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冬がやって来るのじゃ! 2

「ううー、さむいさむい」


 朝、アリアが震えながら起きてきた。

 彼女は、執務室でお茶を飲んでいるオリガを見つけると、小走りに寄ってきた。


「おはよう、オリガちゃん。どんどん寒くなるねえ」


「うむ。気温がどんどん下がっておるのじゃ。この辺は雪が降ったりするのじゃ?」


「降るよー! けっこうどっさり。砂糖大根は、暑さと寒さの差がはっきりしたところじゃないと育たないんだって。だから、スイチー村がぴったりだってみんなが言ってたの」


「なるほどのう。必要な寒さなのじゃ」


 納得するオリガ。

 ちなみに魔王である彼女は、この程度の気温はちっとも寒くないのである。

 だが、人間は違うということは分かる。


「皆に体でも壊されてはことなのじゃ。寒さへの備えはしているのじゃー?」


「うん。この季節はね、囲炉裏を使うようになるの。ここにもあるんじゃないかなー」


 アリアが部屋の中を歩き回り、「ここだ!」としゃがんだ。


「何なのじゃ? そこは穴が空いておったゆえ、蓋をしてあるところなのじゃ」


「ここが囲炉裏だよー。えいっ」


 アリアが蓋を開けると、やや大きめのサイズの囲炉裏が姿を表した。


「ここでねえ、あったまりながらお料理したり、みんなでお鍋を囲んだりするの」


「ほうほう、暖房器具と調理用具が兼ねられているのじゃ。原始的じゃが合理的なのじゃー」


 オリガは感心した。


「くしゅん」


 そうこうしていると、アリアが可愛いくしゃみをする。

 これはいけない。

 秘書が風邪を引いてしまう。


 ということで、オリガは囲炉裏の構造を素早く見極めた。


「炭を入れて火を付けるのじゃ? 換気は……。おお、天窓が開くのじゃ! 雪が降っておったら横の窓を開けるのじゃ」


 指差し確認するオリガ。

 その後、グシオンに命じて炭を持ってこさせた。


「村人たちが分けてくれましたよ。炭焼を専門とする役割の者がおり、彼が村に供給される炭の量を管理しているとか」


「ほう! 重要な仕事なのじゃ! 今度支援しておくのじゃー!」


 炭を囲炉裏に並べて、オリガは着火の魔法を使う。

 炭はほんのりと赤くなり、熱を発し始めた。


「あったかーい」


「よーし、冬の間は、ここを中心にして仕事場を作るのじゃー!」


 オリガは宣言すると、村長邸の外から、日干しにされているむしろを幾つも持ってきた。

 これを重ねて、囲炉裏の周囲に置く。


「よーし、座っていいのじゃー!」


「わーい!」


 アリアは歓声を上げながら、むしろに座り込んだ。

 重ねてあれば、地面の冷気も伝わってこない。

 ぽかぽかと暖かな囲炉裏の熱もあって、うとうとし始めてしまう。


「アリア、気をつけるのじゃー。ちょっとわらわは出かけてくるのじゃ!」


「ではオリガ様、私がアリアさんについていましょう」


「おお、頼むのじゃグシオン!」


 そんなやり取りを聴きながら、またアリアは夢の中に沈んでいく。





「出来上がりはどうなのじゃー!」


 バーンと扉が開かれて、醸造所にいたレブナントと人間は飛び上がった。


「うわーっ!! ……って、村長じゃないですか」


 発酵などのため、常に一定温度に保たれた醸造所。

 寒い季節でもそれなりに過ごしやすい。

 酒造りメンバー唯一の人間である、ブンロックが綿入れを一枚羽織っているくらいだ。


「どうなのじゃブンロック。すっかり馴染んだのじゃ?」


「へえ! ここにいれば、毎日酒が飲めますんで! 最初は不味くて閉口しましたが、おらの意見を取り入れて、どんどん美味しくなってますよ!」


「いやあ、お恥ずかしい」


 コゴローとレブナントたちが笑った。

 アンデッド化した彼らは、アルコールを始めとした毒が通じなくなっている。

 そのために、酒の旨さというものがよく分からなくなっているのである。


 考えてみれば、ブンロックのような酒飲みの存在は必須なのだった。


「おらの他に、強い酒が好きなゴーサクのじいさまや、甘い酒が好きなトメーのばあさまもおるからな。どういう酒を作りたいかで、味見をする奴を選ぶといいな」


 自分専用の闇酒を作るほどの酒好き、ブンロックは言うことが違う。

 オリガは興味深そうに、ブンロックに尋ねる。


「では、ブンロックはどういうのが好みなのじゃ?」


「おらですか? わはは! おらはほれ、酒ならばなんでも来いなので!」


「万能の酒飲みなのじゃ! じゃが、その割には体がアルコールで蝕まれておらぬのじゃ」


「へえ。地主の時代は闇酒を作っても、量なんかたかが知れてたんで! 今はほれ、仕事のやりがいが増えたでしょう。必死に働いてるとクタクタなもんで、ちょっと飲んだら寝ちまいます。おらは浴びるようには酒が飲めない星の下に生まれたみてえで」


 ブンロックの言葉に、一同、どっと笑った。


「して、コゴローよ。どうなのじゃ? 作りたい酒は」


「はい。砂糖大根は甘みが多いですから、このままでも発酵はできますが、美味い醸造酒にはなりづらいです。だから、一旦それなりの味にしてから、蒸留酒として仕上げようかと」


「ほう!」


「南の国では、サトウキビなるもので砂糖が取れると聞きます。砂糖をとった後の蜜を使って、ラムという酒を作るそうなんです」


「おお、聞いたことがあるでよ!」


 ブンロックも反応した。


「俺たちにあるのは、砂糖大根。同じ砂糖を取るものなら、ラムみたいな砂糖大根酒が作れるんじゃないかと思うんですよ」


「ほほう! よし、頑張るのじゃ!」


「へえ!」


 元気よく返事をする、醸造所の面々。

 ちなみにこの日、新たなるメンバーとして、強い酒が大好きなゴーサクじいさんが加わったのだった。

 どんどん増える。


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