい放題」だ。欧米の文化じゃ「サマーランド」なんて呼ばれているらしい。冒険旅行も住居も飲み食いも恋愛でもスポーツでもセックスでも何でも思いが叶う。しかし、条件がある。ひとつは、決して悪巧みをしないこと。もう一つは全てが「自分の思い」を源泉として生活しなければならない事だ。自分で思い描けないものは実現しない。なんでも自由なのは実は自分の発想の範囲内というわけだ。


 例えば冒険旅行で「知らない場所」に行こうとするんだが、何度も何度も旅行する内に気がつくのは、どんな場所も結局は自分の頭と心(魂)で想像しうる範囲でしかない。数千回冒険すればバリエーションも尽きて新鮮な体験は無くなってくる。


 天地が逆さまの世界も行ったし、美男美女だけの島にも行った(もうたくさんだ)。ギャンブルだけの世界(何時も自分が勝つが冥界じゃあ金なんか要らない)も探訪したし、王様扱いしてくれる太鼓持ちの村も体験した(自分本意も度が過ぎれば地獄行きだ)。水中都市も地中都市も体験したがこれらも直ぐに飽きた。


 仲間内で話し合って、もっと奇抜な環境を創造してもみたが、その仲間も(同類引き寄せの法則で)皆自分と同じ人柄(いや霊柄)だから自然に発想が似通ってくる。あのビートルズのメンバーがお互いに飽きて解散するのと同じだ。


 冥界には昼も夜もなく、時間に追われる事はない。テンカイさんの発想が如何に豊富でも地球の人間界の時間で何百世代も同じ発想で暮らせば流石に見るもの聞くもの全部飽きてくる。何でも有りで自由だが悪意は絶対ダメと言う環境は、「霊人の袋小路」だとテンカイさんは思った。そしてテンカイさんは狂おしいほど「想定外の変化」を求める様になった。


 ある時、散歩にも飽きたテンカイさんが自宅の居間でくつろぎなから考えていた。

「地獄だけは絶対嫌だが、何か自分の考えもつかない意外な世界を知りたい。」

「多少は苦しくても波乱万丈な、本当の意外性の世界に身を置いてみたい。しかも自分の考え得る発想の外で!」

 テンカイさんはそう願ってたわけだ。すると


「お待ちしておりました!お客様」

 テンカイさんの目の前に何処かで見た様な小僧が突然現れた。(冥界ではよくあることだから驚きはしないが。)


「ああ小僧さん、退屈な私に何か紹介してくれるのかね?」

「もちろん、わたくしめはそのために来ました。」

「本当か?」


 本当かと質すと同時にテンカイさんは小僧さんを霊視した。その小僧さんの人と成りはスッキリして淀みが無かった。それに何時か何故かで会ったことがあるような懐かしさがある。冥界で親和性のある霊人に会うと懐かしく感じるのだ。


「お客様は本当の多様性と波乱万丈をお探しでした。はい、もちろん紹介できます。冥界に不可能はありません。」

「そういうのはもう飽き飽きですが」

「まあそう言わず、このチラシを一読下さいませ!」


 チラシにはこう書いてあった。


 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX


 ようこそ!貴方の知らない世界へ


 この「意外性」の世界で発想の限界を超える体験を味わって下さい。あなたの考えもしない意外な世界です!


 場所 太陽系第三惑星「地球」

 時間 60年から80年、オプション有ります

 特典 豊富な意外性、個人の発想の自由


 冥界では考えられない世界です。

 一度体験するとやめられない。魅惑の地球!


 注意 : 地球型人間界の諸条件適用。


 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX


「何だこりゃ?」


 テンカイさんは地球なんて行った事が無かった。冥界に来る前の記憶はとっくに捨ててしまっていたんだ。だから「太陽系」も「地球」も初耳だ。しかし、考えもつかない世界は今の自分が一番生きたい場所じゃあないか。


「太陽系?知らないなあ。でも何が有るんだ?それと、この『60年』って何だ?」

「一言で申し上げて、善悪の自由です。年月については3Dの映像サービスがありますのでご覧下さい。」


 小僧とテンカイさんは瞬時に古びた(しかし懐かしさに溢れた)映写室に瞬間移動すると、目前の立体画面に淡く光る恒星といくつかの惑星が周り始めた。


 冥界環境に住むテンカイさんの身の回りは自分の経験と霊的記憶の産物だ、だから全てはテンカイのレパートリーと言う訳だ。それ以外の物が目の前に有る場合、そりゃ天上界由来の教育的指導か、或いは地獄由来の悪質な誘惑だ。天上界由来は眩しくて目が眩むんで苦手だし、地獄由来は好奇心をくすぐるんだが何しろ酷い悪臭で嫌悪感だけが先に建つ。


 この立体映像は何方どちらかというと天界由来のようだが、眩しくないように工夫がしてあってテンカイさんには快適だった。快適に感じるのは天界から自分宛にピン・ポイントで波動が来ている証拠だ。そういう認識は経験則じゃなく、人の霊性に最初から有るものだ。


 テンカイさんの霊格に太陽系の知識のかたまりが一括説明のパケット通信感応で伝えられた。天上界でも冥界でも知識の伝達技術は人間界より遥かに早くて効率的だ。あのスエーデンボルグの名著にも天上人の一声は人間界の1000の語彙を尽くして尚説明仕切れない内容を持つと言う。(「天国と地獄」269節)


 但し、ここで言っておくが、このパケット通信には情報制限がある。いろんな意味で「不都合な事実」は除外されていたんだ。こういう微調整が出来るのは冥界より上位にある天上界の天上人だけだ。


「なるほど、太陽から数えて三番目の惑星が地球か。あれが60周で60年という訳ですね。地球は自転するから太陽光が当たる期間が昼で裏に回ると夜か。自転を24分割してタイミングを1時間にした訳だ。しかし、よく止まったりブレたりしないもんだなぁ。」


 テンカイさんにしてみれば、人間界の「時間」というのは、延々と続く単調な「繰り返し」に見える。だから繰り返しを止めれば時間も止まるだろうに。かわいそうに惑星の運動が止まるまで地球人は時間の繰り返しに追われて生きなきゃならないのか!たまには止めて休んだら良かろうに。」


「そんな事したら地球に住む生命体は全滅します。」小僧が呆れて呟いた。


「そんなもんか・・・ しかし小僧さん、これでどうやって退屈凌ぎの『発想の限界』を超える体験が出来るのかね?ただグルグル廻ってるだけじゃあないの?」

「それはお客様自身があそこで暮らして見れば解ります。残念ですが冥界では詳しい情報公開は禁止されておりまして。」

「そりゃまた(何でも有りの天上界にしては)珍しい話だな。何でかね?」

「実はこの太陽系第三惑星は観光スポットであると共に霊人達の特殊な修業の場所でもあるんです。但し、その修業の中身は極秘扱いになっておりまして・・・ ですから、お客様にもタネあかしをするわけに行かないのです。」


「そうか、じゃあもう一つ教えて欲しいんだが、このチラシに有る特典の『発想の自由』って何かな?それも秘密?」

「いえいえ、これは秘密じゃないです。文字どおりです。地球に住めば善悪・陰陽・真偽を問わず何でも自由に発想頂けます。頭で考えるだけなら人殺しでも破壊行為でも何でも有りです。しかも冥界とは違って、お客様が考えることは誰からも見えません。」


「なるほど〜 それは珍しいな。しかし、地獄の恐怖が身にしみてる我々霊人は悪意も偽りも考える習慣すらないからなぁ。発想の自由が本当に自分に有るものか今ひとつ実感が湧かないな。」

「慣れてくれば発想出来るようになります。」


 テンカイさんは立体画面の中の地球が太陽の周りを何度か周遊するのを観ながら思案に暮れていたが、遂にはふっ切れた。


「面白いかも知れないな。退屈だからちょっと見学してみようか!」


 誤解の無いよう言っておくが、テンカイさんが3D映像を見始めてから地球旅行を決めるまで地球時間で5〜6年の歳月が過ぎている。(映像は模倣じゃあない。本物のソラー・システムのリアルタイムの位置関係を天上界の技術で観やすく立体投影したものだった。)


 冥界には時間が無い。冥界の住人は歳をとらずに老化もしない。ちょっとゆっくりすりゃあ地球時間の5年ぐらいはあっと言う間に過ぎ去る。だからテンカイさんが地球旅行に60年かかると説明を受けたって、それは人間界で例えるなら「小一時間覗いて見る」程度にしか聞こえない訳だ。


 この時テンカイさんに渡された地球の情報は豊かな自然や名所旧跡等の歴史的遺産、オリンピック等の競技文化、そして無数の生命の種と多様性だった。醜い殺戮の実態や戦争の悲惨な光景は開示されていなかった。テンカイさんはちょっとした冒険で自分の記憶に無いさまざまな多様性を見聞できることを期待していた。だからチラシの末尾にある注意書きもさほど重大な判断材料には見えなかったんだ。

「注意 : 地球型人間界の諸条件適用」


 しかし、天上界はこの時テンカイに与えるべき試練のほんの一部を見せただけである。それだけでは無い。冥界に住むテンカイには地球を体験してきた霊人との遭遇や意思伝達は(同類引き寄せ法の反作用で)記憶がない。そしてこの「時間」と3次元物理に拘束される「地球業」こそは天上界の有識霊から最も恐れられ、皆が話題を避ける「究極の荒業」なのだ。


 その真実を書いた文献をみなさんに紹介しよう。もちろん今テンカイさんはこの文献の存在すら知らない。


 ◾️ 天上界修業便覧(抜粋)


 注意 以下の説明は「地球業」を一度修了した霊格、或いは修業霊の守護霊となる上位の霊格にのみ開示されている。未経験の霊性にはこの定義と解説は感知できない。許可なく第三霊人に開示したものは厳罰を受けるか、開示する意思の抑制を受ける。


 地球業(別名「究極の荒業」)


 修業形式 : ブラックボックス転生型(BBR)

 思考制限 : 無し(善悪・真偽・陰陽・清濁)

 満業条件 : 人間界での覚醒、人間としての死

 物理拘束 : 3次元空間での単一身体(肉体)


 被行者は太陽系第三惑星に転生し、自然人の生涯(人間界の時間単位で60〜70年)を一単位として修める。別名「3次元界の荒業」。生涯設計を変えて何度でも繰り返し転生できる(輪廻転生)が、基本的な転生条件の変更は許されていない。即ち新生児として肉体と霊性が再生する際、天上界や冥界の記憶、自らの霊的能力、前世の記憶、当該修業の生涯設計、ネクサスポイント等の情報が全て封印される。「ブラックボックス転生」と呼ばれる所以である。


 新生児として転生する修業霊は最小限の自律本能のみ与えられ、母体として決められた肉体から地上界に3次元的に誕生する。当初は自ら移動する身体機能もままならず、 人との会話力や言語認識も無い状態から始まる。両親や他人から育成を受けた後に自立成長し、やがて指導的責任を負う。2回目以降の転生では性別、人種、人生を左右する決断の瞬間であるネクサスポイント等の基本的な設定が許される(生涯設計)。場合により生まれつきの盲目、四肢の欠損等の身体的ハンデを伴う。守護霊は随伴するが、3次元側の本人からは見えず、特別な修練を積まない限り認識されない。


 ブラックボックスを含む転生時の霊的機能の極度の縮小を「機能後退」と呼ぶ。


 転生(地上界では「誕生」あるいは「生誕」)以降は第三惑星の公転運動(等間隔で繰り返される)に沿って肉体が成長から老化へ変化し、確実に満業に向かうが、記憶のブラックボックス化により、修業霊は修業そのものに開眼自覚するまで生涯の目的を知らない。


 唯一の自由として許されるのが「思考と選択の自由」であり、人の考えは3次元界の他者からは見えず、考えることについては善悪・陰陽・真偽・清濁の制限が無い。また個々の人生に於いて善悪を問わず選択の自由が与えられる。


 思考と選択の自由が許された地球環境に於いては、神聖真理や慈愛の教義が低迷しており、幾つかの教義は「宗教」として散在するが、著しい改竄と暗号化のため全ては複雑で難解である。このため、過当競争、利己主義、自己愛が横行し、扮装や戦争が絶えない。


 情報統制により修業霊は初回の修業を自ら志願することは無い。むしろ志願は許されておらず、修業する個人霊の特定は天上界の上級霊格や大天使達の指名に基づいて決定される。些細なきっかけで事前の説明もなく、いきなりブラックボックス転生に晒されることから「騙され修業」とも呼ばれている。


 あまりに過酷なため、修業霊には「思考と選択の自由」以外の事前の説明は行われず、説明資料の閲覧も天上界の厳しい管理下にある。(ニ回目以降の転生は志願が許されている)

 思考と選択の自由は、思考の一切を隠すことが出来ない冥界に住む霊格にとっては未知・未体験の自由である。


 修業中は本人(霊)が人間界で修業意義に目覚めるまで(如何なる緊急事態を迎えても)天上界は一切の救済も説明も行わない。このため地球業で一定の成果を納めて立派に冥界に帰還した霊格は多くの霊友から最上級の賞賛と喝采を受る。一方、苦行のため挫折する修業霊が多く、何れも他界して冥界で再準備した上で再び転生する。究極の荒業と知った上で多くの未達霊が進んで次の転生を志願することは冥界の七不思議のひとつである。


 経験した上級霊は、この不思議を説明する格言を「そこに山があるから」「フルマラソンが癖になる」と表現する。


 修業単位である「人の生涯」を終えた霊格は、第三惑星特有の他界様式である「死」を経て冥界に帰還する。霊的な成長を阻む障害の多い地球環境下では、ブラックボックス転生の影響もあり、修業の意味を理解し難い。思考と選択の自由が有る環境下では、自己都合のみに生き他者に危害や因縁を残す修業霊が多い。これらの危害因縁は全て「負のカルマ」として記録され、次回の転生後に人間界で善業や他者への慈愛、隣人愛を発揮し人助けを実行するまで解消されない。一方、修業中は、他者から大小さまざまな形で有形無形の危害を受けるが、これらの因縁を正直に赦し忘れることで負のカルマを解消する修業も可能である。冥界に帰還した修業霊は自らの生涯を振り返り、カルマのバランスを自覚した上で、次の転生の目的を設定し、節目となるネクサスポイントを決めて次の転生に志願する。多大な負のカルマを負った霊は次の転生に於いて肉体的ハンデを負う事で贖罪を望む修業霊も存在する。


 カルマのバランスは冥界に居る状態(在冥霊)の認識であり。ブラックボックス転生による修業中は封印される。転生した地球では人間本人のカルマの認識は無い。転生中に開眼し、カルマを意識する人格も少なく無いが、前世の負のカルマを詳しく知る人は極めて少ない。開眼してカルマのバランスを完全に霊視できるレベルまで成長した霊格はその生涯を最後に地球業を満業し、昇天して天上界の上級霊となる場合が多い。

 質の高い修業を果たした霊格はキリストやブッダのような稀有な存在である。一般には数百から数千の修業を経てようやく満業に近づくと言われている。


 抜粋終わり


 テンカイさんが地球でどんな経験をしたかはご想像にお任せしたい。何しろ読者の皆さんは全て究極の荒業の真っ最中だから、わざわざ地球の惨状と艱難辛苦を説明するまでもない。


 ここにテンカイさんが何度も地球に転生している合間に冥界で書き残した手記を紹介しよう。


「こんな冒険、こんな感動は初めてです。」

「思考の自由は甘美で陰湿です。本当に善でなければ直ぐに悪に落ちます。本当に真でなければ直ぐに偽りに浸ります。彼処(地球)では悪の誘惑が常に目の前に有り、常に地獄の波動が伝わって来ます。それに、あの「死の恐怖」が有ります。霊的真理から断絶された地球人にとって冥界への帰還は恐怖以外の何物でもありません。


 地球の重力場と3次元の制約は例えようの無い不自由です。特に幼児期から思春期に近づくにつれて辛くなります。特に移動の不便や時間の制約は冥界にもある牢獄のような拘束感があります。成人になってからは紫外線や大気汚染、そして食物にある不純物などで肉体は容赦無く衰えます。


 ストレスがかかった日々に思考と選択の自由が許されるのですから人間が堕落するのは必然です。知り合いの多くが『この世は地獄だ』と話していました。どうせ地獄に居るならと、好き勝手生きて、たわいない幾ばくかの快楽を追い求め、利己主義に生きて、邪魔なら力で他者を押しのけるように成ります。この絶望的な環境は本当に虚しい。


 しかし、思考と選択の自由があるからこそ私達は『希望』を持ちます。地球環境を少しでも良くしようと言う慈愛に生きる人間も沢山生きています。あれだけの制約と絶望の中にも善と真を大切にする意思があるのです。これは大変な発見です。その人達の努力を今振り返って見ると涙が止まりません。光は暗闇の中で最も美しく輝くと言いますが、地球の暗黒環境にある慈愛と善の意思こそは暗闇に輝く光に他なりません。私は霊的真理を知らず、死の恐怖を克服してもいないのに自らの地球での肉体を犠牲にして他者を助ける人を何人も見ました。


 天界から見れば地球は単なる3次元界のじめじめして薄暗い単体惑星です。粛清して洗浄しようとするなら今でも容易に実施できます。でも、それをしないで我々のような未熟霊の修業の場としているのは、あの地獄の環境で光輝く奇跡の慈愛と献身の学びが、あの惑星だけに生きているからなのでしょう。天界の地獄には、そのような奇跡は絶対に起きません。人間界には『地獄で仏』という言葉もあります。


 皮肉なことに、地球環境を劣悪にしているのは思考と選択の自由であり、同時に奇跡の慈愛や善業もまた思考と選択の自由なのです。私はこれを『選択と希望の自由』と呼びたいのです。」



 最後に、誤解の無いように言っておくが、この人物、テンカイさんは、この話を聞いていらっしゃる貴方あなた自身が日々会社や家庭で接している親しい(或いは敵対する)人、その人なんだ。


 おやすみなさい、明日も修業ですね。


最後までお読み頂きありがとうございます。


思い出していただいたでしょうか?


またお会いしましょう。

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