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村の産業は何なのじゃ? 3

 オリガの手紙を受けて、州都から村人たちが戻ってきた。

 出稼ぎに出ていたり、一旦村を出てしまった人々である。

 皆、半信半疑な顔をしている。

 だが、彼らの顔は、村の雰囲気を見て一変した。


「じいさま、ばあさまたちが明るくなってる……!」


「えっ、一日四時間労働!? そんなばかな」


 次々にもたらされる衝撃的な事実に、出戻りの村人たちはショックを隠しきれない。

 そう、スイチー村は変わったのだ。

 避けられぬ過疎の運命の前に、ただ消えるのを待つだけだった田舎の村はもうない。

 ここにあるのは、これから大きくなっていく、明るい未来が待っている村なのだ。


 そして、その立役者が姿を現す。


「よくぞ来たのじゃー!!」


 黒いドレス姿の幼女が、やはり可愛らしい服装の少女を従えて、出戻りの村人を迎える。


「わらわが村長のオリガなのじゃ!」


「村長!?」


「こんな小さい女の子がだべか!?」


「ええっ、冗談だろう!?」


 だが、村の老人たちは真剣そのものだ。


「おらたちが選挙で選んだ」


「性悪の地主から、土地も家畜も農具も取り上げて、おらたちに渡してくれただ」


「おらたちな、村の……ちょくせつ、こよう? っていうのになって、今は仕事してるとお給金が出るだよ」


 この言葉にも、出戻りの村人たちは激しいショックを受ける。 

 無理なく働けて、働きに応じてお給料も出る。

 どうやら、土地と家畜と農具は村の持ち物になっているらしいが、取り扱いは実質、借りた村人に任されているのだ。


「そんなん、悪いことを考える奴がいたらおしまいでねえか?」


 疑問の声を上げたのは、一人の若者だった。


「あっ、タゴサックくーん」


 幼女村長の隣にいた少女が手を振る。


「お、おお!? おめかしした可愛い子がいるから誰かと思ったら、アリアだべか!? ひええ……垢抜けてる」


「可愛い……? むふふ」


 アリアが嬉しそうに笑う。


「わらわの第一秘書なのじゃ! お洒落も秘書の仕事なのじゃー! そしてタゴサックよ! よい質問なのじゃ! わらわは信賞必罰主義なのじゃ。村の財産である家畜を勝手に肉にしたり、農地で国のご禁制作物を育てるなどした者は、罰に処すのじゃ。具体的には、一年間家畜と同じ姿にして小屋で飼うのじゃ」


 オリガの言葉に、みんな一瞬ぽかんとした。

 何を言われたか理解できなかったのだ。


「アリア、ちょっと試すのじゃー」


「どうぞ、オリガちゃん!」


 アリアがバンザイの姿勢になった。


「よーし、アリアよ、小鳥になるのじゃ! 変化の呪文!」


 オリガが呪文を唱えると、アリアの全身が煙に包まれた。

 そして、そこから一羽のカラフルな小鳥が飛び出し、オリガの角に止まる。

 煙が晴れると、アリアの姿はどこにも無かった。


「あ、アリアが消えた!!」


「アリアちゃーん!」


 タゴサックの隣で、アリアと同い年くらいの娘が悲鳴を上げた。

 すると、オリガの角に止まった小鳥が「ピヨピヨ」と返事をする。

 よく見ると、小鳥の羽の色は、アリアが纏っていた洋服と同じではないか。


「では戻すのじゃ! アリアよ、元に戻るのじゃ! 解呪の呪文!」


 すると、小鳥が煙に包まれた。

 すとんと地面に降りる音がして、次の瞬間には、そこにアリアがいる。


「このように、わらわは人を獣に変えられるのじゃ! これが罰なのじゃー」


「おおー」


 出戻りの村人たちはどよめいた。

 今、目の前で行われたことは、どう見ても大掛かりな魔法である。

 今度の村長は、幼女で魔法使い。

 与えられる情報量のあまりの濃さに、村人たちはクラクラして来た。

 正確には魔法使いではなく、魔王なのだが、そこまで話すと彼らの頭がパンクしてしまうだろう。


「ということで、今日明日は旅と出稼ぎの疲れを癒やすのじゃ。明後日から、仕事を振り分けるのじゃ! わらわがじきじきに、お主らの適性を見極めるのじゃー!」


 村長オリガは高らかに宣言したのだった。





「それにしても驚いたよー!! アリアちゃんが鳥になっちゃうんだもん!」


 顔合わせが終わり、アリアはタゴサックと、妹のエリスとの再会を喜んでいた。

 タゴサックもエリスも、灰色の髪の色をしていて、肌は日に焼けている。

 よく似た兄妹だった。


「アリアよ、わらわ、疑問なのじゃ」


「どうしたのオリガちゃん」


「この村の男衆と娘たちは、どうして名前の付け方に全く違うっぽい法則性があるのじゃ? 世界観が違いすぎない?」


「あのね、それはねー」


 アリアの言葉を、エリスが継いだ。


「えっとですね、村長さん。ニテンド王国は、あっちこっちから集まってくるいろんな民族の人でできてるんです。それで、スイチー村もおんなじで、ずーっと東の国の人の子孫なんです。それと、ここにもともと住んでた人がまざって、男の人は東の国の名前、女の人はこっちの人の名前ってなったんだって、おばあちゃんから聞いたんです」


「ほうほう、そんな由来があったのじゃ。エリスよ、お主、賢いのじゃ! 話も分かりやすいのじゃー!」


 オリガはエリスを気に入ったようである。


「オリガちゃん、エリスちゃんを第三秘書にしちゃう?」


「うむ、あまり秘書は増やさぬ主義なのじゃが、この才能は惜しいのじゃ。近くに置いておくのじゃ。では、エリスよ。お主は広報官なのじゃ! わらわの決めたことを、村のみんなや村にやってくる人に告げる仕事なのじゃー。お主はお喋りが上手そうなので、適職なのじゃ!」


「うわー、お兄ちゃん、わたし、いきなりお仕事もらっちゃったよー!」


「妹に先を越されただか!? うわー、兄の威厳がー!」


 タゴサックが嘆いた。


 こうして、出稼ぎから戻ってきた村人たちは受け入れられた。

 これによって、村の人口は136人から、倍以上の290人にまで増えたことになる。

 しかも、後から後から、オリガの手紙の噂を聞いたらしき、村人ではない者もやって来る。

 村は随分と、賑やかになっていきそうだった。


「さて、アリア、エリスよ。まずはやって来た者たちに、職業訓練をさせねばならぬのじゃ! アリアはお知らせを大きい板に書いて、村の広場に置くのじゃ! エリスはあちこちに伝えてくるのじゃ! 文字を読めない者は、寺子屋で勉強を! すぐ働きたいものは、わらわの面接! その後職場に振り分け! どんどん忙しくなるのじゃ!」


 こうしている間にも、州都ではグシオンが、村の名産品を売りさばいていることであろう。

 人と、お金が揃い始めているスイチー村。

 オリガは村おこしの、次なる段階を睨むのだった。

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