3つの流派
魔法ではなく、魔力操作に一部変更しました。2019.4月8日
「まあ、冗談は置いておいて話を戻すがのう。疑問に思った事はないかのう?」
「疑問?」
グレイは質問の意図が分からず、小首を傾げ、質問をおうむ返しする。
「そうじゃ、儂はあの剣神に直接剣の指導をしてもらっておったのじゃが、剣神の腕を目の当たりにした時は驚愕したのじゃ。剣神の剣は神の如く凄まじく、その一太刀で数百人を亡き者にし、二太刀で国の戦力が全壊すると云われる程の威力があったのじゃ!!」
シルバーズは剣神の一太刀を思い出して熱弁をした。じゃが、と先程のテンションとは一転して冷静になり、話を続けた。
「本当に筋力だけであのパワーが出るのかのう? 普通に筋力を鍛えただけで誰でもそんな非現実的な事が出来るのかのう?」
「出来る訳ねぇだろ。剣神だから出来る事で、それが出来るから剣神って呼ばれてるんだろ」
グレイは冷笑し、何を当たり前の事を。と云った。
「じゃったら英雄譚に出てくる英雄や、上級冒険達の話はどうなるんじゃ?お主は知らぬかもしれぬが、英雄達が最上級ドラゴンであるミスリルドラゴンに勝つ話や上級冒険者がパーティーで上級ドラゴンを倒した話などもあるのじゃが、それはどう思うのじゃ?」
「それは………」
グレイは口黙った。英雄が強いのは頷ける。そう云う人は神童だと囃し立てられ冒険者になり、偉業を成し遂げるのだから。だが、上級冒険者は違う。上級冒険者は最初から強かった訳ではないのだ。下級冒険者から依頼をコツコツこなし、試験を突破して中級冒険者になりそして上級冒険者になるのだから。
––––冒険者とは三段階に分かれており。順に、上級冒険者はA +からB−ランクの冒険者の事を指していて、中級冒険者は、C +からD−ランク。下級冒険者はE +からF−ランク の冒険者によって分かれている。特例で Sランクがあるらしく。 Sランク冒険者は数人しかいない。
「そうじゃろ、剣神じゃから、英雄じゃから強いんじゃないんじゃ。力の出し方を知ってるからなのじゃ!!」
「それは筋力の使い方を覚えたんだろ!!」
「まぁ、それもあるかもしれぬがのう、魔力をコントロールしておったのじゃ」
「魔力を? 魔力は魔法を使う時に使うもんだろ?」
「そうなんじゃ。魔力は魔法を使うのに必要なもので、魔法を使わない冒険者には関係ない筈のものなのじゃが、力の強い者は無意識に使っておったのじゃよ。魔力を」
「魔力をどうやって使うんだよ? 見えねぇのによ」
魔力は目に見えない物であり、魔力感知の魔眼をもっている者しか見えないのだ。だから、その質問は必然であった。
「感じるんじゃよ。身体のオドから生成される魔力をのう。強い者は魔力をコントロールし。纏、循環させ、身体強化しているのじゃ。大概、無意識じゃがのう」
「感じるなんてどうやってやるんだよ!!強い奴だって無意識ならわかる訳ねぇだろ」
「そうじゃ、そうなのじゃ!! じゃから魔法、もとい魔力操作を覚えるのじゃ」
待ってましたと云うが如く、声を高らかに叫ぶシルバーズ。
「そして儂が剣神から教わった。3つの流派を覚えるこじゃ!! さすれば、意図的に身体強化が出来るようになり。お主の力は強くなるのじゃよ」
「3つの流派ってなんだよ。力が強くなるだけじゃねぇのかよ」
「そうなんじゃよ。1つ目がのう。攻煌神体と云ってな、大量の魔力を循環させ、身体強化をするオーソドックスな魔力操作じゃよ。無意識に使われているのは殆どがこれじゃ。 2つ目は、魔法刀身と云って魔法を剣に纏わせ、攻撃する技じゃが。これは魔力操作っていうより魔法操作の方じゃがのう」
そしてっ、とタメをつくり。
「3つ目が、硬護身と云って、儂の代名詞にもなった魔力操作なのじゃよ。少ない魔力で身体を覆い防御して魔力消費の少なく。魔力の保有量が少ない儂にとって使い勝手の良い魔法なのじゃよ。この3つが剣神によって教えられた3つの流派じゃ!!」
「魔力の保有量ってなんだ?」
「簡単に言うと、人が持てる魔力の量じゃよ。オドによって生成される魔力と自然魔力をオドによって自身の魔力に変換させた魔力をどれだけ持てるかということじゃな。儂は剣神の弟子の中で魔力保有量が少ない方でな。じゃから、魔力を無駄にせぬため魔力操作の腕は1位2位を争うぐらい上手かったのじゃよ」
シルバーズは結いだ白髪が地に付くほど、胸を張った。
「1番魔法の素質がないんじゃねぇか」
グレイがそう云うとビクッと動きを止め、姿勢を戻し、咳払いをしながら話題を変えた。
「ということで、早速修行をはじめるぞい」