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真実の愛を見つけたと言われて婚約破棄されたので、復縁を迫られても今さらもう遅いです!【書籍化・コミカライズ】  作者: 彩戸ゆめ


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25話 男たちの密談 1

 とりあえず図書室での運命の出会いは果たした、ということで、マリアベルはゆっくりと旅装を解くことになった。


 その後はテレーゼとゆっくり過ごすらしい。


 一方のレナートもフィデロ伯爵家に到着したばかりだが、無理をしてやってきたので、あまり時間が取れない。


 今のうちに婚姻に関する契約の話を進めておきたいと、お互いフィデロ城にきた時のまま、フィデロ伯爵家の応接室を借りて、急遽ジェームズとの会談を行うことにした。


「結婚式は一年後に行う予定だ。しかし申し訳ないが、一応婚約者の喪に服しているということになっているのでな、婚約式は身内だけで行うことになるだろう」

「仕方ありませんな。婚約はいつ頃の予定でしょう?」


 王国ではダンゼル公爵家を筆頭とした、親モルヴィア共和国派が勢力を増している。

 彼らがガレリア帝国の皇太子とマリアベルの結婚を阻止しようと動くのは必然だ。


 今までのバークレイ家は王族派とも呼ぶべき派閥の筆頭であったから、親共和国派の家も、まさかいきなり帝国との縁を結ぶとは思わないだろう。


 当主のジェームズですら、話が進む、あまりの早さに驚いているくらいなのだから。


 マリアベルの婚約が調(ととの)ったならば、バークレイ侯爵家はすぐに親帝国派に鞍替えする予定になっている。


 まだ王国内の親帝国派の家とは連絡を取ってはいないが、おそらくこの恐ろしく有能な皇太子のことだ。既にその手はずは整っているのだろう。


 親共和国派の面々に妨害されないためにも、レナートとマリアベルの婚約を身内だけで行うのには賛成だ。


 それにマリアベルは王国で悪評を立てられている。


 婚約式を行うのが帝国だったとしても、多くの悪意に晒されてしまうだろう。

 その分、結婚式を盛大にしてやりたいとジェームズは思っている。


「十日後だな」

「……今、なんと?」


 聞き間違いかと思ったジェームズは、レナートに聞き返した。


「十日後に、皇都の教会にて婚約の宣誓を行う」

「それはあまりにも早すぎるのではないでしょうか。以前の婚約者様がまだ亡くなっていないうちから、マリアベルに()(そう)していたのだと勘繰られましょう」

「なに、心配する必要はない。そう思わせないために、婚約式の翌日から、俺たちの話を元にした劇を上演する手はずになっている」


 レナートは手を組むと「それに」と話を続けた。


「元婚約者殿はここ半年、起き上がれないほど具合が悪く、いつ死ぬか分からないという状況だったということになっているからな。俺はそれを知っていながら、婚約を解消することもなく最期まで見守った、という建前になっている。俺の婚約者がずっと病弱であったことは誰もが知っているし、俺の年齢からしても、元婚約者殿に対して誠実であったと思われるだろう。俺がこの帝国の後継者である以上、すぐにも新しい婚約者が必要なのは民にも理解できるはずだ。きっと、やっと新しい婚約者ができたのだと喜んでくれるだろうさ」


 そしてレナートは、そう思わせるために劇を上演させるのだと笑った。


 マリアベルに向ける優しい笑みではなく、皇族として様々な荒波にもまれた男の笑みだった。


「さらに、人気作家に俺たちをモデルにした恋愛小説を書かせている。さすがに婚約式には間に合わないが、来月にはできあがるだろう」


 ロマンスの女王と呼ばれる作家の作品は、すぐに売り切れてしまうほど人気が高い。図書室でマリアベルが手にしていた『薔薇の微笑み』という本も、その作家の作品だ。


「なるほど……」

「参列者がバークレイ卿だけになってしまうのだけが難点だが、結婚式には領地におられる家族にも参列してもらえればと思っている」


 今の情勢で、家族全員が帝国での結婚式に参列するのは難しい。

 参加できるのはジェームズと妻だけだろう。……今のところは。


「承知いたしました。ところで結婚に際する娘の持参金の話となりますが」


 そう言ってジェームズは後ろに控えた文官から書類を受け取った。


 書類をレナートに渡したジェームズは、内容を読み進めるレナートの表情が変わっていくのをじっと見つめる。


「いかがですかな?」


 書類を読み終わって顔を上げるレナートに、ジェームズはにっこりと笑った。


「……これでは、王国に対する反逆と受け取られても仕方がないぞ」


 レナートは探るような目でジェームズを見る。

 だがジェームズは泰然とした態度を変えない。


「別にバークレイ侯爵家が帝国に属するというわけではありません。ただ領地のほんの一部を、マリアベルの持参金として持たせるだけです」

「王国はそれでは納得しないだろう。南のこの土地は、バークレイ領でも特に生産量が多いはずだ」

「さすが殿下はわが領地のことをよくご存じですな。確かにここは、わがバークレイ領で最も価値のある地域だといっても良いでしょう。しかしご心配なく。エドワード王子との婚約破棄において、慰謝料として王家の直轄地を賜ることになっております」

「ほう。どの辺りか聞いても?」

「かつて王女が我が家に降嫁した際に持たせた飛び地とバークレイ領が地続きになるという、大変ありがたい場所です」

「あそこか……。なるほど、サファイアの鉱山があったのだったか? 地続きになれば、搬出と加工が楽になるな」

「ええ。盗賊対策も簡単になります」


 王女の持参金であった飛び地にはサファイアが採れる鉱山が含まれていた。


 だがバークレイ領からは少し離れているため、サファイアを採掘しても運搬の際に他家から多額の通行料を取られてしまい、しかもなぜかよく山賊に遭うので、それほど旨みのある土地ではなかった。


 それが地続きとなればもっと採掘は活性化するだろう。


 しかし、それと今回の土地の話はまったく別だ。

 レナートはジェームズの思惑を探るように、目を細めた。




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