48話 御璽の偽造
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「私は、王国へ参ります」
マリアベルの発言に、カルロが息を飲んだ。
レナートは深い海の底を思わせる青い瞳で、じっとマリアベルを見つめる。
「王国へ行ってどうする?」
「まずは領地にいる母と兄に連絡を取ります。それから王都にいる父を迎えに行きます」
「うまくいくと思うか?」
静かに尋ねるレナートは、マリアベルにはできないだろうと決めつけるのではなく、どうやってそれを成し遂げるのだと問いかけていた。
試されているのではなく、心配されている。
レナートの瞳の奥の揺らぎを感じたマリアベルは、そっとその手を取った。
自分よりも大きな手には剣だこができていて固く、マリアベルの小さな手では、包み切れない。
それでも安心させるように、優しく手を添える。
「おそらく屋敷には王国の監視がついていることでしょう。正面から行けば、そのまま捕まってしまいます」
「では、どうする」
「隠し通路を使って、領主の部屋に行きます。おそらく、母か兄がそこで待機してくれているでしょう」
かつてバークレイ家に王国の姫が降嫁した際に作られた隠し通路は、一族の直系にのみ伝えられている。
それを使えば、王国の監視の目をくぐりぬけて屋敷の中に入れるだろう。
「そのまま私はバークレイの領軍を伴い、王都へと向かいます。この文書が偽造である以上、私が王都へ行けば真実が明らかになると思われます」
「確かに偽造されているのか? 王太子の近衛まで出てきているぞ」
「王太子殿下も騙されている可能性があります」
「マリアベルが偽造に気がついたのに、王太子が気づかぬなどということがあり得るのか?」
王太子妃ですらなく、まだ王太子の婚約者だったマリアベルが気づいたのだ。
まさか王太子がそれを知らないなどとは夢にも思わず、レナートは驚いたような声を上げた。
今回の一連の件はすべて王太子の策かと思いこんでいたが、過大評価をしすぎたかもしれない。
だがよく考えれば王妃の器であるマリアベルをあっさりと手放し、単なる平民の娘に乗り換えたのだ。賢い男であろうはずがない。
それにしても……王国の王位を継ぐものにしては、愚かすぎではないだろうか。
そう思ったのはレナートだけではなく、横で聞いていたカルロも呆れたような顔をしていた。
「それほどまでに、この御璽はよくできています。……このようなもの、一朝一夕でできるとは思えません。今までにも密かに使われていたのか、それとも……」
「この時とばかりに、表に出したか、だな」
レナートの言葉に、マリアベルは頷く。
「もし使われていたとしたら、さすがに国王陛下が気づいたでしょう。であれば、この書類のためだけに使われた可能性が高いです」
御璽の偽造は大逆だ。
どれほど身分が高くても、その罪は死罪に相当する。
だからこそ気軽に扱うことはできなかっただろうし、もし今までに使われていたとすれば、きっとどこかで露見していたはずだ。
王太子直属の近衛兵は、エドワードにしか動かせない。
となれば、国王の文書を偽造してエドワードに渡した人物がいて、その人は王国の中枢にいるということだ。
そして……。
「カルロ!」
「はっ」
「王国の国王はどうしている。健在か」
「最近は病に伏しているということで、ここしばらく姿を現わしていないようです」
「やはりな」
マリアベルの予想を、レナートとカルロが裏づけた。
国王は政務を行っておらず、この書状についても知らないのだろう。
ただ病気で休んでいるだけならばいいが、もし……。
「至急、国王の生死を調べよ」
「かしこまりました」
すぐに部屋を去っていくカルロの後姿を見て、マリアベルは足元からひたひたと悪い予感が這い上がってくるのを感じずにはいられなかった。
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