コンペに出すのじゃ! 1
「おや、オリガ様。外で騒ぎが起こっているようですが」
「大変だー! 地主が山賊をけしかけて来やがったー!」
村人の叫びを聞いて、オリガがトコトコと家の外に出る。
「よし、たまには魔法も使っておかねば、腕が鈍るのじゃ。それ、星くずよ落ちよ。隕石落下ー」
オリガが空に人差し指を向け、くるくる回す。
すると、青空の真ん中に星空が出現し、そこから輝く流れ星が飛び出してくる。
流れ星は村の真上へとぐんぐん近づいてきて……。
村に襲いかかろうとしていた山賊たちのところに、すこーんと直撃したのだった。
物凄い音と風が吹き荒れる……のだが、それは全部オリガが防いでいるので村には何の被害もない。
「ひょえー」
アリアが目を白黒させた。
「オリガ様、火力を出しすぎでは」
「あっ! 相手はただの山賊だったのじゃ。やりすぎたのじゃー」
オリガはテヘペロっといたずらっぽい表情をすると、流れ星が落ちた地面を、時間を巻き戻して直した。
そこには、流れ星で跡形もなく消し飛んだはずの山賊たちもいる。
彼らはへたり込んで、白目を剥いて呆然。
「村人よ、縄でふんじばって、州都の騎士たちに突き出しておくのじゃ」
「あ、はい!」
村人たちが、慌てて縄を持って飛び出していく。
山賊は全く抵抗する気力も無いらしく、大人しく縛られた。
「大人しいねえ」
「一度死んだのじゃ。そんだけの衝撃を受けたらまあ何日かはあんな感じなのじゃー」
「オリガちゃんすごいねえ!」
「くっふっふー! ストレス解消にちょっと張り切ってしまったのじゃー!」
そして屋内に戻ったオリガ。
上機嫌が嘘のように、難しい顔になった。
「そんなことよりも、今はどうやって地方交付金をもらうかなのじゃ!」
オリガの前には、モタンギューから送られてきた手紙が広げられていた。
彼女はゴザの上に座り込む。
「うむむむー」
「どうしたのオリガちゃん? ケーキたべる?」
「食べるのじゃー! 今まさに、わらわの脳にはお砂糖が足りないのじゃー!」
お茶とケーキを用意し、しばしのおやつタイムとなる村長邸なのである。
「あまいのじゃー!!」
いつものオリガの叫びが響き渡る。
彼女の目がカッと開き、全身から金色の光が放たれるのだ。
村人は毎日これを見て、
「おー、今日も村長さんが元気だべなあ」
「村は安泰だべ」
と、ほっこりするのだという。
場所は戻って村長邸。
「それで、オリガ様。問題とは?」
グシオンが問う。
「うむ。実はなのじゃ。これはな、地方交付金を受けるためには州都に、村のアピールをせねばならぬという用紙なのじゃ」
「村のアピールですか。昔ざとうではいけないので?」
「うむ、あれでも良いのじゃ。じゃが、昔ざとうの大部分は、お主が作ったキャッチコピーなのじゃ。州都の偉い者たちは、砂糖を食べ慣れておるのじゃ。すると、あの雑味がある砂糖ではアピールにならぬかもしれぬのじゃー」
「なるほど、深いお考えです」
「んー?」
アリアはよく分かっていないようだ。
「どういうこと?」
「州都の偉い者が、村の名産品とか、観光地とかを調べるのじゃ。それでよしが出れば、州からお金が出るのじゃ」
「そうなんだ。お金がないといけないの?」
「やれることが増えるのじゃ! ずーっとお砂糖だけ売っていてもいいのじゃ。じゃが、それでは村は今の大きさがせいぜいなのじゃ。もっと大きくするのじゃー」
「そっかー。それでオリガちゃんは困ってるんだ」
「そうなのじゃー。わらわの魔法でいろいろでっち上げれば話が早いのじゃが、さっき見たのじゃ? わらわの魔法は、ちょっとスケールが大きいのじゃ!」
「そうかなあ」
「別に、わらわが魔王時代の、魔王的な建造物しか作れないわけではないのじゃ! いや、ちょっと瘴気とか出てしまうのじゃが……」
「瘴気は人死が出ますね」
「しんじゃうのはまずいねえ」
三人、角を突き合わせて考える。
せっかく村おこしが軌道に乗りかけているのに、ここで村を死の都に変えるメリットは無い。
つまり、オリガの力の多くが使えないことになるのだ。
「そっか、だからオリガちゃん、今までずーっと、魔法を使わないでしごとしてたんだねえ」
「そうなのじゃ。瘴気が出ると、砂糖大根もダメになってしまいそうなのじゃ。じゃからここは普通の方法を考えないとなのじゃー」
「うーん、むずかしいなあ。うちの村だと、すごいのってあのお砂糖工場くらいだもんねえ。お砂糖工場見学をりっぱにするとか……」
アリアの言葉に、オリガがハッとする。
「そうなのじゃ! 今あるものを使うのが一番いいのじゃー! アリア、でかしたのじゃ! お砂糖工場をアピールして、このコンペに出すのじゃー!」
「ふむ、お砂糖工場のアピールと言いますと……?」
グシオンが、案の具体性を増すために問いかけをしてくる。
オリガは頷いた。
「審査員どもは、間違いなくお金持ちなのじゃ。お砂糖なんか幾らでも食べているのじゃ。じゃが、だからこそどうやってこのお砂糖ができるのか、という工程は知らないのじゃー! 連中は、物には飽きるほど触れておるのじゃ。じゃが……もし、体験はどうなのじゃ? 自分の手でお砂糖を作る体験をして、生み出したお砂糖でお茶を甘くして飲む……!!」
「なるほど……。確かに、体験はここでしかできません。オリガ様が以前も仰っていた、お砂糖工場見学を村の出し物としてコンペに出す……。これは革命的発想かもしれません」
「うむうむ! アリア、でかしたのじゃ!」
「え? え? わたし、何かいったっけ!?」
褒められて嬉しいけれど、どうして褒められているのか分からないアリア。
照れ笑いをしながら、首を傾げるのだった。




