お風呂委託太郎
俺がエグマンという異世界に来てから半年が経とうとしている。
そして毎日転生者達との戦闘に明け暮れている…
…わけではない。
「おーい!透視屋!今日も仕事頼むよ!」
「馬鹿野郎!俺をその名で呼ぶな!…で?今日はどの女だ?」
「へへ…話が早くて助かるぜ…隣町のイルーダって女がいてよ!その女で頼む!」
「はいはい…そいつが次いつ風呂に入るか分からんからな、3日は貰うぞ?あといつも通り料金は先払いな。」
「ったく、俺は常連なんだから良いだろ後払いでも…おらよ!五万コンチ!」
「あいよ。まぁ色々長くして待っとけ」
…と、こんな感じで俺は能力を使って商売をしている。
俺はあのクソ女神にエグマンに飛ばされてから、ここでの生活の仕方を模索した。
現世での常識も全く通用しない。ましてや俺は向こうでも単なる高校生。取り立てて生活のスキルがあるわけではない。
そう、この風呂覗きの能力以外は。
俺は風呂覗きの能力について自分なりに色々試してみた。その結果、
・目を閉じればざっと半径5kmぐらいの範囲にある風呂場はすべて見ることができる。
・見た風呂場の映像を脳内で撮影し、紙などの物体に映し出すことができる。
・半径5kmぐらいの範囲にある風呂場にワープすることが出来る(その時には自分は全裸になる)
思いの外能力の制約はないどころか、便利な能力だった。
ワープ能力を初めて使った時は死ぬかと思ったが…
まぁこれがデスゲームに活かせるとは到底思えない。
俺はデスゲームに巻き込まれて死ぬまでの間、これで死んでも良いというほどに女の裸を見てやろうと決めたのだ。
…なんだが…
「全然好みの女いないんだよな〜」
女の裸を見まくってる感想としては「ふーん、で?」という感じ。風呂覗きを依頼してくるおっさん達はこんなもの見て何が楽しいのか。
「もしかして風呂覗きよりエロいことがこの世には存在するのか…?」
いや、ないない。
そんなもんあったら気が狂ってしまう。
そうだろ?みんな。
そんなことを考えていたら別の客が来た。
さっきの奴とは別の、よく俺のところに来る客の一人だ。
「おい!透視屋!注文いいか?」
「だからその名は…まぁいい…今回は誰だ?」
「半年前ぐらいにこの辺に越してきたやつでな、名前も分からねえんだが…すげえ可愛い女がいるんだよ…黒髪で三つ編みの…」
「情報が曖昧すぎるな…そいつの居場所を特定できる情報は他にないのか?」
「そいつの家も分からねえんだがよ、よくそこのクゾキリトの酒場で一人で飯を食ってるよ」
クゾキリトはエグマンでは非常にポピュラーな居酒屋チェーン店だ。俺もよくそこで鶏串を食べる。
「はぁ…分かったよ、ちょっと探してみる。ただ今回は調査も含めて時間がかかりそうだから多めに報酬は貰うぞ。」
しゃあねぇなぁと言いながら報酬を受け取った。
まぁ今晩の夕食も決まってなかったしな。
丁度いいしクゾキリトに飯食いに行ってみるか。
そう思って僕は家を出た。