髪型
朝日が部屋に差し込み、何の羽毛で出来ているか分からないふかふかすぎる羽毛布団を照らした。
朝日のせいで熱くなったのか布団の中にいた少年––––グレイは身じろぎをして布団から這い出た。欠伸とともに伸びをする。
魔法を始めて使った夜から数十日が経った。あれから座学をしたり、山で山犬と駆けたり、魔法の練習を繰り返していた。魔力操作はあれから少しずつ出来るようになっていた。
食事をしっかりと食べれる様になったお陰か、痩せ細っていた体躯は程よく筋肉が付き、身長も少し伸び始めてきていた。長かった灰色の髪は後ろに一本で結いだおりその髪型はシルバーズの髪型と酷似していた。それは、ある出来事がきっかけであった。
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グレイは柔らかな草の生い茂っている草原で座禅を組み、瞑想をしていた。灰色の長髪が風に靡き顔を覆い、
今、グレイはオドの中の魔力循環を魔力操作して、身体に循環させる。攻煌神体を習得しようとしていた。
魔力を身体に循環させ維持しなければならない為、魔法とは違い至難の技である。ただ、魔法を維持しようと思うと同じようなものだが、魔法は放ってこそ意味があり、身体に近くに無いと維持できない、魔力操作をする意味がないのだ。
何故、魔力を維持しなければならないのか、疑問が浮かぶかもしれないが簡単な事である、自身の魔力が自然魔力に戻ってしまうからだ。完璧とは言わないが魔力操作をして維持しなければ、魔法のように霧散してしまう。
無意識に使っている剣士などは魔法など使わないので垂れ流しでも構わないし、気付きもしていない。そんな剣士など多量に存在しているのだ。
「その髪、邪魔にならんのかのう?」
目を瞑り、精神を統一しているグレイに横槍を入れるシルバーズは対面に座禅を組んで座っていおり、周りには火と水と土の玉が浮かんでいた。シルバーズの周りを漂っている魔法の球は縦横無尽に動き回り、微風を起こす。
「集中してるから分からなねぇーし。髪が動くのはジジイのせいだろ」
眉尻を引攣らせ、静かに怒るグレイ。
「儂の様に結わぐのはどうじゃ? ほれ、儂が結んであげるからの」
シルバーズはグレイに問い掛けるが返事はない。グレイは無視を決め魔力操作を行っていた。それでも話しかけるのを辞めないシルバーズ。
「結ばんのかのう? あの剣神の弟子である儂と同じ髪型じゃぞ」
そういうと、浮かべていた魔法を霧散させグレイの背後に立った。
「じゃあ儂が結んであげるからじっとしとるのじゃ」
シルバーズは自分の白髪を纏めていた銀色の紐を解き、グレイの髪を纏め結ぼうとしていた。
「辞めろよ、ジジイ! 触んじゃねぇ! 集中出来ねぇだろ!」
「髪を触っただけで切れる様な、集中ではいかんのう。いつ如何なる時も持続できる集中力ではないとな」
シルバーズの言葉に納得してしまったグレイは、渋々と閉口してオドから魔力を身体に出し、維持する修行を再び続けた。その様子にシルバーズは顔を少し歪め。
「強さに、少し貪欲すぎるのぅ」
集中しているグレイには聞こえない小さな声で、そう呟いた。シルバーズは、グレイの髪を何時も自身がしているように結んだのだった。
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グレイは布団から出て、陽の上り具合を確かめると、そろそろか。と独り言つ。
扉の前に立つと、長い息を吐き。集中力を高めた。聞こえてきた足音を意識して、位置を把握しようとする。ガチャリ、とドアノブが下がり、勢い良く扉が開く。
「おっはようさんじゃ、グレイ。飯できとるぞ!!」
何時もと同じ勢いで開ける扉。風が一陣巻き起こるが、靡く前髪はもう無く。結われている後ろ髪が揺れるだけ、視界は良好。
「毎回、ノックしろって言ってんだろうが!! ジジイ!!」
眉尻を上げ、攻撃をする為の建前を叫ぶグレイ。そして、拳を放ったグレイを、そんな姿見飽きたとばかりに受け止めたシルバーズだが、受け止めた時の顔は、何時もとは違い、驚き、そして笑顔になったのだ。
「攻煌神体か、まだまだ無駄が多いが、もう多用出来るのか。凄まじいのう。じゃが、まだ弱いのも確かじゃ」
笑顔で指摘してくるシルバーズに苦虫を噛み潰したような顔をするグレイ。
ここ毎朝、この様な事が何時も起きているのだが、攻煌神体を使用したのは今日が初めてであり、それなのに意図も簡単に止められたグレイは拗ね。シルバーズを無視して、何事もなかったかの様に、
「腹が減ったなぁ」
と云いながら。朝食へと向かったのだった。