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交付金と秋祭りなのじゃ! 1

 視察団に、好印象を与えて全てのプレゼンを終えたスイチー村。

 しばし、大きな動きもないまま、時が過ぎていく事になった。


「どうなったんだろうねえ、オリガちゃん」


「くっふっふ、焦るでないのじゃアリア。国というものは常に動きが遅いものなのじゃ。ましてや、ニテンド王国でもディエス州は大きいのじゃ! 審査、予算からの捻出、それをまた審査、それから決まった手順でお金を運び込まれ……という感じで時間がかかるのじゃー」


「そうなんだねえ」


 悠然たるオリガの態度に、アリアは納得と安心感を覚える。

 そもそも、五千年以上眠っていたオリガなので、時間感覚が人間と全く違うだけなのだが。


 とりあえず、季節は過ぎていった。

 オリガが復活した頃合いは晩夏。

 それから秋になり、砂糖大根の収穫が行われた。


 冬に向けての保存食の準備を始めた頃合いである。


「オリガ様、街道の整備が整ったようです」


 グシオンの報告があった。

 先日から、商人たちが職人を雇い、スイチー村との販路を確立しようとしていたのだ。

 地面を踏み固めただけの道はすっかり整備され、街道となった。


 州と州をつなぐ道に匹敵する、広くて平坦な道である。


「かなりのコストを掛けたようですから、これから忙しくなりますな」


「うむ! 商人たちにも得をさせてやらねばならぬのじゃ!」


 しばしの間、スイチー村のお砂糖生産は、昔ざとうメインに変更されることとなる。

 州都でヒットした商品であり、すっかりネームバリューも得た昔ざとう。

 作れば作るだけ売れるのである。


 最近では、他の砂糖大根を育てている村もこれを真似した、類似商品が出回っているらしい。

 ディエス州におけるお砂糖市場は、活性化していた。


「そろそろ、ディエス州だけではない他の州にも目を向ける時なのじゃ。昔ざとうをニテンド王国中に広めるのじゃー!」


「ええー!?」


 ぶち挙げられた、とんでもないオリガの構想に驚きを隠せないアリア。

 オリガ村長は昔ざとうの成功に驕ることなく、さらなる先を見据えていたのである。


 それはそれとして、冬越しの支度をしなくてはならないスイチー村。

 最近では、お砂糖を原材料とした強いお酒の開発に成功し、その試供品が出回っている。

 アリアの父、コゴローと仲間たちが昼夜を徹して育てた酒である。


 これを、冬の間に新たな商品へと育てるべく、村は全力を傾ける。





 寒風が強くなってきて、そろそろ村人の服装もすっかり冬めいたものになった頃合いである。

 州都から一台の馬車が到着した。


「やあやあ、スイチー村の諸君!」


 降り立ったのは、お馴染み、元腐敗役人モタンギュー。

 今では心を入れ替えて、仕事に邁進しているという。

 何しろ、スイチー村を担当してきちんと仕事をすればするほど、かれの懐にお金が転がり込んでくるのだ。


 不正などしている暇はない。

 正攻法の方がずっと儲かる。


 と言うのも、ディエスにおいて役人は固定給ではないのだ。

 給与の最低保証があり、その他に関わった仕事により、特別給が支給される。


 仕事が公共事業であるなら、その事業の重要性で国庫から特別給が。

 商売に関することであれば、10%程度のマージンを取ることが許される。


 これまでスイチー村方面担当だったモタンギューは、この先がない村相手の閑職に回されたことですっかり不貞腐れ、腐敗役人への道を一直線であった。

 だが……。


「私は生まれ変わったのだ!!」


「おい、役人さんがなんか一人で叫んでるべ」


「疲れてるんだべなあ」


 農夫たちにヒソヒソ言われながら、天を仰ぐモタンギュー。

 懐がポカポカ暖かな彼は、ちょっとくらいのことでは腹を立てないのだ。


「おー、何やら賑やかだと思ったら、モタンギューなのじゃー」


「オリガ村長!!」


 パッとモタンギューの顔が輝いた。


「出ました、出ましたぞ……!」


「通ったのじゃ? 通ったのじゃ?」


「通りました、通りましたぞ……!!」


「通ったのじゃー!」


 幼女村長と、いい年をした中年役人が、くっふっふ、ぐっふっふ、と笑い合う。

 一見して極めて怪しい構図だが、オリガは村人から絶対の信頼を得ている。


「おー、村長が笑ってるだよ」


「何かいいことあったんだべなあ」


「あれでねえだか? ほら、チホコフキンとかいうの……」


 外で話していた村人の言葉に、モタンギューが目を光らせた。


「そう、その通りだ!! 地方交付金の対象に選ばれたのだよ、このスイチー村が!!」


「ほえー」


「はえー」


 いまいち理解していない村人たち。


「つまりなのじゃ。村がもっと凄いことになるのじゃー! お金が国から出るのじゃー!」


「な、なんだってー!?」


 なんとなく理解した村人たち。

 てにおはがはっきりした文章より、なんとなく情緒的な表現のほうが伝わるのである。


「こりゃあ祭りだべ!」


「そう言えば、昔は秋に祭りをやってただなあ」


「地主のやつの言いつけでやらなくなってただからな! よし、これは」


「祭りだべな!」


 うおーっと村人たちが盛り上がった。


「よーし、その祭り、わらわが仕切るのじゃー!」


「なになに? オリガちゃんお祭りするの? わたしもやるー!」


 冬近いスイチー村にもたらされたホットな話題。

 これをきっかけに、久方ぶりの秋祭りが始まるのだ。

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