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ジジイよりも早く

「先ずは儂を1度殴ってみてみるのじゃ」


  シルバーズは目を瞑り静かに佇んだ。早くせんかのう。と呟き片目を開いた。


「なんで魔法の修行を始めると云っておいて、殴らなきゃいけねぇのかわからねぇけど。何度も何度も受け止められてばっかだからな。俺の力が弱くねぇことをその顔に教えてやるよ」


  グレイは左足を斜め前に出し、右足を蹴り上げた。しっかり体重がのり、顎に決まったハイキックは1人が蹲る結果となった。


  蹲ったのはグレイであった。シルバーズに衝撃を与えたはずの右足を抑え、なんでこんなに硬いんだよ。と愚痴り。シルバーズは微動だにせず。ただ蹴りによって生じた風がこの蹴りの威力を証明するかの如くシルバーズの結われた白髪を揺らすだけであった。


「まぁ、これがの。硬護身(こうごしん)じゃよ。硬いじゃろ。儂レベルになるとな、これぐらいの硬さになるのじゃよ。下級のドラゴンの一撃ぐらいなら耐えれるくらいかのう」


「わかっててやらせたな。クソジジイ!」


  グレイが蹲りながら睨むと、これも師匠の矜持の為じゃよ。と切なそうに云った。


「なら笑ってんじゃねぇよ。クソジジイが!!」


「笑ってなどおらぬのじゃよ」


「じゃあ、先ずニヤニヤするのを辞めろクソジジイ!!」


「バレとったのかのう」


「ばれとるわ!!」


  上手く隠しとったと思ってたのじゃがのう、とブツブツ云うのだった。


 〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆



  それから数刻、陽光が峠を越えて下り始めた頃。グレイは座禅を組み、自身の魔力を感じる特訓をしていた。


  自身の魔力感知は魔法使いなら誰でも出来て、魔法使いと云われる前段階になる。自身の魔力を使い魔法を使うのだが、実際魔法使いの中でも、完璧に魔力操作が出来る人は殆どいないだろう。


自身の魔力を感知したら殆どの者が魔法を使えるのだが、人により魔力操作の質が違い、無駄に魔力を消費してやっと初級魔法を使える者もいれば魔力をほぼ無駄にせず初級魔法を使う者もいるのだ。


  その無駄を無くすために魔力操作を覚えるのだが、自身の魔力を知ったことのないグレイは自分の魔力を感じる為に座禅を組まされていた。


「だだあぁぁあぁぁあ!!わっかんねぇー」


  グレイは身を後ろに投げ捨てる様に寝転んだ、周りにはその行為を咎めるひと–––シルバーズはいない。


  シルバーズはグレイに座禅をさせ肩に触り。「これが魔力じゃよ」とグレイの身体に魔力を流し込み循環させた。始めて感じる魔力に妙な感覚を覚えていたグレイをみて「その感覚が、魔力じゃよ。自身の中にある魔力を感じたら報告するのじゃよ。儂は先に帰っておくからのう。気が散ると魔力は一向に分からないからの」と後ろ手に手を振りつつ帰っていったのが数刻前の出来事であった。


  その後姿はふらふらしており。魔力保有量の少ない裏付けのようであった。


  グレイはあれから目を瞑り続け、妙な感覚を探すが、一向に分からない。


「もう昼過ぎじゃねぇか。ご飯の時間いつなんだよ」


  2日前まで、いつご飯が食べれるかわからない生活をしていたはずのグレイは、もう恵まれた環境に順応しており、ご飯のことを考え始めていた。そして思い出した。スラムで奪われたパンのことをもあの後誓ったことも。––––俺に力が有れば、魔法が使えれば、お金があったら、彼奴らにでも勝てるのに。そして思った。


「あんな奴が魔法を使えて。俺が使えねぇわけがねぇ」

 

  グレイは自身を奮い立たせ。座禅を組み直した。



 〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆〆


  夜の帳が下り、星が燦然と光り輝きていた。それを上回る程光り輝く大きな満月がグレイを照らしていた。


  「ご飯じゃよ!!」


  夜ご飯の準備ができたシルバーズはグレイを呼びに外へ出た。


「すまんのう!! また、狩に夢中になってしまってのう。昼飯を忘れてしまったのじゃ」


  シルバーズはグレイの様子をみて声の大きさが尻すぼみになっていった。グレイが落ち込んでいるように見えたからだ。


  グレイは座禅を組んだまま顔を伏せ憔悴しているようであった。


「まぁ、今まで魔法なんて知らんかったじゃろうし。魔力感知を初日でできるやつなんてそうそうおらんから。気を落とすんじゃないぞ。儂なんて2日もかかってしまったからのう」


  シルバーズはグレイに近づき、肩に手を置き慰めの言葉を掛けた。するとグレイが憔悴しきったような声で何かを呟いていた。


  「––––った」


  シルバーズはよく聞こえず、聞き返すと。


「勝ったぞ。ジジイ!!」


  いきなり大きな声を張り上げたグレイにシルバーズは驚きながら、


「なっ、落ち込んでおったんじゃないのか!?」


  そう云った。その驚愕に満ちた顔を見上げたグレイは満面の笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。


  「俺がか? 俺が落ち込むわけねぇだろジジイ!!」


  「落ち込んでおらんということは、まさか!」


「そうだ!! ジジイ! 俺は魔力感知出来たんだ。スゲェだろ。ジジイよりも1日もはやいぜ」


  そして、と矢継ぎ早に云う。


「魔力操作っぽいのも出来たぜ!! その証拠によ! “ファイヤボール”」


  グレイは掌を焼け焦げて地面の見えている、草原であった場所に向けた。辺りは焦げて地面の見えている場所が多々あり、暗くてよく見えなかったようだ。魔法の炎により辺りが明るくなりその惨劇が見えた。


  射出した炎は狙った地面に爆ぜ、消えた。見えていた惨劇は夜に再び隠され、静寂が空間を包み込んでいた。


  「まだ、まだ。魔力操作は荒いが。教えてないはずの魔法を使うとは、お主、化け物じゃの。………彼奴と同じぐらいのう」

 

  爆発と共に倒れ込んだグレイを抱きとめたシルバーズはそう云うのだった。

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