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仁義なき村長選挙なのじゃ! 2

 地主の家、つまりは村長の家。

 ここが、村の政治を一手に司る場所。


「アリア、そもそも、この村は何という名前じゃったか」


「スイチー村だよ。最初の村長さんがスイチーっていう名前だったんだって」


「ほうほう。では、この地主の家がスイチーと名乗っておるのは」


「最初の村長さんの子孫なんだって」


「ほお……どうじゃ、グシオン」


「権威付けでしょうな。私の知識を得る権能によると、ここの村長の祖先は普通の農民です」


「なるほどのう、連続で村長をしていることの正当性を主張するために、初代村長の子孫だということにしておるのじゃ!」


 オリガとグシオンの会話を聞いて、血相を変えた男たちが家から飛び出してくる。


「こ、こら! 人聞きが悪い!」


「お前たちはなんだ!」


「ほお。村には若い男がおらんと思ったが、なんじゃ! 村長の家には若い衆がいるのじゃ! どうしてここにだけいるのじゃ?」


「そ、それは……」


「おう、そうじゃそうじゃ。わらわはオリガ。この村の村長は、選挙で決めるのじゃろう? 立候補とやらに来てやったのじゃ!」


「お前のような小娘が……!?」


「ガキの言うことなど聞けるか! 帰れ帰れ!」


 男たちは、オリガを子供と見て侮る。


「ふっ、そう言うと思うて、グシオンを呼んだのじゃ! グシオン! この村の選挙法を言うのじゃ!」


「はい、オリガ様。選挙法によると……年齢制限、なし!! この村にて二十年以上暮らしたことがある者のみを対象とすると」


「ほう」


 オリガの目が細められた。

 すると、家の中から誰かが出てくる。

 恰幅のいい初老の男だ。


「わっはっは! そういうことだ! 二十年この村で暮らさねば立候補はできんということだぞ! この決まりがあるから、子供は立候補などできんのだ!」


「お主が村長なのじゃ?」


「その通り。わしが村長だ!!」


 オリガと村長がにらみ合う。


「ならば……わらわは立候補ができるのう」


「なんだと!? お前、そこにいるアリアよりも小さな子供ではないか!!」


「ほう、お主、わらわの角や翼を見てもそう言えるのじゃ?」


「ハッ……! 言われてみれば、角と翼がある……!!」


「時に村長、封印の洞窟は村の一部で良いのじゃな?」


「無論だ! 見渡す限りの山も森も川も、スイーチ村のものだ!」


「ならば問題あるまい。わらわはな、その封印の洞窟で五千年間眠っておったのじゃ。つまり、この村に五千年間住んでおる!」


「な、なにぃ────!!」


 村長と男たちが衝撃を受けた。


「だ、だがその証拠が」


「あの! わたし、オリガちゃんが洞窟の棺から出てくるのを見ました! っていうか、わたしがオリガちゃんを起こしたみたいで」


「な、なにぃ────!!」


 アリアの証言に、再び衝撃を受ける村長と男たち。


「し、しかし子供の証言……」


「オリガ様、こちらにオリガ様に腰や膝を治してもらったおばあさんたちを連れてきています」


 グシオンがマントを翻すと、そこからおばあさんたちが現れた。


「おらたち、そこの娘さんに治してもらっただよ!」


「ライヤッチャ様の使いだべ」


「確かに洞窟から現れただよ!」


「な、なにぃ────!!」


 村長は退路を絶たれ、立ち尽くす。

 だが、永年一族で村長という地位を守ってきた地主の一族である。

 彼はニヤリと笑った。


「いいだろう。ならば村長選挙、受けて立とうではないか。期限は一週間後! それまでに、五千年の眠りから目覚めたばかりのお前がどこまでわしに迫れるか……。見ものだなあ! おいお前たち、さっそく選挙活動をするぞ!」


「はい!」


 村長は家の中へと戻って行ってしまった。


「ほえー。本当に選挙がはじまっちゃうよ! オリガちゃんがりっこうほするの!?」


「したのじゃ! さあて、忙しくなるぞ! この時代の人間どもに、魔王の戦い方というものを見せてやるとしようではないか!!」


 今、スイチー村に選挙の嵐が吹き荒れようとしている……!

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